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NEWS

【10/9開催ネットワンセミナー】横河電機様 講演レポート

Report:事業IT/インダストリーから見たテレコムキャリアへの期待と展望
横河電機が進めるDXアプローチについて

イベント

近年、通信キャリアを取り巻く市場環境は急激に変化している。競争を勝ち抜くためには、通信キャリアの従来の強みを生かしながら、顧客のニーズに合う新たなサービスを提供していかなければならない。2019年10月9日に開催されたネットワンシステムズ主催のセミナー「事業IT/インダストリーから見たテレコムキャリアへの期待と展望」に登壇した、横河電機株式会社 舩生幸宏氏の講演では、まさに市場の激変を象徴するような、同社のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが紹介された。その内容は、今後、通信キャリアが新たなサービスを打ち出していく上で、重要なヒントとなるだろう。

横河電機株式会社
執行役員 デジタル戦略本部 デジタル戦略本部長(CIO)兼
デジタルエンタープライズ事業本部 DXプラットフォームセンター長
舩生幸宏氏

1915年創立の横河電機株式会社は、石油・ガス・化学・電力などの産業分野の企業を顧客とする、国内最大手の制御・計測機器メーカーだ。売上高は約4,037億円(連結、2019年3月期)で、その約7割を海外から上げている。

同社は、売上全体の9割近くを占める主軸の制御事業において、顧客の組織のあらゆる要素を結びつけて持続可能な価値を創出する、「Synaptic Business Automation」というビジネスコンセプトを掲げている。それにもとづき、同社は2018年、3カ年の中期経営計画「TF2020」を策定、大きく3つの目標を掲げて改革に取り組んでいる。

第一の目標は、既存事業の変革。すなわち、顧客とともに生産性革命を実現するなどして、主軸の制御事業をいかに成長させるか、ということだ。第二に、新事業とビジネスモデル変革への挑戦。これは現在、新たなビジネス領域として同社が力を入れているバイオビジネスやIoTビジネスの拡大を念頭に置いたものだ。そして第三に、グループの全体最適による生産性の向上。前述の通り、同社のビジネスの過半は海外で展開されているため、グローバルでコスト競争力や人材力の強化、組織構造の最適化を図る必要がある。舩生氏はいう。

「それら3つの目標に向かって前進するためのカギとして、中期経営計画の中心に位置付けているのがDXなのです。」

DXに至る3つのステップ

既存事業の成長と新事業の拡大の双方を目指す同社の計画は、まさに今、イノベーション理論の最先端として世界中で研究が進められている「両利きの経営」を実現しようとする試みだ。その中で、いわゆる「知の深化=モード1」と「知の探索=モード2」を同社がどのように理解しているかについて、舩生氏はこう解説する。

「われわれは、モード1を既存のビジネス、モード2を新規のビジネスと捉えています。そうしたとき、やはりモード1はキャッシュ・カウ(金のなる木)なので、当然ながらそこに予算やリソースが集中しがちです。一方、モード2は今後どうなるかわからない領域なので、予算やリソースがなかなか投下されない。そういうジレンマがあって『両利きの経営』のバランスを取るのが難しい、というのが昨今の状況だと考えています。」

そして、それは同社のIT部門についても同様にいえることだ、と舩生氏は続ける。2019年時点で、同社のIT部門の仕事は、ERPやインフラの運用・保守・改良といったモード1の業務が約80%、それに対してRPAやAI、データ解析といったモード2の業務が約20%となっている。2023年を目途に、この比率を50%対50%までもっていき、DXにつなげることが、中期経営計画「TF2020」で掲げられた同社IT部門の最大の目標なのだ。

一般的に、DXに至る過程には3つのステップがあるとされている。すなわち「デジタイゼーション(さまざまな事象をデジタルデータ化して活用できるようにすること)」、「デジタライゼーション(データを活用して新たな利益や価値を生み出すこと)」、「デジタルトランスフォーメーション(ITの浸透により人々の生活をあらゆる面でよりよい方向へ変化させること)」の3段階である。

それを踏まえ、現時点で製造業界の多くの企業は、ステップ1よりさらに前の段階にとどまっている、と舩生氏は分析する。通常、製造業の企業には、ITのシステムのほかに、事業所やプラントの制御システムといったOTのシステムがある。そして、それぞれを異なる責任者(ITをCIO、OTを工場長など)が個別に管理し、その間で情報をやり取りする仕組みになっている場合が多い。さらに、ひとつの企業グループ内でも、国や地域毎に別々のERPを使っていたり、事業所やプラントそれぞれでOTを構築していたりするケースが少なくない。

DXのカギはデータ統合、およびデータアナリスト・AIエンジニアの数

そうした状況において、DXを実現するにはどうすればいいのか。舩生氏が、その最初のステップとして挙げるのが、事業所やプラントで収集される様々なデータをクラウド上のデータレイクに蓄積することだ。そして次のステップとして、AIを活用し、データ分析やその後のアクションを自動化する。さらにクラウド化が進むと、最後のステップとして、データにもとづくリアルタイムな意思決定や、会社間のシステム連携が可能になる。そうしたDXに至る過程において、同社は今、最初のステップであるデジタイゼーションの段階にある、というのが舩生氏の認識だ。

「DXを成し遂げる上でもっとも重要なのは、やはりデータ統合だと考えています。ただ、データというのはシステムから生み出されるので、まずは企業内に複数存在するシステムの統合から始めなければなりません。システム統合とデータ統合を実現できたら、次にカギとなるのが、データアナリストやAIエンジニアの数です。今後、そうした要素が市場における競争優位性を決定するという想定のもと、弊社は現在、データ統合に邁進しているところです」

そんな中、同社内で盛んに議論されているのが、「デジタルエンタープライズ」というコンセプトだ。これは、すべての企業活動を仮想化し、モバイル等のデバイスを使っていつでも、どこでも、どのようにでも操作できるようにする、という概念だ。

それを実現するため、同社が打ち出したのは次のような方針だ。まず、インフラやバックオフィスなどの領域に関しては、徹底的なグローバル最適化を進め、販売管理費を削減していく。その背景には、この領域は企業の競争優位性に直接つながるものではない、との判断がある。逆に、勝敗を決定づける領域と認識しているのが、DXによって顧客・サプライヤー・従業員とのつながりを如何に強化し、価値を最大化するか、という部分。デジタルを活用してステークホルダーをコミュニティ化することこそが、ビジネスの拡大につながる、と舩生氏は強調する。

その上で、舩生氏の率いるデジタル戦略本部は、「単なる製造業から、IT/OT統合を実現する世界的なソリューション・サービス企業への変革に貢献する」というミッションを掲げ、インターナルDX(社内のDX)とエクスターナルDX(顧客向けのDX)に取り組んでいる。前者は文字通り、横河電機自体がデジタルエンタープライズを実現する、ということ。後者は、顧客とともにそのデジタルエンタープライズを成し遂げる、ということだ。

4項目のIT中期方針を策定しDXに向けて前進

DXの実現に向け、デジタル戦略本部の策定したIT中期方針は以下の4項目だ。

(1)YOKOGAWA×グローバル最適化
既存のITのコストをいかに削減するかという観点から、アプリケーションとインフラのグローバル最適化及びグローバルなデータ統合等を進める。

(2)YOKOGAWA×デジタル化/サービス化
従業員の生産性向上及び顧客への提供価値向上に向け、インターナルDXおよびエクスターナルDXを推進する。また、DXに伴うリソース不足の問題を解決するため、海外でDXエンジニアを育成し、グローバルで活用する。

(3)YOKOGAWA×セキュリティ強化
グローバルな情報セキュリティガバナンスを強化する。また、クラウド、エンドポイント、ウェブサイト、OTのセキュリティを強化する。

(4)YOKOGAWA×ITトランスフォーメーション
モード1からモード2へ、ITコスト・リソースをシフトさせる。また、ITのグローバル化とITプロセスのグローバル標準化を進める。
さらに、データドリブン及びクラウド・アジャイルファーストを企業の共通基盤とし、カルチャー変革を実現する。

講演では、(3)を除く3つの方針について詳しい解説がなされた。

(1)YOKOGAWA×グローバル最適化

同社では、エンタープライズアーキテクチャによるグローバル最適化を3つのレイヤーで進めている。一番下のレイヤーである「グローバルDXコア」においては、インフラとバックオフィスのシステムの数を削減し、グローバルプラットフォーム化を推進。その上のレイヤー「ビジネスオペレーション」では、営業・マーケティング・製造といった各事業本部において、プロセスとして統合すべきところとそうでないところを仕分けし、必要に応じて標準化を図っている。さらに、一番上の「カスタマーUX」レイヤーにおいては、各事業本部がそれぞれ顧客向けに開発したプラットフォームを統合し、再構築を進めている。

アプリケーションのグローバル統合については、アプリケーションを簡素化しつつその数自体を減らし、メンテナンスコストを削減。また、インフラに関しても、データセンターやネットワークなどの各領域、あるいは販社などの各拠点でバラバラだったものをグローバルで標準化するとともに、セキュリティの強化やメンテナンスコストのカットに努めている。

続いて語られたのは、DXの最重要課題と位置づけるデータ統合についてだ。製造業の多くの企業と同様、同社にはIT領域のデータとOT領域のデータが存在する。このうちITのデータについては、クラウドにデータレイクを構築し、2019年4月からグローバルで運用を始めている。また、OTに関しても、現在、製造部門と協力してデータレイクを構築中だ。将来的にはITのデータと統合し、デジタルツイン化を狙っているという。

(2)YOKOGAWA×デジタル化/サービス化

インターナルDXに関して同社は、3つのステップを設定してさまざまな施策に取り組んでいる。第一のステップは、ITプロセスのグローバル標準化と、グローバルでのOffice 365の導入。加えて、前出のデジタルツイン化とセルフサービスBIのグローバル展開だ。

第二のステップは、顧客・サプライヤー・従業員とのつながりを強化することによる価値の最大化だ。そのための施策として、RPAのグローバル実装や、デジタルマーケティング・CRM・PLM・デジタルエンジニアリングなどの強化、デジタルファクトリー化、サービスのデジタル化等のプロジェクトを進めている。

そして第三のステップは、顧客・サプライヤー・従業員のポータルの一元化だ。国や地域、販社ごとに存在するポータルをいかにグローバルで統合できるかが、今後のビジネス拡大のカギを握っている、と舩生氏は話す。

具体的にデータをどう活用するかという、多くの企業を悩ませている課題についても、同社は綿密な計画を立案し、実行に移している。まず、グローバルでTableauを導入すると同時に、各事業本部からデータアナリストの候補者を集め、VDA(バーチャルデータアナリスト)コミュニティを設置。そこを中心としてデータ分析トレーニングや重要会議のTableau化等をグローバルで進めていく。

次に、そうして蓄積した知見をユースケースとして共有化する等して、データドリブンの文化を定着させていく。この計画を実践する上では、当然、データアナリストの数自体がカギとなるため、地道に人材を育成し、その数を増やしていく必要がある。

とはいえ、人材を日本国内だけで確保するのは難しい。そこで同社は、たとえばインド工科大学から輩出される人材を日本で育てたり、あるいはインドやシンガポールでデータサイエンティスト・AIエンジニア・IIoTエンジニア・ブロックチェーンエンジニアなどを採用して現地で育成したり、といったグローバルなDX推進のサポート体制を構築している。

(4)YOKOGAWA×ITトランスフォーメーション

続いて、デジタル戦略本部のIT中期方針の4つ目のテーマであるITトランスフォーメーションについて。同社では、ITトランスフォーメーションを進めるための5段階のロードマップを作成している。

レベル1~2におけるIT部門の役割は、単に通常のITの仕事を担うだけの、ハイコストあるいはローコストなITプロバイダーであるに過ぎない。そこから徐々に高度化してき、最終的にDXを成功させる存在へと成長していくイメージだ。舩生氏によると、現状、同社のIT部門はレベル3に位置し、ビジネストランスフォーメーションに貢献できるような実力を磨いている最中だという。

そのように、DXへ向けて着実に歩みを進めている同社。しかし、課題がないわけではない。

「一番難しいのは、カルチャーの変革です。一般にIT部門というのは、ビジネス部門から相談があると、『お金がない』『時間がない』といった理由ですぐに断ってしまいがちです。するとビジネス部門はやむを得ず、どこかのコンサルティング会社に依頼して勝手にシステムを作ってしまう。その結果、社内のシステムの数が増え、IT部門がDXのために費やせるリソースがさらになくなる、という悪循環に陥ってしまいます。ですから、基本的なことですが、やはりIT部門の姿勢を『断らず、まずは話を聞く』という積極的なものに変えていくことこそが重要なのです。」

依頼が来てから動くのではなく、自ら率先して動くことの大切さを伝えるため、舩生氏がしばしば用いるのが“ファーストペンギン”の喩えだ。最初に海へ飛び込むペンギンは、当然、天敵に襲われるリスクを負わなければならない。しかし、そのペンギンがいなければ、群れは進むことも退くこともできないのだ。

グローバル企業が通信キャリアに寄せる大きな期待

このように同社の取り組みを解説した上で、舩生氏は、企業のネットワーク構成の現状を次のように分析した。従来、企業のネットワークは、インターネットの中に社内のイントラネットがあり、さらにその中にPCや電話、データセンターなどがある、という構成になっていた。ところが近年、クラウド化の進行により、社内からデータがどんどん出ていくという現象が起きている。その結果、社内にデータはほぼなくなり、PCや電話、あるいはSFAやERP等のシステムだけが“出島”のように社内に残される状況になっている、と。

そうした現状を踏まえて舩生氏は、通信キャリアに対する期待の言葉で講演の最後を締めくくった。

「弊社のようなグローバルなビジネスを展開している製造業の企業では、モバイルコンピューティングが当たり前になってきています。クラウドのデータセンターにすべてのデータがあって、ほとんどの業務をインターネットベースで解決できるところまできているのです。ところが、そういう状況に対応するような、グローバルでシームレスなワイヤレス通信サービスというのはあまりない。今後、通信キャリア様から、国や地域ごとにキャリア契約をしなくて済むようなグローバルなサービスが出てくれば、非常にありがたいと思っています。」

ネットワンシステムズの取り組み

ネットワンシステムズは、お客様のICTライフサイクルを支援する「統合サービス事業」を展開しています。その中で横河電機様に対しては、「デジタルエンタープライズ」を実現するため、インテントベースネットワーキングの設計構築と運用支援を行いました。今後は、より俊敏性の高い基盤を提供することによって、事業変革を目的に「モード2」の比率を高めるサポートを実施していきます。ICTシステムの導入に関する数多くの成功・失敗事例をリファレンス化し、カスタマーサクセスの視点から最適なサポートを提案できるのが当社の強みです。

当社は、「つなぐ・むすぶ」技術のプロ集団として、北米動向や最新テクノロジーを見据えながら、スライスネットワークやゼロトラストセキュリティ、エッジクラウド、インベントリ等のデータ収集・管理、構築・運用の自動化などのトータルなソリューションを提供しています。また、お客様である法人企業各社とのビジネスで培ったノウハウを活用し、通信キャリア様に対する潜在的なニーズから新たな付加価値サービスを共創できるパートナーへの変革を目指しています。当社の持つさまざまなソリューションや、法人企業各社と築き上げた多くの実績を価値へと変換し、通信キャリア様の新たなサービス開発をサポートします。