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第1回 見えた!無線LANの電波!! ~電波の可視化の重要性~
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ビジネス推進本部 第1応用技術部
スイッチワイヤレスチーム
中野 清隆
無線LANが普及し、周囲には無線LANデバイスそして無線LAN以外の無線デバイスが多く存在します。それらのデバイスがみなさまの無線LAN環境を常に変化させており、ある時は安定した通信ができていたが、ある時は通信が不安定になったということが発生しやすい環境になってきています。
本コラムでは、そのような目に見えない電波の変化に対して、導入する無線LANシステムによって「無線LANの電波の可視化」「無線LANの通信の可視化」がどのように実現可能か、について説明します。
連載インデックス |
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無線LANを取り巻く環境として、ここ数年、企業・法人向け無線LAN機器の導入が順調に推移しています。背景としては、スマートフォン・タブレットなど有線LANポートを持たないデバイスの業務利用の普及や、ワークスタイルの変革というキーワードが後押ししていると考えられます。
ワークスタイル変革を推進しているネットワンシステムズにおいても、無線LANを利用してオフィスのどこでも仕事ができるフリーアドレス環境を構築しています。
特に当社のようなワークスタイル変革を推進し、オフィスのどこでも仕事ができるという働き方を実現するためには、無線LANで如何に安定した通信を実現させるかが、ワークスタイル変革の実現し社員の生産性を上げるという点からも非常に重要になります。
ただ、無線LANはどうやっても有線LANよりは通信の信頼性が劣ります。企業内で使用する無線LANは家庭で使用する無線LANとは違い、周囲に多くのアクセスポイントがあり、また多くの無線LANクライアントが存在する複雑な電波環境になっています。また昨今1人1台持っている可能性の高いスマートフォンなどは標準で無線LANが搭載されており、これらの機器を使用したテザリングなどは社内の無線LANシステムにとっては干渉源となります。
そのような複雑な電波環境の中で無線LANを使用するために、無線LANシステムによる ①『電波環境の自動最適化』というのがまず必須になります。これがないと無線LANの運用管理者は最初の設計時から電波状態の変化がないか常に監視し、電波環境の変化があった場合は無線LANアクセスポイントの再調整をしなくてはいけません。運用負荷が非常にかかります。
ただし、先に記載させていただいたように様々な電波を発する機器が周囲に存在してきている昨今においては、この無線LANシステムによる ①『電波環境の自動最適化』だけでは不十分になりつつあります。
基本運用として、無線LANシステムによる①『電波環境の自動最適化』によって管理者の運用負荷を減らしながら、定期的な運用状況の確認や万が一のトラブル時の際に②『無線LANの運用状況を確認できること』がますます重要になってきています。
この②『無線LANの運用状況を確認できること』(=電波の可視化)のポイントとなるのが、有線LANとの一番の違いである『目に見えない無線LAN(電波)に関する可視化』になります。
では具体的にどういう電波の可視化が可能なのでしょうか?
Cisco社無線LAN製品を例に説明します。
Cisco社製無線LAN製品には
・AP単体で動作するタイプ
・無線LANコントローラで集中制御動作するタイプ
の2つのタイプの無線LAN製品がリリースされています。
本コラムでは、よりインテリジェントな機能を使用可能な
・無線LANコントローラで集中制御動作するタイプ
で実現可能なことについて説明します。
まず『電波の可視化』の前に、Cisco社製無線LANコントローラ製品での①『電波環境の自動最適化』を実現する機能を説明します。
・Cisco RRM(Radio Resource Management)
無線LANコントローラが管理している無線LANアクセスポイントが使用するチャネルとパワーを自動的に最適な値に変更する機能

・Cisco ClientLink3.0 (他社製品との差別化機能)
無線LANアクセスポイントから無線LANクライアント(802.11a/g/n/ac)に対する送信する際に、無線LANクライアント上で受信レベルが最大になるように送信を自動的に調整する機能(無線LANクライアント側に特別なソフトウェアなどの実装が不要)

これらの①『電波環境の自動最適化』を機能に加えて、Cisco社製無線LANコントローラ型システムでは機器構成によって様々な②『電波の可視化』が可能です。
以下、無線LANコントローラ型の最小構成である『無線LANコントローラ + 無線LANアクセスポイント』で実現可能なことを記載します。
・無線LANアクセスポイントごとの電波状況
- 2.4GHz/5GHzそれぞれで確認可能
- データ通信しながら周囲の電波関連の情報を収集
- 各チャネルのノイズによる影響度、干渉による影響度をグラフ表示
- 無線区間の使用率を表示


(横軸:2.4GHzのチャネル番号, 縦軸:ノイズの強さ(dBm)

(横軸:5GHzのチャネル番号, 縦軸:ノイズの強さ(dBm)
<周囲の干渉値>※各アクセスポイントで表示可能

(横軸:2.4GHzのチャネル番号
縦軸(青):干渉の強さ(dBm) / 縦軸(赤):干渉による影響度(%)

(横軸:2.4GHzのチャネル番号
縦軸(青):干渉の強さ(dBm) / 縦軸(赤):干渉による影響度(%)
<無線区間の使用率>※各アクセスポイントで表示可能

・管理外アクセスポイント(一般的な呼び方としては不正アクセスポイント)
- 2.4GHz/5GHzそれぞれで管理外アクセスポイントを検知可能
- データ通信しながら周囲の管理外アクセスポイントを検知可能
- 検知した管理外アクセスポイントの「使用チャネル」「電波の強さ」「使用セキュリティ」「管理外アクセスポイントに接続しているクライアント」の情報を確認可能


- 青枠:管理外アクセスポイントを検知した社内アクセスポイント情報
- 赤枠:管理外アクセスポイントの使用チャネルと社内アクセスポイントが検知した管理外アクセスポイントの電波の強さ

- 赤枠:Enabledと表示され暗号化がされていることを示す

- 赤枠:Disabledと表示され暗号化がされていないことを示す


- 赤枠:管理外アクセスポイントに接続しているクライアントのMACアドレス一覧

- 2.4GHz/5GHzそれぞれで確認可能
- データ通信しながらアクセスポイントに搭載された専用センサーを使用し情報収集
- ノイズデバイスの種類とノイズデバイスによる影響度を表示


- 青枠:ノイズデバイスを検知した社内アクセスポイント情報
- 赤枠:「検知したノイズデバイスの種類」「影響を与えているチャネル」「電波の強さや使用率などの影響度」
上記の無線LANコントローラ+無線LANアクセスポイントで実現できる電波の可視化以外に、別途監視装置などを導入すると以下のようなことも実現できます。


(横軸;時間(スケール変更可能), 縦軸:無線区間の使用率(%)


図16 アクセスポイントのヒートマップとノイズデバイスの推定位置情報
(薄い赤色の円はノイズデバイスによる推定影響範囲を表示)
緑・黄色の円:社内アクセスポイント, 黄色のひし形:ノイズデバイス
・チャネル変更回数の多いアクセスポイント情報


横軸:802.11a/n, 802.11b/g/nグラフ表示, 縦軸:チャネル変更割合(%)
※過去24時間のグラフの他、過去1週間のグラフの表示可能

Cisco社製無線LANコントローラ型システムを導入いただくことで、現在、そして過去における様々な電波環境の状況(変化)を可視化することが可能です。
万が一のトラブルの際にも、(導入する機器構成にもよりますが)過去の電波状況を確認することも可能ですし、管理者の方が専用の無線LAN解析ツールを持参して現場で調査しなくても、リモートから無線LANコントローラや監視装置上で可視化した電波状況を確認することで一時的な切り分けをすることが可能です。
無線LANがますます重要なネットワークとなってきている現状において、Cisco社製品のような①『電波環境の自動最適化』と②『電波の可視化』が可能な製品を選定することが、安定した無線LANそして万が一のトラブルの際の迅速な対応をするために重要です。
※ネットワンシステムズのオフィス無線LAN環境では今回説明させていただいたCisco社無線LAN製品を導入して運用しています。
次回、第2回は
『第2回 見えた!無線LANの通信!! ~無線LANトラフィック可視化の重要性~』
について説明します。
執筆者プロフィール
中野 清隆
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 スイッチワイヤレスチーム
所属
入社以来無線LANの製品担当SEとして製品や技術の調査、検証評価、及び、提案や導入を支援する業務に従事
現在は有線/無線LANの統合運用に力を入れるなど、エンタープライズSDNのエンジニアとして邁進中
- 第1回 シスコ テクノロジー論文コンテスト 最優秀賞
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