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企業へのWi-Fi 7導入のポイント、マルチベンダー検証で見えた「課題」と「対策」

前半の記事はこちら

本コラムでは弊社イノベーションセンター(呼称netone valley)でのWi-Fi 7の高密度端末無線LAN環境での検証ナレッジを元に、Wi-Fi 7導入における勘所について前後半に分けて、紹介させて頂きます。

ライター:山下 聖太郎
無線のエキスパートとしてCiscoやHPE Juniperなどの製品担当として最新技術調査、検証評価、技術者の育成、提案/導入支援業務に従事。AI/クラウドを活用したサービス開発運営などもしていました。
・CCIE Enterprise Wireless(#61036)、第一級陸上特殊無線技士
・Cisco 第5回 シスコ テクノロジーコンテスト 最優秀賞受賞
・Cisco APJC Partner Innovation Challenge 2019 Japan Sector最優秀賞受賞

目次

登場人物

経験豊富なベテランSE
応用技術部の無線エキスパート:山下

企業にWi-Fi7 APを導入する際のポイント


「山下さん、前回の記事でWi-Fi 7 APの単体性能は分かったけど、実際に企業にWi-Fi 7 APを導入する時のポイントはあるのかしら」



「Wi-Fi 6以前からのリプレイスなら6GHz帯の検討など、考慮すべき点がありますね」
「一般的に企業にWi-Fi 7 APを導入する際に押さえるべきポイントは下記の通りです」
「3と4については前半の記事でも少し触れましたね」
  1. 端末のWi-Fi 7/6GHz帯のサポート確認

  2. 6GHz帯の導入の検討(Wi-Fi 6以前のAPからのリプレイスの場合)
    6GHz帯の接続には暗号化方式にWPA3もしくはEnhanced Open WLANが必須のため
    端末側が6GHz帯やWPA3をサポートしているか確認

  3. ボンディング利用を想定している場合は上位スイッチのマルチギガ化

  4. APのフル給電ができる方式調査(802.3bt(PoE++),802.3at(PoE+)など)


「以前私のお客様も、全端末がWi-Fi 7や6GHz帯未対応で導入を悩まれていたわ」
「少し前まではWindows 10が6GHz帯をサポートしていないという理由で、Wi-Fi 6 APの提案をするケースもありましたが、今はどうなのでしょうか?」


「Windows 11で6GHz帯が正式にサポートされ、Wi-Fi 7もバージョン24H2以降で正式サポートされたため、OS面の環境は整ってきています」
「Wi-Fi 7 APのラインナップも今は各社ハイエンド、ミドルエンド、ローエンドまで出そろってきていますね」


「お客様の要件や予算に合わせて、適切なモデルをご提案できるフェーズに入ったということね」


「仰る通りです」
「下記は現在リリースされている主な企業向けWi-Fi 7 APから、モデルの傾向を抜粋しています」


表1.主な企業向けWi-Fi 7 APのパターン



「パターン2が、2.4GHz / 5GHz / 6GHz帯を同時に使える一番汎用的な構成ですね」
「パターン3や4のようなDual 5GHz(5GHz帯を2つ利用)が使えるAPも、端末台数が多い環境では根強い人気がありますね...ところで、6GHzが2つ使えるDual 6GHzのパターンはないんですか?」


「鋭いですね、実は、日本では海外と違い、まだ6GHz帯の後半の周波数が開放されていないため、Dual 6GHzに制限をかけているメーカーが殆どなんです」


「なるほど、日本ではまだ全てのチャネルが使えないんですね



「総務省で現在検討が進められている6GHz帯後半の拡張に期待ですね」
「netone valleyの検証環境でも、スペクトラムアナライザで見ると後半のチャネルが丸々空いていることが確認できます」


図1. 2026年2月現在の日本で利用できる6GHz帯のチャネル

「ちなみにWi-Fi 7の次の規格であるWi-Fi 8(IEEE802.11bn)の標準化完了予定は現時点で2028年5月頃になっています(ずれる可能性あり)
「Draft時点で市場に製品は出てきますが、製品ラインナップが出そろうのはさらに先の話になりますから、まさに今がWi-Fi 7提案の旬と言えます」


「となると、Wi-Fi 7のラインナップから要件に合わせて選定し、可能な限り6GHz帯も活用できる環境にした方がよさそうね」


「珍しく大きな声を出すわね」
「でもまだまだ6GHz帯による相互接続性の不具合も多いと聞くわよ」


「ぐっ、確かに新規格や新周波数帯の初期は相互接続性問題が課題ですね」
「しかし、それを補うほど、6GHz帯の活用は端末過多による帯域不足や遅延の根本解決に繋がります」
「無線LANの需要が増え続ける中で、2.4GHzと5GHz帯だけでは限界を迎えている企業にとって、6GHz帯は救世主と言えます」

図2. 電波干渉しないチャネル数の違い


「2.4GHz/5GHz帯の設計やチューニングであらゆる手を尽くしても、チャネル不足や電波干渉に悩む環境…私も経験があります」


「各社様々な便利な機能によってチューニングは可能ですが、限られたチャネルの中では限界もあります」
「実際にWi-Fi 7や6GHz帯を導入するにあたって、どんな点に注意すべきかそして具体的な効果はどうなのか、弊社netone valleyで実施した計測結果を見ていきましょう


では早速!やってみよう!



様々な無線技術が集結、ネットワンの共創空間

ネットワンシステムズ イノベーションセンター(呼称netone valley)


【検証環境概要】

環境:イノベーションセンター(呼称netone valley)
検証APエンタープライズやパブリック向けの様々なメーカーの製品を評価
Wi-Fi 7クライアント:Intel BE200搭載PC (Windows 11 25H2)
          Qualcomm FastConnect 7800搭載PC (Windows 11 25H2)
          Wi-Fi 7対応USBドングル (WDB-BE28TU3-B)
測定ツール:iperf3 (スループット)、TessaByte (スループット)、Chanalyzer (スペアナ)

検証①:Wi-Fi 7の各周波数帯の電波の性質


「まずは6GHz帯導入検討にあたって6GHz帯の性質を少しご紹介します」
「6GHz帯は5GHz帯よりも周波数が高いので、5GHz帯よりも障害物などの影響を受けやすい性質を持ちます」
「一方で2.4GHz帯と比べると、5GHz帯と周波数が離れていないので5GHz帯に近い性質になってます」

図3. 同じ送信出力、アンテナ利得で周波数毎に-65dBm受信できる距離(机上計算)


「ふむふむ、同じ送信出力の場合、周波数が高い方が電波が遠くまで届きづらい性質があるんですね」
「確かに2.4GHz帯と比べると、6GHz帯の方が同じ送信出力の場合で届く距離が5GHz帯に近いですね」
「今までは5GHz帯をメイン周波数帯としてセル設計をしていたけど、今後はどうするのがいいのですか?」


「結論から言うと、従来の5GHz帯のセル設計をそのまま利用し、6GHz帯の調整は自動電波制御機能に任せるのがおすすめです


「電波環境の変化に合わせてチャネルや送信出力を動的に変更する機能ですね」
「6GHz帯も自動電波制御機能で問題無く調整されるものなのですか?」


「弊社の取り扱い製品では長年の実績やAIの活用もあり、適切に設計された環境であれば問題なく動作するケースが多いです」
「実際にnetone valleyのAPも5GHz帯でセル設計をし、自動電波制御機能で運用していますので、その状態を見てみましょう」



図4. フロア(AP間の距離11m~15m)における各周波数帯の送信出力


「netone valleyの検証環境は接続端末数がそこまで多くないため、AP間の距離は余裕を持って(11m~15m)設計しています」
「赤枠がオフィスエリア(天井高2.75m)それ以外のエリアが天井が高いエリア(4.6m)になっています」
「5GHz帯よりも6GHz帯の方が電波が届きづらいので、自動で最適な出力に調整してくれているわけですね」


「ふむふむ、全体的に6GHz帯が5GHz帯より1dBmくらい高めでうまく調整していますね」
「あら? 2.4GHz帯が無効になっているAPもいるみたい」


「鋭いですね、2.4GHz帯は干渉せずに使えるチャネルが3つ(1/6/11ch)しかなく、この密度で全APが2.4GHzを吹くと干渉だらけで逆効果になってしまうんです」
「残ったAPの2.4GHz帯の送信出力も最低値
なのでこれ以上出力を下げられず、図3の2.4GHz帯のヒートマップを見るとその条件下で最適にチューニングしてくれている事が分かります」


「自動電波制御機能が周囲の電波環境を見て、全てのAPでは2.4GHz帯は不要と判断しているのね」


「はい。このAPの最大出力にはまだ余裕があるので、人やモノの移動による環境の変化、APの障害などにも柔軟に対応できます」
「5GHz帯を前提にセル設計をしている環境であれば、6GHz帯も自動でチューニングしてくれるのが自動電波制御機能の良いところですね」
「ちなみに基本は自動電波制御機能を利用し、一部のAPだけ固定にするなど柔軟な設計にするケースも多いです」


「2.4GHz帯をただ無効にするのはもったいないので、Dual5GHz対応APを採用するのもよさそうですね」


「端末台数が多く無線LAN利用率が高い環境ではDual5GHz APを採用し、1APあたりの端末の収容率を上げるのは賢い判断ですね」
「netone valleyは端末台数が多くないため、Dual5GHzは無効にしていますが、有効にすると下記のように自動でDual5GHzを採用してくれます」


図5. フロア(AP間の距離11m~15m)における各周波数帯の送信出力(Dual 5GHz有効)


「2.4GHz帯が無効だったAPが5GHz帯を2つ使ってくれてい
ますね」
「5GHz帯を利用するAPが増えたけれど、チャネルの被りは発生しないのかしら」


「そのあたりも気になりますよね、図5の環境におけるチャネルの分布は図6に載せています」
「5GHz帯は最大20チャネルありますが、図6では22個の5GHz帯のチャネルが分布されており、この環境ではどうしてもチャネルが足りません」
「その場合、自動電波制御機能は隣り合ったAPで同じチャネルにならないように調整もしてくれるので、影響を最小限に抑えてくれます」

図6. Dual5GHz環境における5GHz帯のチャネル


「たしかに同じチャネルはある程度離れた距離に配置されてますね」
「このレベルで調整してくれるなら、基本は自動電波制御機能に任せて必要に応じてチューニングするのがよさそうね」


「そうですね、最低送信出力の調整や固定設定など、後からチューニングも可能です」
「しかし、AP間距離が7m-8mになるような高密度AP環境では、2.4GHz帯と5GHz帯だけではチャネルのやりくりにも限界がきます」


「そこで、5GHz帯の倍以上のチャネルを持つ6GHz帯の出番というわけね」


「その通りです!高密度AP環境でなくても、少しでも6GHz帯に端末がオフロードされれば既存の周波数帯にも余裕が出てきます」
「限られたチャネルをパズルのように組み合わせていた苦労が、6GHz帯の導入によって劇的に解消され、安定性向上に繋がる事が伝われば嬉しいです

検証①で得られた教訓

検証②:Wi-Fi 7 APに多数の端末が接続した際のパフォーマンス


「設計のポイントは分かりました、でも、実際にたくさんの端末が繋がった時のパフォーマンスはどうなのですか?」


「企業や学校で重要なのは、高負荷時でも業務や授業に必要な帯域を1端末あたりで確保できるか、です」
「この辺りは各メーカーによって差があるため、netone valleyのマルチベンダー環境では1.5Mbpsという要件を満たせるか検証を行っています」
下記は、あるWi-Fi 7 APに40台の端末を接続した際の検証結果の一部です




図7. Wi-Fi 7端末40台が同時に通信をした際の各端末の平均スループット(赤線は1.5Mbpsライン)


「実際の環境に合わせてAPと端末の距離を離しているから、合計スループットはAPのそばで1台で測った時より落ちているわね」
「それに、端末ごとに帯域が完全に均等というわけでもないみたいね」


「そうなんです、無線LANはCSMA/CAの動作で複数端末が同時通信をしても、ある程度均等に帯域を分散してくれますが、完全に均等にはなりません」
「ちなみに型番やチップセットによって傾向は異なり、このWi-Fi 7 APは検証したAPの中で
ばらつきが平均的な型番になってます。」



「ばらつきはあれど、このWi-Fi 7 APは40台の端末で1.5Mbpsの要件を全ての端末が満たせたんですね」


「はい、ちなみに同じメーカーの過去に実施した同グレードのAPの検証結果がこちらになります」

表2. 無線LAN規格別検証結果(全端末が1.5Mbps要件を満たす事が出来たら〇)




「なるほど、旧規格の時は要件を満たせない端末も出ていたんですね」


「型番は違いますので参考までですが新規格で帯域が増えるほど、1端末に割り当てられる帯域に余裕が出る傾向があります」
「ちなみにこの検証が20台の検証であれば、1端末あたりの帯域も倍程度になる検証結果も出ています」
「重要なのは、AP側の帯域が太ければ太いほど、1つの周波数帯に接続している端末台数が少ないほど1端末あたりに割り当てられる帯域が増え、余裕ができるということです」


「それにはWi-Fi 7 APで帯域を増やし、6GHz帯で端末をオフロードして分散するのが最も効果的と」


「はい、Wi-Fi 7 APの導入により対応端末が6GHz帯にオフロードされ、結果として既存の5GHz帯も安定するようになった事例もあります

「いきなり全ての端末をWi-Fi 7と6GHz帯対応にする事は難しいので、AP側を整備し、少しずつでも移行を進める事が推奨されます」

検証②で得られた教訓



検証③:Multi User MIMO(MU-MIMO)はどんな環境でも動作するのか?


「帯域を増やすという意味では、Wi-Fi 5からあるMulti User MIMO (MU-MIMO)はどの程度期待できるのですか?」
「よく4x4:4stream APの優位性として挙げられるけれど」


「MU-MIMOは、複数のアンテナを活用して同時に複数の端末と通信する技術ですね
「理論上は優秀ですが、端末側のサポートや発動条件が厳しく、実環境では恩恵を体感しづらいのが正直なところです」


図8. MU-MIMOの動作例


「動作例だけみると凄い効果がありそうですけど、そんな単純ではないんですね」


「なんとかオフィス環境で効果を可視化しようと試行錯誤しているのですが、目に見える検証結果は出せていません」
「下記のような環境で何十回も試行しているなかで4x4:4stream APの方が、全体的に1割程よくなっている気もしますが、無線LANにおいては誤差の範囲です」


図9.様々なAPで計測した平均スループット値の平均


「動作するかどうかは環境次第なので過度な期待は禁物、ということね」


「仰る通りです。ただし4x4:4stream APは4本アンテナになる事でMRCによって耳がよくなり、受信能力があがるなどのメリットもあります」
「コストパフォーマンスを重視なら2x2:2streamモデル、より安定性を求めるなら4x4:4streamモデルという選定基準で良いでしょう」
「MU-MIMOの動作については引き続き調査を継続していきますので、進捗があればまた公開させて頂きます」

検証③で得られた教訓

まとめ:Wi-Fi 7と6GHz帯の導入が企業の無線LANの安定性を向上させる


「今回の検証から得られた、企業へのWi-Fi 7導入に関する知見をまとめてみましょう」

  1. セル設計における留意点: 5GHz帯のセル設計で問題が起きていなければ、6GHz帯も自動電波制御機能に任せる事が推奨されます。

  2. 高密度端末環境における端末の分散の重要性: Wi-Fi 7による帯域増強に加え、6GHz帯へ端末を分散させることで1端末あたりの帯域や既存帯域にも余裕が生まれ、システム全体の安定性が向上します。
  3. 2x2:2stream APはコストパフォーマンスが高い: 端末側は2x2:2streamが主流のため、大半の案件は2x2:2stream APで要件を満たせます。より高い安定性や受信感度を求める環境では、4x4:4stream APが推奨されます。

  4. 検証の重要性: 新しい規格が出るたびに初期は相互接続性の問題が発生する傾向があるため、可能な限り事前の接続試験が推奨されます。


「速いからWi-Fi 7にするのではなく、無線LANを安定させて業務継続性を高めるためにWi-Fi 7と6GHz帯を導入するというのが正しいアプローチのようね」


「仰る通りです。無線LANの需要が高まり端末が増え、多様な使い方がされている昨今、無線LAN導入の際はWi-Fi 7環境にしておくことが推奨されます」
「ネットワンシステムズは黎明期から無線LANに携わっており、日本有数の大規模導入実績や検証ナレッジを持ってます」
「無線LANでお悩みのお客様がいたらお気軽にご相談ください」


「せっかくこんな充実した検証環境があるなら、もっと色々見せてほしいわね!」


「もちろんです。今回お見せしたデータはネットワンのナレッジのほんの一部です。今後も定期的に情報を公開していきますので、ご期待ください!」


次回を!    お楽しみに!


「ネットワンの施設や最新市場動向、検証結果などはInnovation Showcase内でお客様にご紹介する事も可能です。」
「今回ご紹介した施設や検証結果にご興味をお持ちのお客様は、是非ともお気軽に弊社担当にご連絡いただければと思います。」

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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