ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文へ (c)

ここから本文です。

付録編. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」実録、充電電流値

ライター:阿部 豊彦
経歴:エンタープライズ系インフラの提案、設計、構築や、SDN提案、
工場IoTネットワークやセキュリティのコンサルなどを担当。
ファシリティ、インフラ、セキュリティなどボーダーレスです。
昨年末から文教フィールドへ参入。

目次

<ご参考>
その1. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」仕様について①
その2. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」仕様について②
その3. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」輪番充電について①
その4. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」輪番充電について②

に続き、付録編では「QCD」と「充電量の実測」についてご紹介します。

■「タブレット充電保管キャビネット」のQCD

その1. 2. では「タブレット充電保管キャビネット」の選定でも全く同じように、品質(仕様)、費用、納期の3要素の検討が必要と締めくくりました。少しだけ深堀りします。

  • Quality(品質、仕様の実現)

その1. 2. へ記載した通り、どういう課題点を重視するか? 優先順位をつける必要がありそうです。
忘れがちなのが、修理保守です。電気部材と筐体部材で保証期間が異なっている場合がありますので、注意が必要です。

  • Cost(費用)

Quality(品質、仕様の実現)を実現するためのコストです。タイマー輪番方式に比べて監視輪番方式のほうが高コストです。教室のブレーカ断対策のため、一部を監視輪番方式キャビネットにすることもありかもしれません。
キャビネットの導入費用には、以下の労務が含まれるべきでしょう。

・(必要に応じて)事前の「設置場所や電源設備、搬入経路」などの現場調査
・(必要に応じて)搬入時の経路養生
・軒先渡しが多いため、階上などへの搬入作業、梱包材や輸送用木製パレットの引き取り産廃処分の手配
設置、組み立て、機能設定、動作確認(タイマーなどの設定や簡易的な作動の確認)
・(必要に応じて)安全確実に運用するための、教職員向け説明会の実施
・(必要に応じて)夜、深夜の電流量測定サービス ※充電ログが記録できるキャビネット製品はおそらくありません。

  • Delivery(納期)

最後にキャビネット供給能力の限界を見越した納期コントロールです。

令和元年12月 文部科学省 平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要) (平成31年3月現在)〔確定値〕
https://www.mext.go.jp/content/20191224-mxt_jogai01-100013287_048.pdf

これによると、全国に普通教室が466,670教室あります。小中学校の普通教室だけでも371,514教室あります(中等教育学校含む)。この数値は「普通教室の無線LAN整備率」や「普通教室の大型提示装置整備率」計算の母数となっているものです。
最大37万もの小中普通教室に1台ずつ「タブレット充電保管キャビネット」を短期間で配備することは、おそらく不可能なのが現実です。タブレットが納品される前にキャビネットが用意されるように慎重に納期をコントロールする必要があります。

■充電電流と時間の実測

手元機材で、充電電流を計測してみましたのでご紹介します。ノートPC電源OFF時のAC100V充電電流量(mA)を、放電状態から追ってみました。

【機材】

ノートPC(2機種):
・DELL Latitude E5280 12inch 7th CORE i5 51Wh
・LENOVO ideapad530S 14inch 8th CORE i3 34Wh(やや劣化)

クランプ電流測定器:
・BSIDE ACM82 デジタルマルチメータ 交流6Aレンジで0.001A まで表示(3.0%+ 10counts)

== DELL Latitude E5280 12inchの場合 ==

単純な充電方式のようです。
最低充電量設定を5%から0%へ設定変更し、完全放電状態(0%)から充電しました。
約165分で充電完了。約85分ごろ緩速充電に切り替わり、電流量が50mAまで充電継続しています。
電流量は、急速充電時にピーク399mA、平均375mAでした。

== LENOVO ideapad530S 14inchの場合 ==

断続的な緩速充電方式のようです。(電池の状況によって通常の充電を行うこともあるようです)
デフォルトの最低充電量設定5%のままで充電開始しました。
約130分で充電完了。約97分ごろ緩速充電に切り替わり、電流量が100mAまで断続的に充電しています。
緩速充電に切り替わる前に30秒以上中断し、その後約58秒の充電と約17秒の中断を繰り返しながら、次第に電流量を減らす動作をしています。
電流量は、急速充電時にピーク246mA、平均235mAでした。

■まとめ

タイマー輪番方式では、単にAC100Vの供給する時間を決めるのみで、グラフのような電流制御はタブレットの内蔵充電コントローラが行います。いつでもフル充電されるように、十分な時間を確保する必要があります。

監視輪番方式では、このような緩速充電に切り替わる電流値の変化を見極めて「いわゆる80%」で充電を中断することで電池を長持ちさせることができます。また、時間のかかる緩速充電を後回しにして、すべてのタブレットを均等に80%充電まで蓄電し、その後緩速充電を行うことができるわけです。各コンセントに今回使ったような電流測定機能を搭載する必要があり、高価となっていると思われます。

充電中に何らかの原因で、OSが起動すると充電時の倍近い電流が流れますので注意が必要です。

以上

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

RECOMMEND