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スマートデバイスでのVoIPの難しさ 1.NWでのQoSについて

匠コラム
ネットワーク
コラボレーション/モバイル

ビジネス推進本部 応用技術部
エンタープライズSDNチーム
田中 政満

従来は専用の機械を用いて利用していたVoIPは昨今のスマートデバイスの発達に伴い、据え置きVoIP機器→移動用VoIP機器から、スマートデバイス上のアプリケーションを用いて実現する方式にその主軸を移そうとしています。
全4回の連載において、この「専用機器と比較して劣る点」および「スマートデバイスであるがゆえの考慮ポイント」について解説していきたいと思います。

連載インデックス

1.はじめに

従来は専用のデバイスを用いて利用していた「VoIP(Voice-Over IP):IPネットワーク上での音声のやりとり」は、昨今のスマートデバイスの発達に伴い据え置きVoIP機器→移動用VoIP機器(無線LAN-VoIP、VoWLAN(Voice-Over Wireless LAN)とも呼ばれる)専用デバイスから、スマートデバイス上のアプリケーションを用いて実現する方式にその主軸を移そうとしています。

スマートデバイスは私達が使用しているデスクトップPC、ノートPCとOS、CPUアーキテクチャは違いますが、その計算能力から見ると立派な「手のひらサイズの小型コンピュータ」であり、PCと同じようにソフトウェアをインストールすることで機能を増やす事が可能なデバイスです。そして、普及に伴いこれまで「VoIP」という専用デバイスが必要だった機能を、"ソフトウェアのインストール"により同等の機能をスマートデバイスが兼ねることができるようになるというのは、必然とも言える流れです。

しかしながら、2016年現在、本稿を執筆している段階では、できる「機能(=音声通話ができる)」ことに関しては同様ではあるのですが、VoIP通信に必要な要件を詳細に調査していくと、まだまだ専用デバイスと比較して劣る点が明らかになっています。また"スマートデバイスであるがゆえ"の考慮ポイントも併せて発生しています。

これから全4回の連載において、この「専用デバイスと比較して劣る点」および「スマートデバイスであるがゆえの考慮ポイント」「スマートデバイスでのQoS設計」について解説していきたいと思います。

2.Ethernet上でのQoSを実現するための仕組み

有線LAN、無線LANそれぞれの伝送方式において、レイヤ2でのQoSが規定されており、LANスイッチ(有線LAN)、無線LANアクセスポイント(無線LAN)上で動作します。また、レイヤ2の方式によらないQoS技術として、レイヤ3でのQoS方式もあるため、併せて解説したいと思います。

2.1有線LAN(802.3)上でのQoS技術
有線LANでは802.1Q(VLANトランクリンクなどで利用されるフレーム方式)やISL(Cisco独自のトランクリンク方式)で利用できる、「CoS(Class of Service)」が利用されます。

・CoS(802.1p方式)
マルチベンダで利用できるCoS方式となり、トランクリンクのカプセル化方式が802.1Qの場合に利用できます。802.1Qのフレームフォーマット中にあるVLANタグ情報のうちの3ビットを用いて、プライオリティ(優先度)を伝達します。802.1Qのフレームフォーマットを利用するため、アクセスリンクでは利用できません。音声トラフィックで設定されるべき値は「5」となります。

figure1
図1 802.1p方式のフレームフォーマット模式図

・CoS(ISL方式)
Cisco社のCatalystで利用できるQoS方式で、トランクリンクのカプセル化方式がISL方式の場合に利用できます。ISLヘッダのうち4ビットを使い、プライオリティ(優先度)を伝達します。ISLフォーマットを利用するため、必然的に利用できるのがCisco機器に限定されます。注意が必要なのは、Cisco社の製品においても、他社からの買収を行ったプロダクト(例:Cisco WLC)については、Cisco社製品と言えどISL方式をサポートしていないため注意が必要です。

figure2
図2.ISL方式のフレームフォーマット模式図

マルチベンダ環境、およびISL方式をサポートしないデバイスがNWに存在する場合、事実上802.1p方式が有線LANデバイスにおけるレイヤ2 QoSで利用できる方式となります。

2.2.無線LAN(802.11)上でのQoS技術
無線LANはQoS種別が複数ある有線LANとは異なり、IEEEが規定した802.11e(Wi-Fi認定名:WMM(Wi-Fi Multimedia))を利用することが一般的です。また802.11e以外にも、集中制御型無線LANシステムにおいては、独自機能が実装されている場合があります。

・802.11e方式(WMM方式)
IEEE802.11eとして標準化、およびWI-Fi認定としては、WMM(Wi-Fi Multimedia)として認定されている、無線LAN上でのQoS方式となります。ここで注意が必要なのは、有線LANのQoSとは根本的にその動作原理が異なるということです。
無線LAN上で802.11eにより実現されるQoSは、「CSMA/CAのバックオフ時間を短くし、再度キャリアセンスを行うまでの時間を短くする」ことによって実現されます。またEDCA(Enhanced Distributed Channel Access)とも呼ばれます。
この802.11eでは、トラフィックの優先度に応じて4段階のアクセスカテゴリと呼ばれる送信キューにそれぞれパケットが格納され、個別にCSMA/CAの処理が実行されます。またこのとき、優先度が高いアクセスカテゴリほどバックオフの時間が短くなるよう設計されています。
バックオフ時間とはすなわち「キャリアセンスの結果、送信できなかった場合の次回キャリアセンスをするまでの待ち時間」であり、バックオフ時間が短くなるということは結果として「再送信の機会を多く獲得する」方式のアルゴリズムである、という点です。そのため、有線LANほどの確実性はなく、有線LANと比較すると到達性を保証しにくいアルゴリズムとなっています。これは伝送特性・実装上仕方のない方法であり、無線LANが抱える根本課題でもあります。音声トラフィックで設定されるべき値は「Voice(AC_VO)」となります。

table1
表1 802.11eのアクセスカテゴリとバックオフ時間の比較
figure3
図3.802.11e方式のフレームフォーマット模式図

・集中制御型無線LANシステム独自実装
QoSの厳密な定義からは外れますが、集中制御型無線LAN製品のいくつかは、独自の優先制御技術を備えている場合があります。例としてはAruba社、Cisco社の「ATF(Air Time Fairness)」などがあります。この技術は無線LANデバイスに対して均等に時間を割り当て、可能な限り公平な通信機会を与えようとするように動作する機能です。 通信機会を可能な限り均等に割り当てることで、結果として音声通信が安定する、という結果をもたらすことが期待されますが、VoWLANでは単に通信機会を割り当てれば良いというものではないため、この機能の利用には注意が必要です。厳密な意味でのQoSではないため、本稿の範囲の対象外としますが、実際の利用には入念な検討・検証確認が必要となる機能と考えています。

2.3.レイヤ3でのQoS技術
上記まではそれぞれの伝送メディアごとの「レイヤ2」のQoS技術でしたが、レイヤ3にもQoS技術は存在します。

・ToS(Type of Service、IP Precedenseとも)方式
IPヘッダ上の8ビット ToSフィールドを用いて、8段階のプライオリティ定義が可能な方式です。今日では同じフィールドを利用する後述のDSCPを用いる場合が多いため、本稿では省略します。

・DSCP(DiffServ Code Pint)方式
ToS方式と同じく、IPヘッダ上のToSフィールドのうち6ビットを使い、64段階のプライオリティ付けを実現しています。こちらはCoS方式と異なり、IPヘッダ内の情報を利用するため、トランクリンクでなくても利用できる点が特徴です。音声トラフィックで設定されるべき値は「46(EF)」となります。

figure4
図4.DSCP方式のパケットフォーマット模式図

3.QoSを扱う上で重要になる技術

3.1.QoSの入れ子構造
レイヤ2でのQoS、レイヤ3でのQoSのそれぞれ定義が可能なことからQoSの設計ポリシーによっては同一のフレーム内のレイヤ2ヘッダ、レイヤ3ヘッダ双方でQoS値の付加がなされることがあります。このような場合、通常はレイヤ2のQoSポリシー(優先度)とレイヤ3のQoSポリシー(優先度)は一致させることが理想ですが、様々な理由により不一致となることがあります。QoSポリシーの不一致により引き起こされる様々な問題については、次回以降に解説したいと思います。

figure5
図5.QoSの入れ子構造

3.2.リマーク
QoSを話す上で重要になるのが「リマーク」という機能です。リマークとは「特定の機器上で着信したパケットの優先度を変更したうえで次の機器へ送出する」処理を行うことを指します。
リマークを行うことにより、QoSの入れ子構造でしばし問題にある「QoSポリシーの不一致」を解消することが可能となります。
またQoSリマークは何も優先度を上げることだけではありません。場合によっては優先度を下げる処理をする必要がある場合においても活用できる機能となります。

figure6
図6.QOSの入れ子構造

まとめ

第1回ではVoIP、ひいてはVoWLANの昨今の流れについてのお話と、各QoSの要素技術について解説を行いました。
次回は集中制御型無線LANシステムを利用する上で問題となるQoS設計の難しさについて解説を行いたいと思います。

執筆者プロフィール

田中 政満
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部
応用技術部 エンタープライズSDNチーム
所属

入社以来無線LANの製品担当SEとして製品や技術の調査、検証評価、及び、提案や導入を支援する業務に従事。
現在はキャンパスセキュリティや自動化に力を入れるなど、エンタープライズSDNのエンジニアとして邁進中。
第1回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 最優秀賞

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