第3回 どちらが悪い!? 無線LANのトラブルから学ぶシリーズ その3

ビジネス推進本部 第1応用技術部
スイッチワイヤレスチーム
山下 聖太郎

スマートデバイスの普及や、IEEE802.11n/11ac規格に対応した無線LAN製品が主流になり、企業においても無線LANのニーズは高くなっています。
それに比例して無線LANの悩みやトラブルも増えてきており、単純な設定ミスから電波干渉、端末との相性、Bugなど原因は様々です。

本コラムでは、筆者の日々の業務の中で、弊社が主力として取り扱いをしているCisco無線LAN製品における実際に遭遇したお客様の悩みを例に、無線LANにおける基本的な考え方と悩みに対する対応策について紹介します。

連載インデックス

昨今の市場に流通している無線LAN製品は、Wi-Fi Allianceという業界団体が実施する相互接続性のテストに合格した製品に与えられる「Wi-Fi認定」を取得した製品が殆どです。
Wi-Fi認定を受けた製品は、少なくともWi-Fi Allianceの用意した環境でのテストに合格した製品であるお墨付きを受ける事が出来るため、無線LANの機器選定する上で相互接続性の一つの目安となります。

近年は無線LANの利用が一般にも広まり、端末とアクセスポイントとの相互接続性を意識する事も少なくなってきていますが、無線LANが普及し始めた頃は同一メーカ製品のアクセスポイントと無線LAN端末しか安定して接続出来ないケースもあり、アクセスポイントと端末の相性も重要な要素でした。

多種多様な製品に無線LAN機能が付随されてきている昨今、特定の無線LAN端末だけで発生する通信トラブルも増加傾向にあります。
本章では無線LAN製品の相互接続性によって発生したトラブルについてご紹介したいと思います。

お客様の悩み:無線LANを導入したはいいのだが、タブレットPCが接続出来たり出来なかったりと安定しない。

お客様先で起きている事象をまとめると下記のような事が分かりました。

・5GHz帯で事象が発生している。
・暗号化方式はWPA2/AES-CCMP
・異なる無線LAN端末で試してみると問題無い。
・タブレットPCのドライバは最新。
・端末側、アクセスポイント側の設定は問題無い。

無線LANの通信トラブルが発生した場合、事象が発生した端末が特定の端末か不特定多数の端末かで最初に疑うべき障害ポイントが異なってきます。

・不特定多数の端末で問題が発生している場合:アクセスポイント側の問題である事が多い
・特定の端末のみで発生している場合:端末側の問題である事が多い。

今回のお客様先の事象も特定の端末のみで発生している事もあり、端末側の調査を中心に切り分けを実施していきました。

5GHz帯で繋がるチャネルと繋がらないチャネルがある。

切り分けを進めると、どうやら問題が発生しているタブレットPCが全く接続出来ないAPが存在している事が分かりました。
他の端末では接続が可能な事から、アクセスポイントのHW障害の可能性は排除してさらに調査を進めました。
すると接続出来ないAPには共通している点として、5GHz帯の特定の周波数帯域のチャネルを利用している事が分かりました。
2015年現在、日本で免許無しで無線LAN用に利用できる5GHz帯のチャネルは、3つの周波数帯域に分類する事が出来ます。

5.2GHz帯(W52)の4チャネル(36ch,40ch,44ch,48ch)
5.3GHz帯(W53)の4チャネル(52ch,56ch,60ch,64ch)
5.6GHz帯(W56)の11チャネル(100ch,104ch,108ch,112ch……140ch)

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     図1.2015年現在日本で利用できる5GHzのチャネル(合計19チャネル)

対象のタブレットPCは図1のW52のチャネル(36ch,40ch,44ch,48ch)を利用しているAPにのみ接続が出来、5GHz帯のW53、W56のチャネルが利用されているAPには接続が出来ていない事が分かりました。

OSアップデートで5GHz帯がサポートにしか使えるチャネルがW52のみだった。

タブレットPCのメーカーサイトを見てみると、障害が発生しているタブレットPCはOSアップデートにより5GHz帯の周波数帯がサポートされると記載があり、それを見てお客様も5GHz帯の全てのチャネルが利用できると思い込んでしまいました。

しかし、メーカーサイトにはサポートしているチャネルまでは明記されておらず、5GHz帯のどのチャネルが利用できるかまでは分かりませんでした。

そこで、タブレットPCの技術基準適合証明の取得状況について総務省のホームページを検索して見た所、対象のタブレットPCは5GHz帯のチャネルのうちW52の4チャネル分しか技術基準適合証明を取得していない事が分かり、W53、W56のチャネルには対応していない事がそこでようやくはっきりとしました。

実施した解決策

タブレットPCも無線LANで利用するためにアクセスポイント側で5GHz帯のチャネルをW52の36,40,44,48チャネルのみにする事で、事象が発生していたタブレットPCも問題無く接続する事が可能になりました。

まとめ

今回の事例のように無線LAN端末によっては、利用を想定していたチャネルが利用できない、という事態も起こり得ます。

また、5GHz帯のW52、W53、W56のチャネルのうちW56に関しては、2007年の電波法改正によって無線LANでも利用する事の出来るようになったチャネルのため、改正前より以前に市場に販売された5GHz帯に対応した無線LAN製品はW56のチャネルをサポートしていません。

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     図2.2015年現在日本で利用できる5GHzのチャネル(合計19チャネル)

無線LANの利用が当たり前のようになってきた昨今では、不特定多数の様々な種類の無線LAN端末が市場に存在しており、全ての製品が同じ規格、同じチャネルをサポートしている訳ではありません。
今後、無線LANの導入や機器選定を検討されている方は、利用しようとしている無線LAN端末がどのチャネルまでサポートしているのかまで確認すると、このようなトラブルは未然に防げるかもしれません。ご参考になれば幸いです。

執筆者プロフィール

山下 聖太郎
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 スイッチワイヤレスチーム
所属
入社以来無線LANの製品担当SEとして製品や技術の調査、検証評価、及び、提案や導入を支援する業務に従事
現在は様々な状況下での無線LANシステムの検証に力を入れ、限界を理解した上で、より使える無線LANの提供を目指して邁進中
・第一級陸上特殊無線技士
・第1回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 最優秀賞

イベント/レポート

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