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ペーパーICT支援員の仮想教室 ~教育のDXとGIGAスクールテクノロジー編のアンサンブル~ 「教育のDX・・企業や自治体のDXと同じ」編 その1

ライター:阿部 豊彦
経歴:エンタープライズ系インフラの提案、設計、構築や、SDN提案、
工場IoTネットワークやセキュリティのコンサルなどを担当。
ファシリティ、インフラ、セキュリティなどボーダーレスです。
昨年末から文教フィールドへ参入。

目次

Society 5.0とは

日本政府は、サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を目指すものとして力を入れています。

Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人ひとりが快適で活躍できる社会となります。(内閣府)

ここでいう社会の変革(イノベーション)がDXと考えてください。DXを進めることで、Society5.0という新しい社会が実現します。

デジタルデバイドされた子供たち

2020年1225日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」では、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」が方針として示されました。

「誰一人取り残さない」に関連して「デジタルデバイド」という情報格差を示す言葉があります。これは高齢者や身障者のみが対象というイメージが強い言葉ですが、学校の子供たちもデジタルデバイド状態だったのです。海外の子供たちは、とうの昔にPCやタブレットを使いこなしデジタルネイティブだったわけですから。こんな状況を「デジタル敗戦」ということがあります。(自治体の三層分離も、似たようなデバイドですね。)

「デジタルデバイド」:情報格差、デジタルを利用できる人とそうでない人の間に生まれる様々な格差

企業や自治体のDXと同じ、教育のDX

教育でのデジタルトランスフォーメーション(DX)というとあまりなじみがありませんが、教育現場でDXを実現することで、教育の質や幅・深みが劇的に向上し、生徒個人の能力に応じた最適な学びが実現するとされます。また、先生の負担を減らし、さらなる教育の質の向上につなげることも期待されています。

企業や自治体でも同様に、DXを推進することで全く新しい体験を提供するサービスの利用やサービスの提供を考えています。ここで提供される新しい体験やサービスを提供する企業を、先生という個人事業者に置き換えてみてください。先生が提供する学習という新しい体験や学習サービスを、子供たちが享受する。新しい体験や学習サービスを、デジタルを使って実現していきましょう!というのが「教育のDX」です。教育のDXは、企業や自治体のDXと同じです。

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教育のDX

紙に印刷して配布していたことをPCやタブレットで見られるようにすることは、見え方や見る対象が変わっただけで「アナログのデジタル化」にすぎません。黒板の電子黒板化?も、デジタル化にすぎず真のDXではありません。最新のテクノロジー(デジタル)を使って革新、変革することがDXです。やり方を根底から変えるくらいの変化Soicety5.0 を実現し、今まで体験したことがない心地よさをもたらすわけです。学校で言えば、「子供たちの心を掴んで離さないことができるか?」でしょうね。

電子黒板に書かれたテーマに、生徒みんなで書き込んで考えや気持ちを表したらどんなに素敵でしょうか? PCやタブレットに書いた文字や絵が電子黒板やプロジェクタに集約共有されたら、ほかの先生からのコメントも表示されたら・・・と考えていくとDXへ向うのではないでしょうか。

DXの本質は「教育のDX」でも変わらない

教育のDXは、「全く別の学習(仕事)の仕方や、洗練され最適化された全く新しい学習(仕事)のプロセス」のことをさします。DXの本質は、アプリやツールのようなソフトウエアを導入する話ではありません。「単なる情報化・デジタル化ではない」「経営そのものや文化の変革を伴うもの」とされています。

授業の進行(プロセス)や学習環境(学習教材など)をゼロから作り直し、生徒に「学習への意識(好奇心を持ち、やる気を引き出す)の変化を伴うもの」と言い換えできます。

具体的には、AI・IoTAR/VR・ブロックチェーンなどの最新のテクノロジーを使った、個別の最適な学習を提供するアダプティブラーニング、学習記録データベースとしてのスタディログ、コラボツール、仮想体験、CBTLMS(学習管理システム)などがよくあげられます。

ただ、現実はそんなすばらしい(デジタル技術をつかった)改革は、そこらへんに転がっていません。お金を出しても買えません。ましてや「対象が子供たちという人間」ですから慎重に進める必要もあります。これから試行錯誤しながら作っていく段階だと思います。まずは、改革の一歩手前の「改善」でとどめ、将来DX(革新)していくことも、現状での選択肢と思います。「企業や自治体のDXと同じ」と言いましたが、DXに失敗する場合も全く同じとも考えられます。まずは一歩改善へ踏み出すことです。

海外では、10年以上先行してPCを導入した学習が行われ、AIなどありませんから自ら試行錯誤してきた長い実績があります。教育者ではない私から申し上げるのもなんですが、参考にされるのもよいかと思います。特にブラインドタッチゲームから始まって、プレゼン、課題解決プロジェクト(協働)へ学年を経るごとにアップグレードしていくようなところは、なるほどなと思いました。その中には、AIはありませんので先生の手腕一つです。

オンライン授業

コロナ禍のなか、否応なく始めることになったオンライン授業と思われますが、一人一台となったPCやタブレットを使って授業するための、よい予行演習となったのではないでしょうか? コンピュータには人の心はわかりませんが、表面的な便利さは無限です。利用した学習アプリや電子教材、作成した授業コンテンツはオンライン授業だけではなく、対面授業でも役に立つはずです。

「教育のDX」はオンライン授業からすでに始まっています。オンラインへと手法を変えることで、どこにいても授業を受けられるように変革が起こります。黒板がPC画面に変わり、先生の目がカメラとなります。他の生徒も画面の片隅から覗いています。自然なリアルコミュニケーションには程遠いかもしれませんが、やり方を変えることでうまく授業を進められそうです。

生徒たちの集中力を考えると、内容を絞ってわかりやすく短く伝えたり、生徒からの質問に応える時間を充分に取ったりなど、「教授の時間」と「質疑応答のようなコミュニケーション時間」のバランスを変えていく必要があるのは、よく指摘されています。

手法を変える、やり方を変える、そしてどこにいても学べるという教育の変革(DX)起こせるわけです。

不登校や入院する生徒への対応として、対面とオンラインの両方=ハイブリッド授業として、普通に開催されることになると思います。

ICT支援員がサポートする「デジタルな学習環境」

オンライン授業を支援するのも、本来はICT支援員の役割と思います。オンライン授業そのものは、企業で使っているWeb会議システムと同じものです。従って、GIGAスクール構想によりICT支援員のサポートする領域は、PCやタブレットという範囲に留まらず、一般企業のIT支援部門と同じくらい広くなったと思います。PCやタブレット、企業向けWi-Fi設備、クラウドを含む学習ソフトウエア、Web会議システム(オンライン授業)、セキュリティから情報モラルまで広範かつ重要な領域をサポートしていく必要があると考えます。子供たちの学習の環境と先生の校務の環境という二面で。

「教育のDX・・企業や自治体のDXと同じ」編その2では、DXに必要な3つの要素を「教育のDX」としてみていきます。

DXプレビュー

ロールプレイングゲームのように分岐します。

「教育のDX・・企業や自治体のDXと同じ」編 その2

「見えないWi-Fiテクノロジー・・業務用無線LAN」編

「イントロ ICT支援員編」

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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