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第2回 不具合!? 無線LANのトラブルから学ぶシリーズ その2

匠コラム
運用・保守
ネットワーク

ビジネス推進本部 第1応用技術部
スイッチワイヤレスチーム
山下 聖太郎

スマートデバイスの普及や、IEEE802.11n/11ac規格に対応した無線LAN製品が主流になり、企業においても無線LANのニーズは高くなっています。
それに比例して無線LANの悩みやトラブルも増えてきており、単純な設定ミスから電波干渉、端末との相性、Bugなど原因は様々です。

本コラムでは、筆者の日々の業務の中で、弊社が主力として取り扱いをしているCisco無線LAN製品における、実際に遭遇したお客様の悩みを例に、無線LANにおける基本的な考え方と悩みに対する対応策について紹介します。

連載インデックス

近年の企業向けのアクセスポイントでは、前章でキーワードとして登場したChannel Utilization(チャネル使用率)やノイズによる電波干渉などをグラフィカルに表示できる製品が殆どです。
リアルタイムのデータではありませんが、APの周囲の電波環境をある程度把握する事が出来るため、無線LANを運用する際に有用な機能となっています。

図1.Cisco WLCのGUI画面におけるAPの周囲の電波環境の表示例

さらに製品によっては、よりリアルタイムに近い形で、APの周囲の電波環境の情報を収集する事の出来る、簡易的なスペクトラムアナライザとしての機能を実装しているAPも存在します。
中でもCisco製のClean Air対応アクセスポイントは、簡易スペクトラムアナライザ専用のチップを積んでいるため、他のメーカーと比べて高い精度での情報収集が可能になっています。
これは検証やサイトサーベイ時に周囲の電波環境を調査/把握するのに重宝する機能となっています。

図2.簡易スペクトラムアナライザ機能によるAPの周囲の電波環境の表示例
左上:Channel毎の現在のChannel Utilization(縦軸:[%] 横軸:Channel)
右上:指定したChannelのChannel Utilizationの推移(縦軸:[%] 横軸:時間)
左下:スペクトラムの推移(縦軸:時間 横軸:チャネル)
右下:Real Time FFT(縦軸:[dBm] 横軸:チャネル)

無線LANのトラブルシュートをする上では、まず障害発生時のパケットキャプチャや機器のdebugログを元に解析する事が多い為、補助的な扱いとなる事が多い機能ではありますが、本章ではこのCiscoの簡易スペクトラムアナライザ機能が活躍したトラブル事例を紹介します。

お客様の悩み:1日のうち一定時間2.4GHz帯の無線LANが一切利用出来なくなって困っている

お客様から2.4GHz帯を利用出来なくなることがあると申告を受け、さっそくヒアリングをした所、下記のような事が分かりました。

  • 事象発生時はAPに近い(2,3m)の場所でも通信が出来なくなる。
  • 端末の規格や設定は問題無くドライバも最新で問題無さそう。
  • 事象は不特定多数の端末で発生している。
  • 2.4GHz帯のみで発生し、5GHz帯では問題無い。
  • 一定時間というのは30分~1,2時間程度。
  • お昼付近で使えない事が多いがそれ以外の時間帯でもたまに発生する。

お昼頃に事象が発生する事が多いという事から、最初はよくある話として、無線LANと同じ2.4GHz帯を利用している電子レンジによる電波干渉を疑いました。しかし電子レンジは事象発生時に特に利用していない事が分かり、無線区間のパケットキャプチャとdebug情報を収集して、通信のやり取りがどこで止まっているのかを解析してみる事にしました。

無線LAN端末からフレームは出ている、しかしAPから返信が無い

取得したキャプチャやログの解析の結果、無線LAN端末から無線区間にフレームは出ており、APからフレームを受信した際の返信(ACK)が返ってきていない事が分かりました。この事実から下記のいずれかが原因である事まで推測できます。

① 無線LAN端末からのフレームの中身が不正もしくは壊れている。
② 無線LAN端末からの正常なフレームをAPが破棄してしまっている。
③ 無線LAN端末からのフレームがAPまで届いていない。

通常、①と②が原因であれば、パケットキャプチャとログの解析によって何が原因かまで分かる事が多いです。しかしこの事例では時間をかけて解析をしても、フレームの内容に問題は見つかりませんでした。
そのため、無線LAN端末からのフレームがAPまで届いていない③の可能性を調査する事にしました。

具体的にはお客様にもご協力を頂き、debugログの取得、2.4GHz帯全てのチャネルのパケットキャプチャ、Ciscoの簡易スペクトラムアナライザ機能による監視を1日中続けながら事象の発生を待ちました。

事象発生時に強力な電波干渉源の波形を確認

万全の状態で事象の発生を待っていたところ、お昼の休憩時間が終わった頃にお客様から事象が発生した旨の連絡を受けました。
すぐに簡易スペクトラムアナライザの画面を見ると、2.4GHz帯の全チャネルにおいて強力な電波を受信している事が分かる波形が表示されており、波形が消えると事象も収束しました。
このことから、原因は同じ周波数帯を利用している電波干渉源によって電波環境が悪化し、ノイズの影響で無線LAN端末からのフレームをAPが受け取れていない事が分かりました。

実施した解決策

その後の調査で、2.4GHz帯の干渉源はお客様の敷地外からの電波である事が分かりました。管理外の機器の電波を止める事は難しい事という事もあるため、この案件では2.4GHz帯の干渉源による影響の無い5GHz帯を利用する運用に切り替えて頂く事で、事象を回避する方法を選択しました。

まとめ

無線LANで利用している2.4GHz帯はISMバンド(産業科学医療用バンド)と呼ばれ、 無線LANや電子レンジ、Bluetoothなどの一般によく知られている機器以外でも様々な機器で利用されている周波数帯です。日本の法律に準拠した製品であれば、誰でも自由に使える周波数帯のため、運用中にも電波環境が変わる事は珍しくありません。

Ciscoの簡易スペクトラムアナライザ機能を利用すると、AP周囲の電波環境を詳細に確認する事が出来るため、もし無線LANトラブルが発生した際に、周囲の電波環境も一緒に調べてみると今までと違った発見があるかもしれません。ご参考になれば幸いです。

次回、第3回は『どちらが悪い!? 無線LANのトラブルから学ぶシリーズ その3』
について紹介します。

執筆者プロフィール

山下 聖太郎
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 スイッチワイヤレスチーム
所属
入社以来無線LANの製品担当SEとして製品や技術の調査、検証評価、及び、提案や導入を支援する業務に従事
現在は様々な状況下での無線LANシステムの検証に力を入れ、限界を理解した上で、より使える無線LANの提供を目指して邁進中

  • 第一級陸上特殊無線技士
  • 第1回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 最優秀賞

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