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第2回 無線LANを介してVDIを利用するための改善策

匠コラム
働き方改革
ネットワーク

ビジネス推進本部 第1応用技術部
スイッチワイヤレスチーム
丸田 竜一

前回は無線LANを介してVDIを使用する上での問題点“ネットワーク遅延”の影響度について説明した。今回は、“ネットワーク遅延”によるユーザー影響を少なくするための策を紹介する。

連載インデックス

まず、ネットワーク遅延が増大する環境や動作について考える。無線LANでネットワーク遅延が増大する原因は、総じて電波環境の混雑、CSMA/CAなどによる遅延である。電波環境が混雑すると、無線LAN端末と無線LANアクセスポイントの間で遅延が発生するため、結果的にサーバから端末への画面情報の到着が遅れ、さらに端末からサーバへ送られる操作情報の到着が遅れる。そのため、電波環境を空いている状態にし、遅延を少なく通信できることが重要となる。

電波環境の混雑を低減させるポイントを無線LANの視点から3点、VDIの視点から2点紹介する。

  • 混雑しにくい5GHz帯を使用する
  • 自動電波制御機能を使用する
  • アクセスポイントあたりの接続端末数を少なくする
  • VDI上で利用するコンテンツを見直す
  • VDIのセッティングを調整する

無線LAN上でのVDI利用を実現している当社の実績を踏まえて、各ポイントについて解説する。

混雑しにくい5GHz帯を使用する

無線LANでは、一般的に2.4GHz帯の3個のチャネル、5GHz帯はチャネルボンディングしない場合19個のチャネルが使用可能だ。無線LANを介してVDIを利用する場合には、電波環境が比較的すいている5GHz帯を使用することを推奨する。
まず、無線LANでは多くの端末が2.4GHzで通信を行っている。最近は少なくなってきているものの、以前販売されていたほとんどのスマートフォンは2.4GHz帯にしか対応していなかった。ノートPCも2.4GHz帯にしか対応していないものも多く存在した。また、街中に広く展開され始めている公衆無線LANの多くは2.4GHz帯を使ってサービスを行っている。そのため、多くの無線LAN端末は2.4GHz帯の3個しかないチャネルを使って通信を行っている。
加えて、2.4GHz帯はISMバンドと呼ばれ、多種多様な無線機器が利用している。無線LANのほかにBluetoothやコードレス電話、電子レンジなどが同じ周波数帯を使用しているため、電波環境が混雑しやすい。
対して5GHz帯は、一部の無線LAN端末が対応していないこともあり、活発に利用されているとは言えない周波数帯である。利用可能なチャネルが19個あることもあり、空いているチャネルを選択しやすい。各種レーダーへの干渉を防ぐためにDFS機能が実装されており、レーダー波検知時には通信断が発生するデメリットがあるものの、電波環境の面からみるとVDIの通信に向いた周波数帯と言える。
当社でもVDIを利用する場合は5GHzの利用を推奨している。2.4GHzを使用した場合、特に在席率の高い日中時間帯はVDIを使用しにくくなることがある。遅延の発生や、VDIから切断されてしまうこともある。これは、在席率が高くなることで、チャネルあたりの無線LANの利用率や、周囲の非無線LANデバイス数が増えることが原因と考えられる。
以上のことから、5GHz帯を積極的に利用することで、混雑しにくく遅延の起こりにくい通信を実現できる可能性が高い。

自動電波制御機能を使用する

常により良い電波環境を選択するために、自動電波制御機能を使用することを推奨する。
集中制御型無線LANと呼ばれる、多数のアクセスポイントを集中的に制御する無線LANシステムがある。一般的な集中制御型無線LANには、自動で電波の出力や無線チャネルを調整する機能が搭載されている。この自動電波制御機能を使うと、アクセスポイントは運用中に電波の出力を調整したり、無線チャネルを変更したりする。運用中にも変更されることで、常により良い通信環境を目指すことができ、安定した通信が見込める。管理者の手を煩わせることなく、自動的に電波を制御し、結果としてVDIをスムーズに利用することが期待できる。
しかし、この変更動作によって瞬間的に無線LANの電波が途切れ、通信が瞬断する場合がある。旧来のネットワークの考え方では、瞬間的なものであってもネットワークが断たれることを良しとしないとすることが多い。電波を通信媒体とする無線LANにおいては、より良い通信環境を常に求め、そのための瞬断は許容する、という考え方からこの機能が搭載されている。
もちろん、有無を考えると、瞬断はないことが好ましいと言える。そのために自動電波制御機能を使用しない場合、電波の出力や無線チャネルを固定設定することとなる。この場合には電波制御による瞬断は発生しない。その代わりに無線LAN環境が悪くなり、通信品質が低下した場合には、その状態が継続してしまい、VDIの利用に支障をきたす可能性もある。管理者がその状態に気づき、設定を変更しなければ回復は期待できない。
このように、自動電波制御機能にはメリットとデメリットがあり、検討が必要なポイントである。当社でも議論の末に自動電波制御機能を使用することとなった。周囲に他社のオフィスが多くあり外来波の影響を強く受ける環境であり、営業職を中心として人の出入りが激しいことなどから、電波環境の変化が激しいことが想定されたためである。実際に自動電波制御機能の動作によって、瞬間的にVDIの通信が途切れることがある。しかし、業務に与える影響は軽微であり、大きなストレスなくVDIが使用できていることから、自動電波制御機能を使用することを推奨する。センシティブな機能であるため、電波制御の頻度や閾値などをチューニングが可能な製品を選択することを推奨する。

アクセスポイントあたりの接続端末数を少なくする

無線LANは半二重通信であり、無線区間はシェアードメディアであることから、アクセスポイントあたりの接続端末数を少なくすることを推奨する。
ひとつのアクセスポイントに多数の端末が繋がると、無線空間が混雑し、アクセスポイントと端末間の通信機会を奪い合うことになる。そのため、アクセスポイントあたりの接続端末数は多くなりすぎないようにする必要がある。通信機会を奪い合ってしまうことで、1端末が通信可能な時間や機会が減り、それがネットワーク遅延として表れてしまう。
具体的にはチャネル設計の際には、面積ベースで無理のないレベルのアクセスポイント数に増やし、アクセスポイントあたりの接続端末数にポリシーを定め、一定数以下にするような設計が必要である。
当社で無線LANを導入する際も、サービスエリアと座席数を確認し、アクセスポイントあたりの端末数と面積当たりのアクセスポイント数を総合的に判断した。当社環境の場合は、アクセスポイント1台あたり20台の無線LAN端末が接続するという基準で設計を行った。

VDI上で利用するコンテンツを見直す

VDIを利用するエンドユーザが配慮することで遅延を減らすこともできる。画面遷移が多いアプリケーションの利用を可能な範囲で控え、その使い方を配慮することである。
VDIが使用する通信のうち、そのほとんどが画面転送の通信である。いうなれば、サーバ上のデスクトップ環境のライブ中継が通信の多くを占める。そのことから、この部分を低減出来れば通信量が減り、アクセスポイントと端末間の通信機会を増やせるため、遅延が発生しにくくなると考えられる。
一般的にVDIの画面転送は、画面の隅から隅までの全ての領域を常に送信しているのではなく、差分が発生した場所だけを圧縮して送信している。この動作は、映像データの圧縮形式であるMPEGと似ている。ユーザーがメールを作成したりWebページ閲覧したりしている際は、実際に動いている部分は限定的で、ほとんどの部分は画面が動いていない。余白の部分や、作成した文章は画面上から動かない。このような画面遷移が少ないアプリケーションは、通信量を少なく抑えている。
しかし、そうではないアプリケーションもある。例えば動画など映像の再生や、プレゼン資料や写真のスライドショーなどである。これらのアプリケーションは画面の隅から隅までが一気に変化するため、画面遷移が多いと言える。そのためVDI上で使用した場合は、画面転送にかかる通信量が多くなる。
VDIの遅延を少なくするためには、これらのアプリケーションをVDI上で使用しないことが望ましい。どうしても使用する場合は、全画面表示ではなく小さな画面で表示するなどの工夫をすることで、画面が遷移する範囲が狭くなり、通信量を減らすことが期待できる。
当社では動画の再生は出来る限りVDI上で行わないようアナウンスを行っている。プレゼン資料の作成や操作は業務上必要だが、おおむね不満のないレベルで使用できている。

VDIのセッティングを調整する

いままでは無線LANの設計やVDIの使い方について説明したが、VDIのシステム側で調整できることもある。それは、VDIのフレームレートや画質を調整することである。ひとつ前のコンテンツを見直す項でも紹介したが、VDIの通信はいうなればデスクトップ環境のライブ中継が主である。ライブ中継に使用する通信量を減らすことが、遅延を減らすことにもつながるため、可能な範囲でVDIの画質を下げることを推奨する。
VDIの使い方や、VDI上で使用するアプリケーションによって、許容される画質のレベルは異なる。メールや表計算、文書作成を主な業務としている場合は、画質はある程度低くとも業務は可能であると考えられる。しかし、画像や映像を扱う業務を行っていた場合、高い画質が求められるであろう。VDI上でどのようなアプリケーションを使うか、どのような業務を行うかによって、可能な範囲で調整を行うことが望ましい。
当社ではVDIのフレームレートや圧縮率を調整している。無線LAN上でVDIを使用するためだけでなく、VDIシステムが置かれているデータセンタと利用者の間の通信量が減ることから、回線コストを低減させることにも寄与している。

無線LANを介してVDIを快適に利用するために、遅延を少なくするポイントを5点紹介した。VDIの導入にあたってはサーバ周辺のテクノロジに目がいきがちではあるが、使用する通信環境も考慮しなければならない。必要に応じて、VDIベンダへの確認も有効であろう。
無線LANは各端末へのネットワーク配線が不要なため大変便利で使いやすいが、有線LANに比べて劣る点もある。利用にあたって、それらの点を考慮して導入し、快適なデスクトップ環境や、ワークスタイルの変革を実現してほしい。

執筆者プロフィール

丸田 竜一
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 スイッチワイヤレスチーム
所属
無線LANの製品担当SEとして製品や技術の調査、検証評価、及び、提案や導入を支援する業務に従事

  • 第二級陸上特殊無線技士
  • 第1回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 最優秀賞

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