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ついに実現!! 光伝送システムのディスアグリゲーション

匠コラム
ネットワーク

ビジネス推進本部 応用技術部
コアネットワークチーム
関原 慎二

近年、クラウドネットワークのトラフィックは爆発的に増加しています。そして、そのトラフィックを運ぶオプティカルネットワークも広帯域化が進み、様々なクライアントサービスを即時に開通させて効率的に伝送することが要求されています。
このような背景の中、クラウドネットワークに使用される光伝送システムを見直し最適に再分割(ディスアグリゲーション)を行い、さらにそのシステムの制御をオープン化していこうという動きが出始めています。今回はこの光伝送システムにおけるディスアグリゲーション化についてお話したいと思います。

(1) 光伝送システムのディスアグリゲーション化

現在、データセンタに設置されるLeaf/Spineスイッチのインタフェース速度は多種化と広帯域化が進んでおり、実装される光トランシーバはサードパーティ製品によるコモディティ化が進んでいます。

一方、オプティカルネットワークに使用される光伝送システムはトランスポンダ(*1)やROADM(*2)などすべての機能が単一ベンダーによるオールインワン構成になっています。さらに光伝送システムの製品ライフサイクルはスイッチなどと比べ、約5年から10年程度という比較的に長い期間となる為、最新技術が反映されたシステムにアップグレードされるまで時間を要するという課題があります。

このような状況の中、光伝送システムの機能を独立させ最適に再分割を行うディスアグリゲーションという考え方が登場しました。これによりマルチベンダーによる構成で初期投資を抑えながら最新技術を取り入れ、最適なシステム構築を行うことが可能になります。光伝送システムのディスアグリゲーション化は図1に示すように2つに分類されます。

(1) Partly Disaggregated構成
技術進歩の速い光トランシーバやトランスポンダ機能のみを分割させた部分的なディスアグリゲーション化の構成

(2) Fully Disaggregated構成
光伝送システムの要となるROADM及びデータの多重分離を行うMUX/DMUXや光増幅を行うアンプなど、主要な機能を全て分割し独立させたフルディスアグリゲーション化の構成

図1 光伝送システムのディスアグリゲーション化

また、従来のオールインワンシステムではベンダー独自の制御インタフェースであるEMSやNMS(*3)を使用してシステム機器の管理を行っていましたが、ディスアグリゲーション化ではNETCONF(*4),RESTCONF(*5)といったオープンなAPIを採用します。これによりベンダーに依存しないプロトコルを使用して経済的に光伝送システムを一元管理することが可能になります。図2にオープン化に向けた活動の主なイニシアチブを示します。

図2 光伝送システムのオープン化を進めるイニシアチブ

次にPartly Disaggregated化の一例としてオープン・オプティカル・ラインシステム(OOLS)、そしてFully Disaggregated化の一例としてDisaggregated ROADMについて説明します。

(2) Open Optical Line System(OOLS)

Partly Disaggregatedの構成の1つとして図3に示すようなOpen Optical Line System (*6)があり、データセンタ向けのオプティカルネットワークとして近年、注目されています。その特徴は光伝送システムにおけるシングルベンダ・ロックインを回避できることです。データセンタのトラフィックは10G,25Gから100Gbpsと様々なデータ速度があり、さらに今後200G~400Gbpsへと高速化されていきます。

このような状況の中、様々な光トランシーバやトランスポンダ製品がサードパーティより提供されています。これを光伝送システムに柔軟に取り入れることでマルチベンダーによるシステム構築が可能になり、さらに最新の光トランシーバやトランスポンダ技術を先取りできるメリットがあります。

図3 Open Optical Line Systemの構成

OOLSは数10km~100km程度までのエリアで展開される地域型とそれ以上のエリアで展開されるロングホール型があり、使用される光変調技術が異なります。図4に示すように地域型では経済的なPAM4符号(*7)による強度変調・直接検波方式(*8)が使用され、ロングホール型では高性能なデジタルコヒーレント方式(*9)が使用されます。特に地域型OOLSではデータセンタのスイッチポートに脱着可能なプラガブルタイプの光トランシーバを直接実装することで高密度な収容が可能になります。

またロングホール型ではスイッチにコヒーレントタイプのDWDMカードを搭載することや他社製コヒーレント・トランスポンダと組み合わせることで高速・大容量サービスを柔軟に提供することが可能になります。

図4 Open Optical Line Systemの分類

尚、クラウドネットワークにおけるオープン化の取組みとしてトランスポンダを”WhiteBox”化しOOLSと組み合わせたTIP Voyagerプロジェクトといったソリューションも登場しています。TIP(Telecom Infra Project)の Voyager については以下のURLを参照して下さい。
https://telecominfraproject.com/facebook-contributions-at-the-tip-summit/

※弊社ではADVA社WDMとArista社スイッチの連携によるOOLS検証なども実施しています。
詳細は以下の弊社コラムをご覧ください。

(3) Disaggregated ROADM

Fully Disaggregated構成の中にDisaggregated ROADMがあります。これは図5に示すように従来、単一ベンダーによるオールインワン構成のROADMを機能毎に分割してマルチベンダーによる構成を実現します。その結果、最適なシステム構成や機能単位のアップグレードを行うことが可能となり、システム要件に適したコストを達成できます。従来、ROADMの制御はベンダー独自のインタフェース(EMS,NMSなど)を必要としましたが、Disaggregated ROADMではベンダーに左右されないオープンなAPIを採用することでSDNを使用した一元的な機器管理を行うことが可能になります。そしてマルチベンダーやマルチレイヤ環境でのサービスの即時開通やシンプルなネットワーク運用を実現することができます。

図5 Disaggregated ROADM

2015年に"The Open ROADM MSA"という団体が設立され世界各国の様々なベンダーがメンバーとして参加しています。Open ROADM MSAでは従来のROADMを光プラガブルトランシーバ、トランスポンダ及び、ROADMスイッチ(WSS波長スイッチ、アンプなど)の3つの機能に分割しています。光インタフェースは当初は100Gbpsで200G~400Gbps対応を予定。またROADM波長は50Gグリッドの96波長で、今後はフレックスグリッドに対応を予定しています。尚、各機能部はYANGデータモデルを使用したオープンなNETCONFプロトコルで制御されます。

図6 The Open ROADM MSA

出展:Open ROADM whitepaper v1.0pdf

https://www.netone.co.jp/knowledge-center/blog-column/files/knowledge_takumi_141_7.pdf

まとめ

今回はクラウドネットワークにおける光伝送システムのディスアグリゲーション化の概要についてお話しました。クラウドネットワークを取り巻く環境は多様性からダイナミック性へ、そしてオープン化へと大きく変化しています。その中で光伝送システムのディスアグリゲーション化やオープン化は注目を集めています。

今後はマルチベンダーによるシステム構成をベースにテレメトリー技術やディープラーニングといったAI技術を駆使したオプティカルネットワークのモニタリングやクライアントに対するダイナミックなサービス設定など、高度化されたシステムへと発展していくことになります。

用語補足

※1トランスポンダ:
WDM伝送装置に使用されるインタフェース・モジュールで光ファイバー伝送路の送受信信号とクライアント(ユーザ)側の送受信号をそれぞれ相互に変換する。

※2 ROADM:
再構成が可能(reconfigurable)な光信号の挿入/分岐(Add/Drop)を行う多重化(multiplexer)システム。 Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexerの略。

※3 EMS,NMS:
EMSは通信装置(Network Element)の管理を直接行うもので、NMS(Network Management System)はEMSから上位のインタフェースにより管理を行う。通常はどちらもベンダー独自のシステムとなる。

※4 NETCONF:
ネットワーク機器の設定や状態を取得/更新するための管理用プロトコルでRFC で標準化されている。Network Configuration Protocolの略。

※5 RESTCONF:
NETCONFデータストア内のデータ(YANGデータモデル)にアクセスするためのHTTPを使ったプロトコル。RESTはRepresentational State Transferの略。

※6 OOLS:
データセンタ間接続(DCI)に向けて2015年にMicrosoftが提唱したOLS(Open Line System)と同様なコンセプト。

※7 PAM4符号:
4値を使用したパルス振幅変調(Pulse Amplitude Modulation)で1シンボル(ボーレート)につき2ビット(4値)の伝送が可能。
※ 参考コラム /knowledge-center/blog-column/knowledge_takumi_069/index.html

※8 強度変調・直接検波方式:
データの”1″と”0″をそれぞれ光信号のONとOFFに対応させて変調し送信を行い、受信側ではその強度により直接検波を行いデータの再生を行う伝送技術。

※9 デジタルコヒーレント方式:
100Gなどの高速光伝送において、光ファイバーの特性による伝送品質劣化(偏波モード分散、波長分散)への対応を行う伝送技術。

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執筆者プロフィール

関原 慎二

ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 応用技術部 コアネットワークチーム所属。
通信機メーカ入社後、キャリア向け伝送装置のハードウェア開発、LSI設計等に従事。
ネットワンシステムズではオプティカル製品(FTTH、WDM)の評価、検証及び案件技術支援を担当。

  • ADVA Certified Expert #083193
  • 工事担任者デジタル1種

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