第1回 なぜデータセンタースイッチでないといけないのか? ~データセンターネットワークの現在~

ビジネス推進本部 応用技術部 エンタープライズSDNチーム
鈴木 俊吾、SUHARTONO RYOSUNATA
ビジネス推進本部 応用技術部 クラウドデータセンターチーム
杉 亜希子
市場開発本部 ソリューション・サービス企画室 第1チーム
東 竜一

クラウド利用の普及に伴い、データセンターの新設、拡張が進んできています。
クラウド基盤となるデータセンターネットワークでは、これまでの企業ネットワークのようなトポロジーや機能、性能では要件を満たすことが難しくなってきています。
クラウドサービスを提供する事業者では、データセンター向けスイッチの導入により大規模なデータセンターを構築しています。一方で、プライベートクラウドを検討されている企業ではこれまでの企業ネットワークと同様な観点で機器選定しているケースが少なくありません。
そのため、本コラムでは全4回でデータセンター向けスイッチの必要性、スイッチの選定ポイント、さらにデータセンターで求められるテクノロジーを含め解説します。

連載インデックス

本文

クラウド利用の普及に伴い、その基盤となるデータセンターネットワークでは、通信されるデータの量、種類、経路などが変化してきています。
そのため、これまでの企業ネットワークで一般的に構築されてきた従来の階層型トポロジーやループ回避機能、ネットワーク機器のパケット転送速度などに代表される機器性能では、高速で大容量な通信が必要とされる現在においてサービス要件を満たすことが難しくなってきています。
これを解決するために近年ではデータセンターネットワークに合わせた機能、性能を備えたデータセンター向けのスイッチ(以降DCスイッチ)が各ネットワークベンダーよりリリースされてきております。
本稿ではDCスイッチの必要性についてデータセンターネットワークにおける通信の変化に着目して紹介していきます。

大きく4つの要因によりデータセンター内の通信が変化してきていると言えます。
まず、1つ目としてあげられるのは「サーバ仮想化」が大きな要因となっています。

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             図1:サーバ仮想化によるDC内の通信量増加

既に一般的になってきており多くの企業で導入が進んでいるサーバ仮想化技術は、様々なメリットがあります。
例えば、「障害時の迅速な復旧」という点では、サーバ仮想化を行うと、OSとアプリケーションはファイル(データ)としてストレージに保管されるため、障害発生時に正常なサーバでデプロイするだけで復旧できるようになります。また、代表的な機能である「Live Migration」により、仮想化されたサーバのメンテナンス、余剰リソースの有効活用などのメリットを得ることができます。
一方で、仮想マシンのデータは基本的に共有ストレージに格納し参照するため、共有ストレージとサーバ間のトラフィック増加を考慮する必要があります。また、ネットワークにおいてはLive Migrationにより流動的に発生するトラフィックを考慮する必要があります。加えて、同じIPアドレスを使い続けるためにレイヤ2のネットワークである必要があり、一般的にL2 Fabricとよばれるような大規模なレイヤ2ネットワークを実現できるテクノロジーが必要になります。
以上のようにDCネットワーク内に流れるトラフィックは増加してきていると言えます。

次に2つ目の要因としては、「ネットワークインターフェースカード(NIC)の高速化」があげられます。サーバ仮想化の普及に伴い、現在のサーバでは、10G NICが主流となりつつあります。これによりネットワークも1GbEから10GbE/40GbE中心のネットワークになっており、今後もさらに高速化が見込まれています。

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             図2:NICの高速化によるDC内の通信量増加

NICの高速化によりさらに仮想環境への移行が進んでおり、これによりサーバ×1台に対するトラフィック密度が上昇します。また、Hypervisorの仕様により通信用途別に1Gのネットワークを構築していましたが、10G NICの搭載により統合可能となります。
EthernetとFCを統合できる技術(FCoE)の登場により10GbE化へ移行する後押しする要因の一つとなっています。
上記のようにNICの高速化が進むことによって、データセンターネットワーク上には、一度に多くのトラフィックが流れるような状況となってきております。

3つ目の要因としては、「通信経路の変化」が考えられます。
従来のデータセンタートラフィックは、サーバとインターネットなどの間の縦方向通信が多い傾向になっていました。1つ目の要因としてあげたサーバ仮想化に伴い、サーバ間通信、サーバとストレージ間通信が増加してきており、今後のデータセンタートラフィックは、こういった横方向通信が増加してきており、ネットワーク帯域使用量の多数(およそ7~8割)を占めてきます。このように急激にデータセンタートラフィックが増加してきています。

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                図3:DC内の通信経路の変化

そのような環境で冗長構成をとる場合は、従来使用されてきたSpanning Tree Protocol(STP)のようなレイヤ2冗長機能における環境では使用されないリンクが多く効率が悪いため、これらのリンクのActive/Active化を実現できるテクノロジーが求められます。

4つ目の要因としては、Big Dataを活用した新しいアプリケーションが多数出現していることがあげられます。

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               図4:Big Dataの処理イメージ

Big Dataの集計・分類・解析する上では、大規模な処理を行うために複数のサーバでクラスタを組んで並列分散処理を行います。そのため、サーバ間、サーバとストレージ間で大量のデータがやり取りされることになります。
これにより、一度に大量のトラフィックを転送できるようなネットワークが必要となっており、スイッチ自体に高いトラフィック転送能力が求められてきています。

これまで上げてきたようにデータセンターで求められる要件が変化してきており、従来のスイッチでは実現が難しくなってきています。そのため、これを実現できる機能、性能を備えたDCスイッチが登場してきています。

まとめ

データセンターネットワークに合わせた機能、性能を備えたDCスイッチの必要性が高まっている背景を紹介しました。
データセンターネットワークでは、通信されるデータの量、種類、経路などが変化してきており、従来のトポロジーや機能、機器性能では、高速で大容量な通信が必要とされる現在のサービス要件を満たすことが難しくなってきています。
そのため、近年ではデータセンターに特化したスイッチの需要が高まっています。

次回は、
『第2回 なぜデータセンタースイッチでないといけないのか? ~支えます!サーバ、ストレージ~』を説明いたします。

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