
こんにちは。根本です。先日GX検定アドバンストを受検し、無事に合格しました。
ところで皆さん、最近身の回りにサステナビリティをうたった製品が増えてきていると思いませんか。リターナブルボトルのジュース、電源アダプターが付属していない某スマートフォンなどなど。今回は、そんな身の回りにあるエコフレンドリーな製品には一切触れずに(!)、企業が影響を受ける調達ポリシーについて書いていきたいと思います。
目次
はじめに
前回は企業がGXを進めるモチベーションのひとつ「規制」のうち、省エネにフォーカスを当てて記事を投稿しました。今回は企業が影響を受ける調達ポリシーについて書いていきたいと思います。
関連する法律
グリーン購入法(環境に配慮した商品等の調達の推進に関する法律)
公共機関が購入する商品やサービスに関して、省エネルギーやリサイクル可能な素材の使用など、特定の環境基準を満たすことを要求する法律です。具体的な基準は環境省の基本方針によって定められています。一例として、令和3年(2021年)2月に新しく追加された以下の2つをピックアップします。
テレワーク用ライセンス
【判断の基準】
インターネットを介し、遠隔地において業務が遂行できるシステム用アカウントであること。
【配慮事項】
テレワークの導入前後における環境負荷低減効果が確認できること。
【備考】
1.「テレワーク」とは、情報通信技術を活用した、場所と時間に捕らわれない柔軟な働き方をいう。
2.テレワークの導入により削減が期待される環境負荷としては、移動に伴うエネルギー、事務所等において使用するエネルギー等に対し、増加が見込まれる環境負荷としては家庭や拠点施設において使用するエネルギー等があげられ、これらの増減を比較して、環境負荷低減効果を算定することが望ましい。
Web 会議システム
【判断の基準】
①インターネットを介し、遠隔地間等において会議が行えるシステムであること。
②他の機関と相互に利用可能な会議システムであること。
【配慮事項】
①Web会議システムの導入前後における環境負荷低減効果が確認できること。
②オンライン名刺交換機能が導入できること。
【備考】
1.Web 会議システム」とは、テレワークを行っている職員であってもその他の職員と遜色なく業務を遂行できるよう、当該機関等で行われる会議への遠隔参加が可能となるシステムをいう。
2.Web 会議システムの導入により削減が期待される環境負荷としては、移動に伴うエネルギー、紙資源の削減(ペーパーレス化)等があげられる。
環境配慮契約法(国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律)
グリーン購入法が一定水準の環境性能を満たす製品・サービスの調達を定めるものであるのに対して、環境配慮契約法では価格等を含め総合的に評価して最善の環境性能を有する物品・サービスの調達を定めています。対象となる契約類型は、電気の調達、自動車の調達、船舶の調達、建築物関連、産業廃棄物の処理などがあります。
ちなみに廃棄予定のディスクをセキュアかつエコフレンドリーに再活用するソリューションがあります。また、ネットワングループとしては産業廃棄物を削減するため、サーキュラーエコノミーの実現に向けた事業を展開しています。
民間の動向
グリーン調達
2023年6月、ISSBがサステナビリティ開示基準を最終確定しました。注目すべき点はいくつかありますが、特に大きなポイントは、企業がGHG排出量を開示するとき、スコープ3も開示の対象になった点です(IFRS S2 Climate-related Disclosures)。今後は自社のみならず、サプライチェーン全体の排出量を把握する必要が出てきました。
業界動向としては、Green x Digital コンソーシアムにおいてPathfinder Networkに基づいたサプライチェーン排出量の可視化の実証実験が行われており、ネットワンも参加しました。
ところで、企業としては排出量の可視化が済めばそれで終了、というわけではなく、むしろ排出量を削減することが本来の目的です。そしてScope1、2よりも削減の難易度が高いのがスコープ3です。この削減に向けて企業間で広がっている動きの一つがグリーン調達です。多くの企業がグリーン調達の方針を打ち出しています。なお、これに関連する規制として、EUが策定したRoHS指令とREACH規則があります。
またICT業界としては、ICT分野におけるエコロジーガイドライン協議会が定める「ICT分野におけるエコロジーガイドライン」が基準として参照されることが多いです。サプライヤの評価項目として、ISO 14001等に準拠した環境マネジメントシステムの運用状況が問われることも多いです。
グリーンリース
ビルオーナーとテナントが協働して、不動産の省エネなどの環境負荷の低減などについて自主的に取り決めて、その内容を実践する契約等のことです。グリーンリースには、運用改善のグリーンリースと、改修を伴うグリーンリースがあります。
運用改善のグリーンリースの例として、環境性能の向上を目指す協働体制の確立や目標設定、テナントが省エネ改修を実施した場合における原状回復義務の免除などがあります。改修を伴うグリーンリースでは、ビルオーナーが省エネ対策などのために設備改修を行うとき、テナントが享受する光熱費削減分の一部をグリーンリース料として還元することで経済的利益の再配分を図るものです。グリーンリースの取り組みは、前回の記事でご紹介したCASBEE-不動産、DBJ Green Building認証、BELS、LEEDなどで加点評価につながる可能性があります。
ESGリース
中小企業、個人事業主等をリース対象として、脱炭素機器をリースした場合、当初リース契約期間の総リース料の4%以下の補助金を指定リース事業者に対して交付する、ESGリース促進事業があります。環境省がリードしている取り組みで、令和6年度の予算要求額は15億円です。対象機器の品目分類は、熱源設備、産業用機械、厨房設備、空調用設備、電気自動車などがあります。
試しに厨房機器について見てみます。電化、電力の脱炭素化を進めるGX実現に向けた基本方針を踏まえると、飲食店の厨房ではガスからIHクッキングヒータなどに置き換わっていく流れが加速していくと予想されます。
高効率業務用厨房機器
業務の用に供する厨房機器のうち、次のイからニまでのいずれか一に該当するものに限る。
イ 内炎式バーナ又は火炎角度を内向きにした低輻射バーナを搭載したもの
ロ 低輻射型ガス厨房機器(燃焼式の厨房機器のうち、空気断熱構造を有するものに限る。
ハ 電磁誘導加熱方式によるもの
二 ヒートポンプ加熱方式による廃熱回収装置を有するもの
まとめ
今回で、「企業をGXへと駆り立てるリスク、規制」シリーズは終わりとなります。抜け漏れや不備などもあったかもしれません。この分野はその歴史を学ぶことが一番だと思っております。勉強しながらも引き続き、この分野をウォッチして新しいビジネスの種を見つけていきたいと思います。それでは、皆様、よいグリーンライフを。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。