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400Gイーサネットで注目したいレイヤ1テクノロジー

匠コラム
ソリューション
ネットワーク
データセンター

ビジネス開発本部 第3応用技術部
第4チーム
関原 慎二

 

 現在、イーサネット向け光トランシーバのマーケットでは100Gイーサネットが成熟期を迎えようとしています。一方、2017年末にIEEE802.3bs標準規格として承認された400Gイーサネットはベンダー製品の出荷が開始され、2021年以降、需要が急速に増加していくと言われています。
 前回は、データセンタ間(DCI)に使用される400ZR光トランシーバのお話をしましたが、今回は、400Gイーサネットで採用されたレイヤ1における2つのテクノロジーについてご紹介いたします。

PAM4符号化方式の採用

 100Gイーサネット(100GbE)の時代まで使用される光トランシーバでは、NRZ(※1)という符号化方式を採用していました。これはFig.1に示すように “1” のデータを送信する場合は、電気信号V1により光トランシーバの光出力を行います。また、“0” のデータでは、電気信号をV0として光トランシーバの光出力を停止するシンプルなものでした。通常、100GbEでは4つのレーンを使用して光波長に変換する為、各レーンでは約25GHzの速度(ボーレート(※2))で信号処理を行っています。ここで、400Gイーサネット(400GbE)において同様な処理を想定すると4倍となる約100GHzという非常に高速なボーレートでの回路動作が必要となり、実現に向けた課題やコストアップが考えられます。そこで400GbEにおいてはボーレート毎に2ビットの符号化を行うPAM4(※3)符号化方式を採用しました。


 PAM4符号では、NRZ符号に比べて一度に2倍のビット転送が可能になります。言い換えると同じビット転送を行う場合は、NRZ符号の1/2のボーレートで済みます。Fig.2に示すように主な400GbEの規格では、4波長の場合は4レーン、8波長の場合は8レーンで処理を行います。そこでPAM4符号を採用することにより、4レーンの場合は約50GHz、8レーンの場合は100GbEと同様に約25GHzのボーレートでの動作が可能になりました。

一方、PAM4符号では4値レベルの光信号の識別が必要になります。これはNRZ符号に比べて識別範囲であるアイ開口(※4)が1/3となる為に、信号対雑音比であるSNRが約9.5dB劣化し、ノイズの影響を非常に受けやすくエラーが発生します。そこで、400GbEにおいては次に述べるFEC(※5)エラー訂正機能が必須になります。



FECエラー訂正機能の採用

 前述したようにPAM4では光信号の識別エリアが狭い為、エラーフリーの通信が困難になります。そこで400GbEでは、新たにエラーを訂正する機能を追加しました。これは送信するデータにパリティシンボルという冗長データを付加することにより、受信側でエラーを検出した際に送信側への再送要求を必要とせず、自らエラー訂正を行う前方誤り訂正(FEC)と呼ばれる機能です。FECは一方向でのエラー訂正が可能な為、中・長距離の光伝送では多く実装されている機能です。

 400GbEではFig.3に示すリードソロモン符号(※6)によるKP4-FECと呼ばれる前方誤り訂正を採用しています。KP4-FECのエンコード部では送信データを10ビット単位に1シンボルとし、514シンボル毎に誤り訂正用パリティとして30シンボルを付加します。そして全体として544シンボルから構成されるFECフレームを生成します。このFECフレームをCodewordと呼んでいます。

 次に、Fig.4に示すようにKP4-FECのデコード部では、誤り訂正用パリティを使用して受信データの誤りを検出、訂正を行います。誤り訂正については、1Codewordあたり最大15個までのシンボルエラーについては訂正が可能ですが、16個以上のシンボルエラーが発生した場合は訂正不能(Uncorrectable)となりCodeword全体が破棄されます。

尚、シンボルエラーは1シンボル内に1ビット以上の複数のビットエラーがある場合でも1シンボルエラーとなります。


 KP4-FECの採用により、受信データのビットエラーの改善が可能になりましたが、ここで注意すべき点があります。例えば、Fig.5のようにCodewordあたりシンボルエラーが15個まで発生している状態とシンボルエラーが5個でそれ以上がないケースの場合、どちらもエラー訂正が可能になり、Codewordが破棄されずフレームロスは発生しません。しかし、シンボルエラーが15個まで発生している場合は、ネットワークの品質が悪い状況と言えます。その為、15を超える可能性がありマージンがありません。そこでFECエラー訂正ではシンボルエラーの発生分布を観測し、閾値を超えた場合にアラートを発出するなどネットワーク品質をモニターすることが重要になります。

まとめ

 今回は、400Gイーサネットの2つのテクノロジーについてお話をしました。2020年4月にイーサネットの業界団体であるイーサネットテクノロジーコンソーシアムは、現在の400GbEをベースとした800GbEに向けた仕様を発表しました。そして、IEEE802.3においてイーサネット標準規格に向けた議論が行われていきます。今後もイーサネットの高速化は進んでいきます。

※1 NRZ:Non Return to Zeroの略、伝送符号化の一種でビットを2つの状態例えばV1, V0の電圧で表す符号化方式です。

※2 ボーレート(Baud rate):1秒間に信号状態が変化する回数で変調速度とも言われています。

※3 PAM4:4-level pulse amplitude modulation の略、電圧の振幅を制御する符号化方式。PAM4ではボーレートあたり、4レベルで2ビットの情報伝達が可能です。

※4 アイ開口:信号波形を重ねて表示した状態を、目(アイ)に似ているのでアイパターンと呼んでいます。波形がきれいに重ね合っていれば信号の識別が容易にできる為、品質がよく一般的に “アイが開いている” と言われています。このアイの開いたエリアをアイ開口といいます。

※5 FEC:Forward Error Correction の略、データ伝送における誤り検出訂正方式の一種で、前方誤り訂正と呼ばれています。

※6 リードソロモン符号:誤り訂正符号の一種で、複数個のビットを1つのシンボルとみなし、符号全体をシンボルの集まりとして各シンボル単位に誤りの検出と訂正を行います。バースト誤りなど連続した誤りに強い反面、回路の複雑さや処理に時間を要し遅延時間が発生します。

執筆者プロフィール

関原 慎二
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス開発本部 第3応用技術部 第4チーム所属
通信機メーカ入社後、キャリア向け伝送装置のハードウェア開発、LSI設計等に従事。

ネットワンシステムズではオプティカル製品(FTTH、WDM)の評価、検証及び案件技術支援を担当
・ADVA Certified Expert #083193
・工事担任者デジタル1種

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