次世代CATV規格DOCSIS3.1の幕開け

ビジネス推進本部 第1応用技術部
NIソリューション開発チーム
大澤 能丈

ブロードバンドを利用したインターネットサービスが普及してから早15年以上が経ち、様々な通信規格によるサービスが提供されています。その中の1つとして、ケーブルテレビ(CATV)を利用した高速なCATVインターネットサービスがあります。CATVインターネットサービスはDOCSIS (Data Over Cable Service Interface Specifications)という規格に準拠した方式で提供されています。
本コラムでは、DOCSIS規格のこれまでと今後登場してくる最新のDOCSIS3.1について紹介します。

DOCSISとは

DOCSISとはCATV網を使用して高速データ通信を行うための国際標準規格です。
米CableLabs®によって規格化されており、様々なメーカーが規格化に参画しています。

DOCSISの構成要素としてCMTS(Cable Modem Termination System)と呼ばれる集合モデム装置をCATV事業者側に設置し、ケーブルモデム(CM)を呼ばれる機器を各家庭に設置し、CATV網経由で通信を行います。また、CMにIPアドレス、モデム設定ファイル、時刻情報を提供し管理するためのプロビジョニングサーバーも使用します。

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図1:DOCSIS構成機器

DOCSISの共通特徴として以下の点が挙げられます。

表1:DOCSISの特徴
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DOCSISには以下のように幾つかのバージョンが規定されており、現在はDOCSIS3.0が主流バージョンとなっています。

表2:DOCSISのバージョン
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DOCSIS3.1規格化の背景

このようにDOCSIS規格が登場し、バージョンが上がるごとに通信速度が向上していますが、ビデオコンテンツの普及等によるIPのトラフィックも爆発的に増加しており、特に全米では、今後、リニアTV放送についてもIPでの配信へシフトしていくため、より高速な通信規格が求められています。また、FTTH(Fiber To The Home)やモバイル通信のような他の通信事業者との競争も激しく繰り広げられ、コードカッター(※1)をいかに防止するかという課題も出てきています。
このような背景から同じCATV網でより効率よく、少ない投資で、より高速なデータサービスを提供することを目的にDOCSIS3.1が策定されました。
※1 コードカッター:CATVを解約する契約者という意味の造語

DOCIS3.1技術概要

DOCSIS3.1は2013年10月に規格がリリースされました。
使用する周波数帯によって以下のスループットを実現することが可能です。

表3:DOCSIS3.1の下りスループット
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※伝送路条件によってスループットは変化します。

表4:DOCSIS3.1の上りスループット
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※伝送路条件によってスループットは変化します

これらの高速通信を実現するための主な特徴としては以下の通りです。
・ 使用周波数帯の拡張
・ LDPCによる誤り訂正機能の向上
・ OFDMのサポート

また、これまでのDOCSISバージョン同様に下位互換性も保たれており、DOCSISバージョンの置き換えについても考慮されています。

以下にそれぞれの特徴について説明します。

●使用周波数帯の拡張
DOCSIS3.0規格では下り周波数は108MHz~1002MHzであり、上り周波数は5MHz~85MHzと規定されています。DOCSIS3.1ではこれまでのDOCSIS規格から使用周波数を大幅に拡張することでキャパシティが向上します。

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図2:DOCSIS3.0 / 3.1の周波数帯

●LDPCによる誤り訂正機能の向上
DOCSIS3.0までは誤り訂正機能としてリードソロモン (RS)方式が使用されていました。DOCSIS3.1ではこれを刷新してLDPC (Low Density Parity Check:低密度パリティ検査)のサポートを追加しました。
LDPCは衛星デジタル・テレビ放送のDVB-S2や、IEEE802.16e(モバイルWiMAX)等でも採用されており、現在最も効率的な誤り訂正機能と言われている方式です。
LDPCの最大の特徴は従来のRS方式よりもノイズ耐性が向上する点になります。
ノイズ耐性が向上する事で、より変調レートの高い方式が利用できる様になり、1度に送信可能なデータ量が増え、その結果、スループットが向上します。

表5:DOCSIS3.1の変調方式のスループット(下り)
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※伝送路条件によってスループットは変化します

そのため、DOCSIS3.1では下りにおいて1024QAM / 2048QAM / 4096QAMが必須サポートとして追加され、上りにおいて128QAM / 256QAM /512QAM / 1024QAM / 2048QAM / 4096QAMまでが必須サポート(CMTS側では2048QAM , 4096QAMはオプション扱い)となりました。

●OFDMのサポート
OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直行周波数分割多重方式)とはデジタル変調方式の一種であり、地上デジタル放送やWi-Fi等の無線通信でも使用されています。
OFDMを使用することでこれまでの6MHz固定幅のQAM方式と比べて以下のメリットが出てきます。

I. マルチキャリアへの対応
従来のDOCSISでは、チャネルプランに合わせて搬送波(キャリア)の帯域幅を固定(下り6MHz/上は一般的に3.2MHあるいは6.4MHz)で割り当てるシングルキャリア方式でしたが、OFDMではブロックと呼ばれる帯域幅グループ内に細かいサブキャリアを使用するマルチキャリア方式を採用しています。

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図3:マルチキャリア方式

また、OFDMブロック内にサブキャリアを全て埋め込む必要はなく、必要に応じて隙間を空ける事が可能でありで、既存で利用中の搬送波をオーバーレイして帯域を割り当てることも可能となり、周波数使用効率が向上しました。

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図4:搬送波の効率利用

II. Variable bit loadingのサポート
サブキャリア単位の搬送波になった事で、各サブキャリアで使用する変調方式を変える事が可能になりました。DOCSIS3.1では、これをvariable bit loadingと呼びます。

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図5:Variable bit loading

III. 周波数インタリーブのサポート
インタリーブとは、送信側でデータの並び方を変えて送信し、受信側でその順番を並び戻す事で、FEC等の誤り訂正を効き易くするための技術です。従来のDOCSISでは主に時間軸でのインタリーブのみを使用していました。時間軸でのインタリーブにより、バーストノイズ(瞬間的なノイズ)の耐性向上の効果がありましたが、DOCSIS3.1では時間軸に加えて、OFDMのサブキャリアを使用した周波数インタリーブをサポートしています。周波数軸でのインタリーブにより、イングレスノイズ(流号雑音)への耐性向上の効果が見込めます。時間軸と周波数軸で多重にインタリーブを行う事で、両方の効果が期待出来ます。

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図6:インタリーブの例

IV. ノイズへの対策
ある帯域にノイズが発生した場合、従来のDOCSISでは全帯域に影響を及ぼしていましたが、DOCSIS3.1では、先に説明したVariable bit loadingやインタリーブを用いてノイズ耐性の強い変調方式へ変更するだけで無く、ノイズが発生している帯域を一時的に使用しないことも可能であり、ノイズ対策における柔軟性も拡張されました。

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図7:ノイズ発生時における動作

●下位互換性
DOCSIS3.1においても下位互換性について規定されており、DOCSIS3.1 CMTSはDOCSIS3.0 / DOCSIS2.0 / DOCSIS1.1のCMとシームレスに相互接続できることが必須要件となっています。また、DOCSIS3.1 CMはDOCSIS3.0 CMTSとの接続性が必須要件となっています。そのため、全ての加入者のCMを交換することなく段階的にDOCSIS3.1サービスを提供することが可能です。

DOCIS3.1今後の展開

DOCSIS3.1は規格としてはリリースされていますが、2015年7月現在、正式な対応製品は出てきていません。現在、米CableLabs®主導で相互接続検証を実施しており、認定作業が始まり、早ければ2015年末にも対応製品が出てくる予定となっています。
全米の各CATV事業者はDOCSIS3.1へのサービス対応を表明しており、対応製品が出てくることで1Gbps以上の高速通信サービスが開始されていくものと思われます。

日本でもDOCSIS3.1を使用した高速サービスへの興味は徐々に高まっています。使用する周波数帯設計の見直し等、大きな課題もありますが、実現できればより魅力のあるブロードバンドサービスが提供できるものと思います。
現在4K/8K放送への取組みが進められていますが、2020年にはDOCSIS3.1を使用して東京五輪を視聴することも実現可能ではないかと考えられます。

弊社でもDOCSIS3.1に対応予定の製品を販売しており、今後のDOCSIS3.1普及の一助となれるよう取り組んでいきます。

執筆者プロフィール

大澤 能丈
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進本部 第1応用技術部 NIソリューション開発チーム所属
1999年ネットワンシステムズ株式会社入社
応用技術部門にて映像配信やCATVインターネット製品の技術者として従事
・CATV総合監視者
・CCNP

イベント/レポート

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