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その3. GIGAスクール構想「タブレット充電保管キャビネット」輪番充電について①

ライター:阿部 豊彦
経歴:エンタープライズ系インフラの提案、設計、構築や、SDN提案、
工場IoTネットワークやセキュリティのコンサルなどを担当。
ファシリティ、インフラ、セキュリティなどボーダーレスです。
昨年末から文教フィールドへ参入。

目次

その1. その2. では広く「タブレット充電保管キャビネット」の見どころを解説してきましたが、後編ではその中の「②充電機能部分」を掘り下げていきます。充電機能には、前回の⑥緊急対応(教室のBCP/DR)などにも関係します。

■(教室の)コンセントにどれだけの電流を夜に流せるのか?

各教室別や各コンセント別に答えられる人はいないかもしれません。今答えても未来永劫同じとも限りません。また、教室個別ブレーカの上位のブレーカは大丈夫か?という心配まで出てきます。(もちろん、新規に電源工事をする場合は末端のブレーカ容量の問題は無視でき、ここで説明する輪番充電機能は不要かもしれません。)

■(学校の、教室の)ブレーカを上げないための「輪番充電」という仕組み

輪番というと、東日本大震災時に東京電力管内の電力供給低下にともなう輪番停電がありましたが、これと同じです。輪番停電は給電停止地域に視点がありましたが、輪番充電では給電されるタブレット群に視点が移ります。考え方は同じです。一度に電気を使うと問題があるため、利用者(タブレット数)を制限する仕組みです。

その仕組みは大きく「タイマー輪番」と「監視輪番」の二種類に分けられます。

■輪番されるタブレットのグループ分け(コンセント群)

  =文面で使用する用語定義=
 コンセント  :キャビネット内の40数個ほどあるタブレット接続用コンセント
 学校コンセント: 校舎や教室のコンセント

輪番対象には、以下の3種類があります。

物理的な電源タップ
タブレットが接続しようがしまいが関係なく存在する物理的電源タップを輪番グループとする方式です。

物理的でない電源タップ
物理的なタップでの分離を無視していつも決まったコンセントを仮想的にグループ化して電源タップとみなし輪番グルーとする方式です。

【例】電源タップは3本しかないが、制御上は4つに扱う

任意のコンセント群
電流をコンセント毎に測り、タブレットが接続しているコンセントのみを必要数一つのグループにします。必要数は学校コンセントの許容電流量に関連します。

【例】学校コンセントの電流量を「5A」以下にしたい場合
タブレット最大370mA/台とすると、13個の給電コンセントをグループ化。
コンセント利用は間引き接続でも一部に偏った接続でも構いません。電気を必要とするコンセントのみをグループ化します。

■輪番されるタブレットのグループ分け(コンセント群)の数

「物理的な電源タップ」の輪番グループは2か4に分けられることが多く、2輪番、4輪番となります。

「物理的でない電源タップ」の輪番グループは、4つに分けられる製品があり4輪番となります。

この2種の輪番では、多くの場合コンセント接続を監視していません。したがって電源タップに接続するタブレットの偏りによって、輪番が移るに従い学校コンセントの電流量が変わります。ただ均等にタブレットを接続した状態(理想的な状態)で考えれば、2輪番は輪番しない場合と比較して1/2の、4輪番であれば1/4の電流量となります。

「任意のコンセント群」の輪番グループは、上述のように計算で導き出されるコンセント数に分けられます。
13個のコンセントを「コンセント群」としてグループ化し、タブレットの総数が33台であれば、2.5輪番となります。輪番数を最小化(最適化)できるため、充電時間が短くできる上、タブレットの接続コンセントが一部に偏っても何の問題もありません。

■輪番方式 「タイマー輪番」と「監視輪番」

3種の輪番されるタブレットのグループ分け(コンセント群)に対して、それぞれに2種の輪番充電方式が製品化されているわけではありません。実際の製品では限定的な組み合わせとなっています。

タイマー輪番」は、そのイメージのとおり電源タップへの給電を設定した時間に従って順番に行います。
2つまたは4つのタイマーがそれぞれに開始時間、停止時間を設定できるものもあれば、一つのタイマーで単にきまった時間ごとに切り替わるだけのものまで製品によって仕組みが全く異なります。

 メリット:シンプルである。
 デメリット:十分な充電時間をタブレットに与えないといけないので、フル充電が終わっても次の輪番へ移るまで時間がかかる。
つまり
充電時間が長いです。

監視輪番」は、各コンセントに流れる電流値を監視し、リチウムイオン電池の充電特性に合わせた充電をインテリジェントに行います。タイマー輪番のように時間で切り替える単純なものではありません。
80%充電状態まで急速充電をし、つぎの輪番へ切り替える。ここで止めれば電池保護になります。残り20%は二巡目の輪番で次第に電流量が減る緩速充電となります。

 メリット:タイマー輪番のように切り替えまでに余裕時間を盛り込む必要がないので短時間で充電完了できる。
また、電池にやさしい80%充電やお昼休み1時間での緊急均等充電(BCP/DR)など自由に機能をアレンジして提供可能。

 デメリット:機構が複雑になるため高価

■充電開始タイマー

タイマー輪番、監視輪番とも、日本標準時の充電開始タイマーを持つものがあり、ほぼリチウム電池駆動です。この開始時間を教室毎に少しずらす運用も可能となります。また、充電時間を短くできる2輪番や監視輪番では、前半、後半に教室を分けて、学校全体で電気利用の平準化が可能となります。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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