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ネットワークが創生する価値 再考①:Hyper Scale DC Architectureとその手法

匠コラム
ネットワーク
可視化

ビジネス推進本部応用技術部
コアネットワークチーム
井上 勝晴
ハディ ザケル

これまでNFVに関連した幾つかのコラム(関連記事参照)で、技術的な動向や採用する際に直面する致命的な課題など本質的な面に中心に掲載させて頂きました。今回はNFVを含めたネットワークが作り出す価値をクラウドプレイヤーの視点から見て行きたいと思います。

連載インデックス

新潮流:Hyper Scale DC Architecture

NFVは、ETSIに代表される標準化団体がそのアーキテクチャを議論して策定し、各ベンダーがそのアーキテクチャに準拠する形で製品をリリースしています。その後、通信キャリアがそれら製品を購入・試験・商用展開して得られた改善要望やリクエストをETSI等団体にフィードバックするというサイクルが成立しています。
これら一連のサイクルにおいて、標準化動向は非常に重要であり、世界中のベンダーや各通信キャリアはその動向を常にウォッチしています。

一方、米国ではGoogle・Amazon・Microsoft・Facebook・Appleといった巨大なData Centerを自前で構築して運用するクラウドプレイヤーの手法が注目されています。彼らは通信キャリアのように標準規格を意識して通信設備を設計しているわけではなく、「実質的に動き、且つ運用も簡素化されるモデル」を自ら考案し、クラウドサービスを提供するシステム基盤を構築・運用しています。

また、GoogleやFacebookのアプローチを真似てサービス基盤を構築する新興ベンダーも台頭してきており、この流れは正にHyper Scale DC Architectureと言う新たなテクノロジー分野になるまで成長しつつあります。

ネットワークアーキテクチャ再考

この新たな潮流がNFVへの「期待と乖離」から脱する新たなアーキテクチャとなる可能性を秘めていると期待せずにはいられません。

Workflowを採用する

Hyper Scale DC Architectureの特徴は、「実質的に動き、且つ運用も簡素化されるモデルを用いた、(White Boxをも利用した)ネットワークの構築・運用」であると、先の項で紹介しました。これは、「優れたworkflowによる自動化」と「White Boxを用いたネットワーク機器コストの削減」とも言い換える事が出来ます。

同様に通信キャリアにおいても、ネットワーク機器コストの削減や運用手順の簡素化を目的とするWorkflowの検討が、MANO分野を中心に進んでいます。AT&Tは自身のCloud基盤の設計・構築・ライフサイクル管理をキャリアスケールで行うSoftware Platform作成し(ECOMP:現在のONAP)、Open Sourceコミュニティーへと展開しています。

注目すべきは、このECOMPにはDACE(Data Collection, Analytics and Events)と呼ぶデータ収集と解析・イベント通知を担うコンポーネントが存在している点です。この収集・解析コンポーネントにより、ネットワーク機器等から取得した様々なデータをBig Data解析し、その解析結果をネットワークの最適化へと繋げる事も可能となっています。

ECOMP(現 ONAP)における分析基盤

このようなWorkflowの再定義により、これまで通信キャリアには適合していなかったDC architecture(leaf-spine, L3 Fabric)の可能性が再検討されており、将来的にはHyper Scale DC Architectureの通信キャリアにおける採用の加速が予想されます。

リアルタイム可視化・分析の重要性

「White Boxデバイスを用いたネットワーク機器コストの削減」は結果的にネットワークの可用性を低下させるリスクを含みます。考えられる要因は様々ではありますが、1つはWhite Boxデバイス自体の機能不足に起因します。つまり、大手ベンダー機器であれば機器内部に於ける正常確認プロセスが実装されていますが、一方のWhite Boxデバイスはその様な機能が十分とは言えず、且つ商用実績の乏しさもあり、内在しているバグを潰しきれない事があると考えられます。

では、Hyper Scale DC Architectureにおいて、どのようにWhite Box デバイスの弱点を克服しているのでしょうか。その答えの1つは、「ネットワーク内で起きている状況のリアルタイムな把握」であると考えています。例えば、AT&TのWork FlowであるECOMP(後のONAP)上ではデータ収集と解析・イベント通知を担うDCAEは、解析データのリアルタイム収集機能を内包しています。

それでは、リアルタイム解析の有効性について、実データを用いて見て行きたいと思います。下図はバーストトラッフィク(800k bpsが4秒毎に3秒継続)をネットワークシステムへ印可し、その帯域を機器のInterfaceカウンターにて計算したグラフになります。注目すべきは、データのプロット間隔により全く異なる事象として描かれる点です。サンプリングレート2秒時は、このバーストトラッフィクの実体を正確に捉えていますが、サンプリングレート600秒では実態とは全く異なる形で描かれています。このようにネットワーク内で起こっている事象をリアルタイムで正確に把握できるので、バーストトラフィックにおける対処も迅速に行う事ができます。

サンプリング間隔の影響

他にもユースケースとして、①CRC エラーカウンターをリアルタイムに可視化できれば、CRC エラーが増加傾向にあるデバイスの予防交換も可能になります。または、②CPU使用率をリアルタイムで見る事で定期的なスパイクを発見する事ができ、デバイス本体の故障につながる原因調査を早期に着手する事も可能になります。つまり、リアルタイムの可視化・分析により、システム運用によりプロアクティブなアクションを追加する事が可能となります。ひいては、White Boxデバイスの機能不足に起因するNetworkの可用性低下を、運用(Workflow)で補う事が可能となります。

次世代技術Telemetryの登場

当然ながら、システムのリアルタイムな可視化・分析には、その基となるデータのリアルタイム取得が必要となります。ネットワークシステムでは、従来SNMP(Simple Network Management Protocol)を用いて機器の状態監視を実施してきました。しかし、SNMPはそのプロトコル構造(Codec:記述方法)がリアルタイム取得には適しておらず、取得粒度を高めると機器側に多くのリソースを要求してしまいます。

このような背景から、リアルタイムに情報取得を可能とする、SNMPに代わる新たな技術が求められていました。そして、Googleが開発の中心となった幾つかの新技術(gRPCやGPB:連載後述)が生まれ、それらの技術を活用する「Telemetry」と呼ばれる、新たなリアルタイムデータの取得手法が確立されました。

SNMP vs Telemetry(概略図)

このTelemetry技術はすでに利用できる段階にあり、ベンダー製品への実装も開始されています。弊社ネットワンシステムズでは、様々なネットワーク機器からリアルタイムに情報を収集し、可視化・分析を可能とする基盤として、「Telemetry PoC」を弊社ラボに構築しました。本PoCの詳細は次回コラムにてご紹介させていただきますが、コンセプトは「マルチベンダーで構成したネットワークに対し、リアルタイムな可視化・分析を実行する」と言う物になります。

ネットワン Telemetry PoC のコンセプト図
ネットワン Telemetry PoC の構成図

まとめ

今回のコラムでは、NFVの新潮流と言える「Hyper Scale DC Architecture」と、そこで必要とされるリアルタイムデータの取得方法である「Telemetry」の概要を、説明させて頂きました。今やクラウドサービスはビジネスだけではなく日々の生活でも当たり前のように存在しており、ライフラインの1つであると言えます。ネットワークの状態をリアルタイムに把握してその結果をシステムに還元する事で、出来る限りダウンタイムを短く且つ可用性を高める仕組みに注目が集まっています。

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執筆者プロフィール

井上 勝晴

ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 応用技術部 コアネットワークチーム所属
エンタープライズ・サービスプロバイダのネットワーク提案・導入を支援する業務に、10年以上にわたり従事
現在はSDN・クラウドのエンジニアになるべく格闘中

  • MCPC1級

ハディ ザケル

ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 応用技術部 コアネットワークチーム所属
主にハイエンドルータ製品の担当として、評価・検証および様々な案件サポートに従事
現在は、SP-SDN分野、コントローラ関連、標準化動向について調査及び連携検証を実施中

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