【VxRail / HCI ①】 なぜ今、ハイパーコンバージドが注目されるのか?

ビジネス推進本部 応用技術部
クラウドデータセンターチーム
川満 雄樹

ハイパーコンバージドとは?

約2年前、VMware社がEVO:RAILプログラムを発表した際に使われその後、徐々に浸透したHyper Converged(ハイパーコンバージド)、Hyper Convergence(ハイパーコンバージェンス)と言うフレーズ。

Infrastructure や Appliance という単語と組み合わせて、HCI、HCIAと呼ばれる仮想化基盤製品を指すフレーズとして、この1年間でかなり多くのWebメディアやICTに関する記事で見かけるようになった印象です。

このHCIやHCIAで導入される仮想化基盤が急激に増え、IDCやガートナーのレポートでも今後5年で40億ドル規模の市場に成長すると予測されています。

日本語に直訳すると超集約、超統合などと説明されますが、HCI、HCIAの各製品は従来の統合型の仮想化基盤と異なり、SANやNASなどの外部共有ストレージを利用せずに、アプライアンスに搭載されたローカルのSSD、HDDをソフトウェア機能で統合し、仮想化基盤で利用する共有ストレージ(データストア)を構成する事に特徴があります。

これらはソフトウェア機能で共有ストレージ機能を提供する「Software Defined Storage(SDS)」と呼ばれるストレージに分類され、
代表的なものとしてVmware社のVirtual SAN(VSAN)や、Nutanix社のNutanix 分散ファイルシステム(NDFS)などがあります。

なぜハイパーコンバージドが注目され始めたのか?

なぜこの2年ほどで急にHyper Convergedという新しい仮想化基盤の製品が注目を浴びるようになったのでしょうか。
その理由は技術要素の視点において、大きく3つあると考えています。

▼SDS製品の技術的な成熟

1つ目は、SDS製品の機能と信頼性が技術的に成熟し、多くの導入事例が出てきました。
このことが、今までSDSに懐疑的だったユーザーを取り込み始めた事だと思われます。

従来、可用性・冗長性を確保した仮想化基盤を構成するには外部共有ストレージの利用が必須でした。

VSANやNDFSなどのSDS製品の登場でわざわざ外部共有ストレージを購入しなくても、仮想化基盤を構成するIAサーバにSSDやHDDを搭載すれば共有ストレージ化する事が可能になりました。

これにより、管理しなければいけない機器点数の削減やデータセンターのスペース削減、省電力化が実現でき、TCO削減の観点で注目度が高まりつつあります。

HCI-01

▼サーバ製品の大幅な性能向上

2つ目は、CPU性能の飛躍的な向上と、メモリの大容量化など物理コンポーネントの高性能化が大きく影響していると考えられます。

仮想化技術が普及して久しいですが、仮想化が一般的になり始めた2008年から2010年頃は、1ホストあたりの仮想マシンの集約台数は10台から多くても20台程度でした。そのため、4台のホストでクラスタを構成した場合でも60台から100台程度を集約すれば十分なサイジングでした。

SPEC(https://spec.org/)などの団体が公開している性能指標でも確認できますが、5年前にハイエンドモデルだったIntel Xeon X5690を搭載したIAサーバのベンチマーク(CINT2006 Rates指標)が420前後でした。
しかし、現在主流のIntel Xeon E5-2690 v3 では1100前後、最新のE5-2690 v4では1400前後と、たった数年でCPUだけでも3倍以上の性能向上が確認できます。
メモリも同様にDDR3からDDR4へ進化し、ネットワークも10Gが一般化するなど大容量・高速化が加速しています。

 最近のサイジングでは、1台のホストで稼働する仮想マシンが50台以上の集約も可能となり、ホストの冗長性を加味して3台から4台のホストでクラスタを構成した場合でも150台から200台以上の仮想マシンを集約する事も珍しくありません。
従来は仮想化統合する対象のサーバのサイジングを厳密に行い、1台毎のホスト上で稼働する仮想マシンの数を詳細に設計していました。
当社が取り扱うEMC社VxRailのように4台のホストが1セットとなったアプライアンス製品では、1アプライアンスで高集約・高性能な仮想化基盤が利用可能なため、最初は大まかなサイジングで仮想化基盤を導入し、仮想マシンを必要な分だけ順次展開し、リソースが足りなくなったらアプライアンスやノードを追加しリソースを拡張させる事が可能になりました。

サーバの高性能・高集約かが仮想化基盤の”ハイパー”化を進めていると言えます。

▼クラウドサービスの一般化と”ざっくりサイジング”

そして3つ目は、上記に2つ目の最後に記した仮想化基盤を導入する際のサイジングの考え方の変化があると考えられます。

物理コンポーネントの性能が飛躍的に向上し、CPUの高性能化やメモリの大容量化の他にも、10Gbpsの広帯域ネットワークの普及や、SSDなどの高速ドライブの普及・低価格化のおかげで、余裕を持った仮想化統合のサイジングをする事が一般的になりました。

また、ICT基盤における”ざっくりサイジング”の考え方が一般的になったのは、Amazon AWSやMicrosoft Azureのようなパブリッククラウドサービスを利用するユーザーが増え、ICT基盤における従量課金の考え方が普及した事も背景にあるようです。

ハイパーコンバージドの特長紹介

本コラムでは数回に分けてHCI製品の魅力、特にVMware Virtual SAN(VSAN)の最新情報やVSANを基盤としたHCI製品、VxRail Applianceの特長や技術情報をお伝えしたいと思います。

私が多くのお客様へHCI製品のご紹介した際に、皆様が気にされていたのはSoftware Defined Storage(SDS)の機能・性能・安定性についてでした。
※現在、Vmware社とEMC社の共同開発のVxRail Applianceや、Nutanix社製品、HPE社のHyper Converged System シリーズ、Cisco Hyper Flexシリーズなど、各社特色のあるSoftware Defined Storage(SDS)をベースとしたHCI製品を展開しております。

可用性やデータの保護性能に関しては各社の様々な特徴的な機能で実装されておりますので、今回は簡単にSDSがどのくらいの性能を提供できるものなのか、VMware Virtual SAN(VSAN)をベースとしたVxRail ApplianceのIO性能のベンチマーク結果をご紹介したいと思います。

SDSの性能チェック : VxRail VSAN IOベンチマーク

今回は1ノード(ESXiホスト)あたり6コアCPU(Intel Xeon E5-2620v3)を2基・192GBメモリ・SAS3 400GB SSDを搭載し、4ノードで構成されたVxRail 120でのIO性能のベンチマーク結果をご紹介します。

なお、使用したベンチマークツールはvSphere 6.0u1から標準実装されたVSAN Healthcheckを利用し10分間の負荷テストを実施しました。
貼付しているパフォーマンスグラフはVxRailの管理インターフェース VxRail Managerの健全性モニタのグラフです。

※VxRail ApplianceのソフトウェアバージョンはVxRail 3.0(vSphere 6.0u1ベース)となります。
※VxRail 120はVxRailシリーズのラインナップの中でも2基のCPUを搭載したモデルでは最小構成のモデルとなります。

参照 : VxRail スペックシート
http://www.vce.com/asset/documents/vxrail-spec-sheet.pdf

▼Read 100% IO負荷時のパフォーマンス(VxRail 120)

VxRail_IO_01

VxRail 120は最新のSAS3インターフェースのSSDの性能の恩恵もあり、Read 100%の負荷では平均262,813 IOPS、1ノードあたり65,000 IOPSが確認できます。

(ワークフロー : Performance characterization – 100% Read, optimal RC usage)

▼Read 70% Write 30% 負荷時のパフォーマンス(VxRail 120)

VxRail_IO_02

実際の仮想マシンのIO負荷の想定に近いRead 70% Write 30%のIOでは平均48,538 IOPSを記録しております。

(ワークフロー : Performance characterization – 70/30 read/write mix, realistic, optimal flash cache usage)

▼Write 100% 負荷時のパフォーマンス(VxRail 120)

VxRail_IO_03

最後にWrite 100%の負荷では平均 56,197 IOPSを記録しており、突発的な大量の書き込みが発生するような仮想マシンの稼働も安心して搭載できることがわかります。

(ワークフロー : Performance characterization – 100% Write, optimal WB usage )

これら上記のスコアからも分かるように、VxRail 120においてもIOの値は非常に高い数値を示している事がわかります。より上位のモデルではコア数が多いCPUモデル、より大容量のメモリを搭載する事が可能なのでIO負荷がかかった際のリソース仕様を低く抑える事が可能です。

従来高価な外部共有ストレージで緻密なチューニングの結果で得られていた性能値を、現在は各ノードに搭載された最新のSSDとHDDで構成されたVSANで実現できるのです。

 (参考) EVO:RAIL VSAN IO ベンチマーク

参考までに、VxRail Applianceの前身となる当社のEVO:RAIL 2.0(vSphere6.0u1ベース)でのIO性能のベンチマークを以下に紹介します。
※EVO:RAILは1ノード(ESXiホスト)あたり6コアCPU(Intel Xeon E5-2620v2)を2基・192GBメモリ、SATA2 400GB SSDを搭載し、4ノード構成となり、CPUの世代とSSDのインターフェース帯域が異なる以外、ほぼ構成は同等となります。

▼Read 100% IO負荷時のパフォーマンス (EVO:RAIL 2.0)

EVO_IO_01

EVO:RAIL 2.0での計測ではCPUが一世代前のモデルである事、およびSSDのバックプレーンがSAS2 / SATA2のインターフェースであったため、VxRail 120と比較すると若干低めの平均 193,134 IOPSを記録しております。

(ワークフロー : Performance characterization – 100% Read, optimal RC usage)

▼Read 70% Write 30% 負荷時のパフォーマンス (EVO:RAIL 2.0)

EVO_IO_02

実際の仮想マシンのIO負荷の想定に近いRead 70% Write 30%のIOでは平均40,086 IOPSを記録しております。

(ワークフロー : Performance characterization – 70/30 read/write mix, realistic, optimal flash cache usage)

▼Write 100% 負荷時のパフォーマンス (EVO:RAIL 2.0)

EVO_IO_03

最後にWrite 100%の負荷では平均 33,142 IOPSを記録しております。

(ワークフロー : Performance characterization – 100% Write, optimal WB usage)

EVO:RAILはリリースされて2年が経過する製品なので、最新のVxRailと比較するとCPUやSSDの性能の差で、若干IO性能値に差が出ている事が確認できました。
この事からも、VxRail も EVO:RAIL は汎用のIAサーバを利用した仮想化基盤専用のアプライアンス製品ではCPUやメモリ、IOデバイスの世代(性能)の進化が、SDSとしての性能にも直結してくることが分かります。

 考察

今回はVSAN Healthcheckのベンチマーク結果で比較しましたが、CPUやIOインターフェースの世代の違いだけでもIO性能やCPUの負荷状況が大きく変わる事がお分かり頂けたかと思います。

Software Defined Storage(SDS) は毎年新しい世代の製品が発表されるCPUやSSDの性能向上が即ストレージの性能に直結するため、恐らく今後も飛躍的に性能・容量が向上していくものと思われます。

今年は最新の3D NAND TLC を搭載した大容量・高性能SSDの流通が始まり、それらを搭載したAll Flash HCI製品も市場に登場しました。
IDCやガートナーが予測する「5年後に市場の多くを占めるようになるHCI製品」は、現在の製品と比較して桁違いの性能・容量を提供するものになるかもしれません。

本コラム、第一回は「なぜ今、ハイパーコンバージドが注目されるのか?」と題してHCI製品の性能に関して記しましたが、急激に進化するHCI製品の特徴の一端を感じる事が出来ましたでしょうか。
第二回以降もHCI製品について皆様の気になる情報をお伝えしていきたいと思います。

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