Road to 100G – 100G 高信頼性の実現、冗長技術について

ビジネス推進本部 第1応用技術部
コアネットワークチーム
関原 愼二

私たちが必要とするインターネットなどの情報は、光ファイバーを使用した通信路(光ファイバー伝送路)により、日本はもとより世界中と結ばれています。もし、この情報が送られてくる光ファイバー伝送路が切断されたり、その性能が著しく劣化したりした場合は情報の伝達ができなくなり、個人のみならず企業活動にも大きな損失を与えることになります。
さらに、100Gなど大容量通信に於いては障害時の復旧時間を極力短くすることが社会インフラとして非常に重要なポイントになります。第3回目はこのような障害が発生した際に、信頼性を確保する為の冗長化技術についてお伝えしたいと思います。

連載インデックス

信頼性を実現する冗長化

一般に光通信ネットワークでは、拠点間を結ぶ光ファイバー伝送路を使用してインターネット
など複数のトラフィック信号を光信号に変換し、さらにその光信号をWDM伝送装置(※)で波長
多重して通信を行います。その為に、この装置が故障したり伝送路が災害等で切断されたりした場合には多くのユーザの通信に甚大な影響を与えることになります。そこで光通信ネットワークの信頼性を高める1つの方法として、拠点間の光ファイバー伝送路を予め2ルート分準備して、一方が故障した場合、もう一方に切替を行い障害に対する信頼性を確保します。このような構成を冗長化構成またはプロテクション構成と言います。

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図1に冗長化構成の例を示します。通常2つのルートの一方を現用系(Working系)、もう一方を予備系(Protection系)と呼びます。この2つのルートには同じトラフィック信号が送信側から
送られ、受信側でそのどちらか一方を選択します。そして選択している側の光ファイバー伝送路やWDM伝送装置に障害や故障が発生した場合、もう一方のルートに切替を行い通信の継続を可能にします。このように2ルートから受信側で切替を行う方法を「1+1」切替方式と呼びます。
また、複数の現用系ルート(N本)で1つの予備系ルートを共用する「N:1」切替方式もありますが、運用が容易な「1+1」切替方式が一般的に用いられています。
尚、故障や障害を検出してから切替を行うまでの時間は通常50ミリ秒以内となっており、
ユーザ信号の欠落を最少限に抑えることが可能です。また切替を行うトリガーに光信号の劣化
情報を含めることで故障や障害が発生する前に予防的な切替を実施することもできます。

実際に使用されているWDM伝送装置のプロテクション構成については、現用系と予備系を同一の回路基板(モジュール)に収容するものや別々のモジュールに収容するものなどベンダーにより色々なものが提供されています。ここでは100Gトランスポンダ(※)を使用した2拠点間における冗長切替の動作例について図2により概要を説明します。

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<動作1> 拠点A,Bの現用系をアクティブとしてクライアント間で通信を行っています。
<動作2> ここで拠点Aの現用系の伝送路受信側で障害が発生したとします。(①)
<動作3> 拠点Aにおいて障害を検知後、100Gトランスポンダの受信部で切替を行い予備系を
     アクティブ、現用系をスタンバイに変更します。(②)
<動作4> 拠点Aでの切替情報を拠点Bへ通知します。(③)
<動作5> 拠点Bでは拠点Aから受信した切替情報により予備系をアクティブ、現用系をスタン
     バイに切替を行います。(④)
<動作6> 拠点A,Bの予備系をアクティブとしてクライアント間の通信が再開(復旧)します。

ここで、冗長切替の動作(動作2から6まで)は50ミリ秒以内で行います。また、図に示すOptSW
(スイッチ)では、アクティブになっている系の信号を選択してクライアントと信号の送受信を
行います。OptSWは光スイッチを使用した構成や光スプリッタ(※)を使用した構成がありますが、後者の光スプリッタを使用した構成が多く用いられています。
尚、クライアント側の障害を冗長切替のトリガーに含めることで100Gトランスポンダに実装
されているクライアント・トランシーバ(CFP)が故障した場合も切替が可能となります。

さらなる高信頼化に向けて

(1) 迅速な第3ルートの確保
大規模な災害が発生した場合など、冗長化された光ファイバー伝送路の両方がともに機能できない二重障害が発生するケースが考えられます。このような場合、第3のルートを開設して通信を救済させる必要があります。従来は作業員が現地まで出向いて光信号の迂回パスなどの再設定を行う必要があり、復旧に多くの時間を要していました。しかし100Gなど大容量通信が増えつつある今日においては復旧時間を極力短くすることが社会インフラとして非常に重要なポイントになります。そこで、近年はROADM(※)という光信号の波長や送受信の方向を自由に設定して光信号パスの分岐・挿入を行う装置がWDMシステムとして開発されています。これを光通信ネットワークシステムに導入し遠隔制御によりオペレーション操作することで迅速にトラフィックの復旧ができるようになります。また、前回紹介した100Gデジタルコヒーレント技術を使用することで第3のルートを開設した際に、光ファイバー伝送路の波長分散を自動的に補正することが可能となり、スムーズにトラフィックの開通が可能になります。

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(2) 無瞬断切替機能の実現
重要なデータを扱うシステムに於いては冗長切替の際にユーザ信号の欠落が許容できないケースが考えられます。そこで信号の欠落が発生しない無瞬断切替方式の研究開発が行われています。無瞬断切替は光ファイバー伝送路における信号フレーム内の識別子(ヘッダ)を現用系、予備系でそれぞれ検出を行い、信号フレームの遅延差をバッファメモリを使用して吸収し切替を行う方式です。切替時にデータの欠落がないのでユーザ通信に影響を与えませんがデータの遅延が発生するなどの課題もあります。

※WDM伝送装置:
 1本の光ファイバーに波長の異なる複数の光信号を多重して伝送する装置。
※トランスポンダ
 WDM伝送装置に使用されるインタフェース・モジュールで光ファイバー伝送路の送受信信号とクライアント(ユーザ)側の送受信号をそれぞれ相互に変換します。
※光スプリッタ
 1本の光ファイバーから複数の光ファイバーへ光信号を分岐したり、複数の光ファイバーから1本の光ファイバーに光を結合するもので電気を使用しない部品で構成されます。
※ROADM:Reconfigurable Optical Add/drop Multiplexer の略
 波長多重された光信号パスに対して任意の波長の光信号を分岐、挿入する装置で、WDM
システムとして超高速・大容量の光通信ネットワークの構築及び運用が可能になります。
ローダムやロデムと呼ばれています。

まとめ

Road to 100G と題して3回に渡り100Gの現状とそのキーポイントとなる技術について
お話をしてきました。私たちを取り巻く通信トラフィックは日々拡大し続けています。
早くも100Gの次(Beyond 100G)として、400Gに向けた国際規格の制定や技術開発が
進められています。これらについては機会を改めてお話していきたいと思います。

執筆者プロフィール

関原 愼二
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 コアネットワークチーム
所属
通信機メーカ入社後、キャリア向け伝送装置のハードウェア開発、LSI設計等に従事
ネットワンシステムズではオプティカル製品(FTTH、WDM)の評価、検証及び案件技術支援を担当
・第一級無線技術士
・ADVA Certified Expert #083193
・工事担任者デジタル1種

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