目次
はじめに
2023年8月4日(金)に開催されたシスコシステムズ主催の「第2回Meraki Developer-1(D-1)グランプリ」にて、ネットワンシステムズとネットワンパートナーズの合同チーム「ネットワンvalley部」が審査員特別賞を受賞しました。
本記事では受賞した作品とその開発の裏側について前編・後編に分けてご紹介させていただきます。(第2回Meraki D-1グランプリに参加してみた~詳細前編~)
また、イベントや作品全体の概要については第2回Meraki D-1グランプリに参加してみた~概要編~にてご紹介しています。
全体構成
イベント参加にあたり、「少子化・子育て」に焦点を当てた保育園の課題解決ソリューションの開発・提案を行いました。
開発したソリューション
開発した4つのソリューションはすべて、Merakiシリーズによるトリガー、AWS上に組んだアルゴリズムをもとにしたアクションという共通のフローによって実装されています。
ここでは、スマートHelp、気持ちをスマート可視化についてご紹介します。
図1. 開発したソリューション一覧
ソリューションご紹介
スマートHelp
スマートHelpはボタン、センサー、チャット通知、さらにスマートライトを使って保育士同士の連携強化をサポートするソリューションです。
このソリューションは、保育士の方に行ったインタビューにおいて『トラブルがあっても周りが忙しそうで、声をかけることに躊躇してしまう』といった連携への課題が挙がったことが開発の発端となっています。
スマートHelpを使って”助けて”の発信をサポートすることで、保育士間の連携強化と負担軽減を実現します。
このソリューションのコンポーネントと動作は以下の通りです。
◆コンポーネント
- Meraki MT30(スマートボタン)
- Meraki MT20(ドア開閉センサー)
- SwitchBot スマート電球(スマートライト)
- Webex(チャット)
図2. スマートHelpイメージ
スマートHelpでは、保育士が多忙でスマートフォンを見ることができないといった状況を考慮し、スマートライトによる通知を実装しています。
ドアに取り付けたMeraki MT20(ドア開閉センサー)が開扉を検知すると、対応済と判断し自動でスマートライトを消灯します。このように、ライトの点灯と消灯のトリガーを異なるセンサーにすることで、人力を介さずに緊急事態の対応状況を可視化し、「誰かが対応したはず」といった思い込みによる連携ミスを防止するよう工夫しています。
気持ちのスマート可視化
保育の現場では、園児たちが1日を楽しく過ごすことができたか、気持ちの把握が欠かせません。
一方、小さな子どもたちにとって気持ちを言葉で伝えることは簡単でないため、日頃の様子との差異、過去の経験に基づいて保育士が推測、判断を行っています。
気持ちをスマート可視化は、今日一日の気分を園児自ら伝えることができるようサポートするソリューションです。
伝えることが苦手な園児の気分を簡単に把握することができるようになるだけでなく、気持ちの移り変わりなどの分析も実現することで、経験に依存しないデータドリブンな園経営を見据えています。
このソリューションのコンポーネントと動作は以下の通りです。
◆コンポーネント
- Meraki MT30(スマートボタン)
- SAFR(顔認証システム)
図3. 気持ちをスマート可視化イメージ
気持ちをスマート可視化では、楽しい・悲しいなど感情ごとのボタンを設置し、気分に応じて選択することができるようになっています。
ボタンの押下をトリガーに、SAFR の顔認証を使用して園児を特定したデータ、押下されたボタンのデータを突合し、データベースへ格納します。
収集したデータはダッシュボードに表示されており、園全体における選択された気持ちの割合や、園児別の気持ちの推移などを確認することができます。
図4. 気持ちをスマート可視化 処理イメージ
図5. 気持ちを可視化 表示画面
統合ダッシュボード
開発したソリューションは実行内容や、取得した情報をデータベースに保存しています。
統合ダッシュボードでは、カメラの動きによる園児の動向や園の環境情報、園児の気持ちのデータなどの情報を使用し、データの一元的に可視化を実現しています。
ダッシュボードによって園の状態を統合的にモニタリングすることを可能にし、データドリブンな園経営の実現をサポートします。
図6. 統合ダッシュボード
何か問題が発生したときには、トップにアラートが表示されるため、緊急で対応すべき事項の有無をすぐに把握することができます。
カメラの映像もダッシュボード経由でMeraki Visionポータルにアクセスすることで、園の様子も一目でわかるよう設計しています。
また、データをただ可視化するだけではなくAWSのBIツールであるQuickSightを使用し、分析した情報を埋め込むことでデータの分析も可能にしています。
D-1グランプリに参加した感想と今後にむけた展望
スマート保育園というテーマでソリューションの開発を行いました。
機能の開発はもちろんですが、普段関わる機会の少ない子供や保育士という視点からのテクノロジーへのアプローチだったため、どのようなことが実現できたら嬉しいのだろうか?といった提供価値の検討に苦戦しました。
参加された他のチームも、インタビューに基づいた機能の実装や、現場での実証実験など、使う人のニーズに沿った機能の開発に取り組まれていたことが印象的でした。
開発の技術力だけでなく、使う人の視点に立ち設計することの重要性を強く認識することができたことは大きな学びだと感じています。
開発したソリューションに関しては、取得するデータを増やし、可視化・分析、さらには予測も行うことで、より保育士の方々や園児に寄り沿った園経営につながるソリューションを目指していきたいです。
また、審査員の皆様からは、『気持ちのスマート可視化のボタンをオフィスなどにも設置してほしい』 など、保育園に限らない活用に向けたアドバイスをいただきました。
経験に基づいた判断が必要となる介護や医療の現場での使用、家庭内でのコミュニケーション活性サポートなど、より多くのシーンへ活用の幅を広げていくことで社会課題の解決に貢献していきたいです。
終わりに
今回開発したソリューションの概要から開発の裏側までご紹介させて頂きました。
Meraki D-1グランプリへのイベント参加を通じて、社会課題解決へのアプローチはもちろん、様々なアイデア・成果物に触れたり、外部の方々との繋がりを持つことができました。
弊社では、Ciscoが提供する開発者向けの支援プログラムであるDevNetの推進を行うとともに、社会課題に対して多様な視点からICTを活用したソリューションやプロトタイプの開発に取り組んでいます。
共創を含めご興味がある場合は、弊社営業担当までご連絡を頂けますと幸いです。
概要編、詳細前編・後編はこちら!
概要編「第2回Meraki D-1グランプリに参加してみた~概要編~」
前編 「第2回Meraki D-1グランプリに参加してみた~詳細前編~」
後編 「第2回Meraki D-1グランプリに参加してみた~詳細後編~」※本編
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。