工場でもAIを使いたいという声が聞かれるようになりました。とはいえ、AIの活用は、まだ一部で検証やPoCが始まった段階です。工場のシステムは、これまで現場が担ってきた領域です。情報システム部門(情シス)としては、どこまで関わるべきか判断しにくいテーマかもしれません。
ただ、AIが1つの工場から複数の工場へ広がったとき、「それを誰が管理するのか」という問いが出てくると考えられます。その答えはまだ出ていません。
今回は、エッジコンピューティングの現場を見てきた小林と島田に、工場にAIが広がったとき運用を担うのは誰か、ITとOTのあいだで何が起きているのかを聞きました。
今回のインタビュイー
ネットワンシステムズ株式会社
ビジネス開発本部 応用技術部 クラウドインフラチーム
小林 浩和
仮想基盤のエキスパートとして技術調査・検証・顧客へのデモ実施・導入支援を担当。現在は対象技術領域をオンプレミスにおけるAI基盤に拡張。
ネットワンシステムズ株式会社
ビジネス開発本部 プロダクトマネジメント部 第2チーム
島田 新五
ロードバランサーの技術主幹を経験後、営業部門にてエンタープライズ案件を担当。現在は技術的・営業的な知見を活かし、マーケティング部門でプラットフォーム系商材を担当。
このブログでわかる3つのポイント
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工場のAIは、いまどの段階にいる? ── 製造業の工場は、エッジと呼ばれないまま、機械のデータやロット情報を工場の中で扱ってきた。AIはまだ一部で検証やPoCが始まった段階で、複数の工場をまとめて管理するのはもう少し先の話
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課題はいつ表に出てくる? ── AIが1つの工場から複数の工場へ広がったとき、「誰が管理するのか」という運用の課題が初めて出てくる。機械を止められない、現場にエンジニアがいないなど、一般的なIT機器とは違う苦労もある
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運用は誰が担うのか? ── 「情シスがやればいい」とは言い切れず、正解は会社によって違う。それでもITとOTをつなぐならITの人は欠かせない。まずは現場と話し、求められる品質や責任の範囲を確かめることから
- ライター:本間 あや
- 共創プログラムの企画運営に携わりながら、フィジカルAIをはじめとする先端技術と顧客をつなぐ情報発信を担当。
目次
工場は、すでに“エッジ”だった
まず、製造業の工場の現状について聞きました。
---エッジコンピューティングという言葉はよく聞きますが、お客様の工場ではもう当たり前に使われているのでしょうか。
小林:製造業でいうと、エッジコンピューティングとして認識しているお客様は、まだ少ないと思います。今も工場ごとにインフラを整えているのが一般的で、複数の工場をまとめて管理する段階には至っていません。AIについても試行錯誤の段階で、一部で検証やPoCが始まったところです。
島田:実際の工場には、機械のデータや製造ロットの情報が置かれています。何か問題が起きたときに追跡しなければならないので、こうした情報は常に工場の中にあるんです。一般的にはこれをエッジと呼びますが、それは私たちがそう呼んでいるだけです。お客様からすればエッジではありませんし、それで全く問題ないと思っています。
---なるほど。名前がついていないだけで、実態としてはすでにエッジなんですね。
小林:はい。ただ将来、そうした基盤をどう管理していくのかという課題が出てきます。そのときに「工場は実はエッジコンピューティングだった」と気づかれるのだと思います。
その「管理」が課題になるきっかけの一つが、工場へのAIの導入です。
AI活用で変わる、ITとOTを分離してきたネットワークの考え方
---工場と情シスの関係は、今どうなっているのでしょうか。
小林:工場のインフラは、IT(情報システム)とOT(生産設備を動かす制御系のシステム)として分離されていることが多いです。工場からインターネットに出られない、という環境もあります。役割も、情シスと、工場の製造・生産部門(以下、現場)で分かれています。
ただ、AIが入ってくると、工場にも通信が必要になります。よりITに近い考え方が求められ、セキュリティの考え方も変わってきます。全く別物になるというより、ITとOTのいいとこ取りのような、両方を備えた基盤が必要になるのかなと思います。
島田:工場のデータと経営向けのデータも、今後より密接に結びついていくと思います。今の工場には、バージョンアップされていない機械もまだあります。「ネットワークから遮断されているから大丈夫」という考え方もありましたが、そういう世界ではなくなっていきます。
分離を前提にした考え方が変われば、運用のあり方も問われてきます。
1つの工場から複数工場へ。運用の課題はそこで表に出る

---運用の課題は、どんなタイミングで出てくるのでしょうか。
島田:段階があると思います。
- まず、1つの工場にAIを導入し、生産性を向上させる
- それが複数の工場に広がったときに初めて、「誰が管理するのか」という運用課題が出てくる
- そこで、管理や可視化、セキュリティの仕組みが必要になる
今はまだ、工場でAIをどう活用するかを考えている段階です。統合管理はもう少し先の話だと思います。
小林:Innovation Showcaseのデモも、最初は統合管理を前面に出していましたが、お客様の関心は、まず1つの工場での活用にあると感じ、今はそこに焦点を当てた内容に変更しています。
---エッジならではの運用の苦労には、どんなものがありますか。
小林:工場では、求められる品質や復旧の速さが異なります。障害が起きたときにサーバーとアプリのどちらの問題かを切り分けるのに、苦労したことがありました。バージョンアップも、普通のIT機器とは違った苦労が出てくると思います。特に、機械を止められないので。
設置環境も違います。ホコリや熱など、一般的なサーバールームとは異なる要因で機器が壊れることがあり、それに適したサーバーが必要になってくると思います。
島田:拠点が大量にあることも、普通の環境とは違う点です。しかも最近は、現場にいるエンジニアも少なくなっています。
---離れた場所から管理する方法はあるのでしょうか。
小林:ここ数年、遠隔から現場のサーバーを管理する仕組みが出始めています。たとえばゼロタッチプロビジョニング(現場ではネットワークに接続するだけで、中央から設定やイメージが自動で入る仕組み)です。ただ、統合管理はまだそこまで進んでいないのが実情です。
では、AIが複数の工場に広がったとき、運用は誰が担うのでしょうか。
運用は誰が担うのか。「情シスがやればよい」とは言い切れない
---すべての工場をまとめて管理するようになったら、誰が運用を担うべきだと思いますか。
小林:理想としては、情シスが全体を見ることが求められると思います。各工場の人が、ほかの工場のものを管理することはできないからです。
ただ現実的には、基盤までは情シスが管理できても、その上で動くアプリケーションについての知識は、現状の情シスには十分でないことが多いと思います。基盤は情シス、アプリは現場という、社内IaaS(社内向けに基盤だけを提供する形)に近い管理になるのかなと思います。あるいは、どこかのタイミングで、新しい部門や体制を整える必要が出てくるかもしれません。
島田:現場には、生産系のシステムに詳しい人はいます。でも、ネットワークやコンピューターまで詳しい人が多いかというと、そうではありません。本来は情シスが見るべき部分なのですが、情シスの感覚と、工場で扱うシステムのシビアさの感覚は全然違います。今までのITの保守サポートの感覚でOTを見ていいかというと、そういうわけではない。情シスがOTをすべてカバーするのは、かなり難しいと思います。
---情シスがOTも見る、というのは簡単ではないのですね。
島田:範囲が広がれば、それだけの人手も要ります。単純な話ではないなと、いつも思います。工場単位ではなく全体での効率化を考えるレベルになると、経営判断や組織変更、人員の話が出てきます。
一方で、統合管理でやっていくと決まったときに、旗を振るのは情シスかもしれません。ただ、現場が独立して進めたほうがいいという話も出てくるかもしれない。そうなると、ネットワークに詳しい人を採用するのか、という話にもなります。
---本当に難しいですね。
島田:どちらが見るべきかは、会社によって違うと思います。昔は「情シスがやればいい」とよく思っていましたが、最近は本当にそれでいいのかと考えることがあります。AIを導入しているのは現場が多く、現場が先行しているんです。AIに詳しい人は、現場のほうに多いんです。そうすると、立場が逆転してくるかもしれません。「情シスがやるべき」と考えすぎないほうがいいのかもしれません。
答えは一つではありません。では、情シスはどこから関わればよいのでしょうか。
それでも、情シスが最初にできること
---工場のAIについて、情シスとしてまだ関わり方が見えていない場合、まず何から始めればよいでしょうか。
小林:ITとOTは分離されている状況なので、まずは現場とコミュニケーションを取ることです。そうしないと、導入した後で「こんな環境では使えない」といった問題が出てきます。現場が求めている品質を把握しておくことが必要だと思います。
そのうえで、責任の範囲を話し合うことです。ハードは情シス、その上のアプリは開発部門や現場、という分け方もあれば、専門の部隊をつくるという選択もあります。組織の体系や文化を変えることも起こり得ます。
---統合管理を進めるとき、リードするのは情シスなのでしょうか。
島田:ネットワークまで含めて考えるなら、ITの人が出てこないと進まないと思います。ITとOTをつなぐのであれば、ITの人は絶対に必要です。
情シスがすべてを引き受けるとは限りません。それでも、現場と話すところから、この議論の当事者になることはできます。
Innovation Showcaseで、自社の段階に合わせて相談する
---Innovation Showcaseでは、このテーマについてどんなお話ができますか。
小林:Innovation Showcaseでは、来場されるお客様に合わせて毎回内容をカスタマイズしています。AIをどう活用するかという段階の話から、拠点にAIが増えたときの管理やセキュリティの話まで、ご相談いただけます。遅延によってAIの反応がどう変わるかを見られるデモもあります。実際に見ていただくと、使い方のイメージがつきやすくなり、自社の新しい課題が見つかるきっかけにもなると思います。
おわりに
工場のAIは誰が運用を担うのか。その答えは会社によって違い、一つではありません。だからこそ、自社がいまどの段階にいるのか、どんな体制が合うのかを、情シスと現場の両方の視点で整理していくことが大切です。
まずはInnovation Showcaseで、自社の段階に合わせたお話から始めてみませんか。一緒に、現実的なステップで整理していきましょう。
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※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。
組織・製品等の名称は執筆時点のものです。