- ライター:宮田 悠太郎
- 2020年にネットワンシステムズに入社。ServiceNow製品の担当を経て、現在はAI、Webアプリ開発に従事。
目次
概要
本記事は社内向け生成AIアプリ「nelmo」誕生から成長まで Part 2の続きとなります。nelmoの開発経緯、ネットワンシステムズにおける社内普及に向けた取り組みをご紹介します。
※以前プレスリリースで発表したNELMOは社内全体の生成AIの取り組みを指しています。本記事で紹介するnelmo(社内向け生成AI利用webアプリ)は上記取り組みの一部となります。
同じ読みですが、用途に応じて表記を使い分けています。全社的な取り組みは「NELMO」(大文字)、社内向けWebアプリは「nelmo」(小文字)として記載します。
プレスリリース記事
https://www.netone.co.jp/news/release/20240802_01.html
開発経緯
生成AIが広く注目され始めた2023年第1四半期に、SE業務における生成AI活用を目指し、nelmoの開発を開始しました。初期段階では限られたメンバーを対象に、Steamlitによる簡易UIを用いた効果検証(PoC)を行い、業務への適用可能性を評価しました。
そこで得られた知見を踏まえ、全社展開を見据えたアプリケーションとして、有志を募って開発を進め、2023年第3四半期に「nelmo version 1(nelmo v1)」をリリースしました。
リリース後、一時的に利用率の伸びが鈍化し、停滞が見られました。
これを受けて、利用状況を可視化したデータを分析し、利用者拡大にはUIの改善が有効であるという仮説を設定。AI初心者の方にも直感的に使えるUIを目標に改良を重ね、2024年第4四半期に「nelmo version 2 Beta(nelmo v2b)」をリリースしました。
その結果、利用率はv1を上回り、安定的な推移を確認できました。これを受け、FY25下期には冗長性の強化などを施した「nelmo version 2」の本番版をリリースする予定です。
現在は元有志メンバーの一部がチーム化し、アジャイル開発によって月次で機能リリースできる体制で開発を進めています。
最新のAI技術を迅速に取り入れるため、既存製品の採用ではなく、独自プラットフォーム「nelmo」の開発を選択しました。
生成AIの領域は日々革新が進み、技術の変化に即応する柔軟性が求められます。特に最新技術の多くがオープンソース(OSS)として公開される傾向にあることから、nelmoではOSSを積極的に活用しています。これにより、最先端の知見を取り込みながら、業務効率化の実現を目指しています。
開発タイムライン
社内普及への道のり
利用者数の推移
生成AIの社内利用を広めるには多くの課題がありました。
前述の通り、nelmoはnelmo v1, nelmo v2という変遷を辿っています。v1リリース直後は利用者が順調に増えたものの、その後は伸びが鈍化し、日次利用者数は約200名で停滞していました。
この状況を打開するため、開発チームは以下の3つの施策に取り組みました。
- UIの改善
利用停滞の原因をUIUXにあると仮説を立て、2024年度にUIを全面的に見直した「nelmo version 2」を開発し、2025年3月にリリースしました。直感的な操作性や検索性の向上により、停滞していた利用が再び伸び始めました。 - 最新生成AIモデルへの迅速な対応
継続開発に適した技術スタックを採用し、アップデートのスピードと品質を両立。ユーザーからのフィードバックを取り入れながら改善を重ねました。特に、2025年5月にGPT-4.1やo3といった長文理解モデルを導入したことで、利用者数は大きく増加しました。 - 社内説明会の実施
2025年7月から9月にかけて、全社向けおよび各部署向けに説明会を開催。生成AIの適切な使い方や注意点、効果的なプロンプトの書き方、nelmoの活用法を分かりやすく紹介し、現場での定着を後押ししました。
これらの取り組みにより、利用者数は2023年・2024年の実績を上回るペースで増加。現在は日次で約500名が継続的に活用しています。
nelmoの2025年度の利用者数の推移
AI市民開発の導入
説明会を開いた際、「自分の業務にどう適用すべきか分からない」といった声が多く寄せられました。今までnelmoの利活用はトップダウン的にシステムリリースをし、活用促進の施策を進めてきました。
その成果もあり、SE業務の利用状況は進みましたが、一方、営業業務やコーポレート業務での活用が進んでいないという状況があります。またSEからもより業務で活用できるAI機能のリリースが求められています。
しかし現状、開発チームの人数は限られており、全てを開発することはできません。
そこでこの課題に対する解決策として、OSSのノーコードのAIアプリ開発プラットフォーム「Dify」を導入しました。
当社にはSEを中心に開発スキルを持つ人材が多く、ノーコードであれば現場メンバー自らが業務知見を生かしてアプリを構築できます。ボトムアップで業務特化型のAIアプリを開発する仕組みを整えることで、nelmoの具体的な活用シーンを増やし、社内のAI市民開発者の裾野を広げることを目指しました。
この方針のもと、社内公募を実施したところ、多様な職種のメンバーが参画。合わせて開発チームが勉強会や特定チーム・部門向けにハンズオンやAI活用コンサルを実施し、ボトムアップ型のAI業務DXの推進を行いました。
上記の取り組みにより、Difyを活用したアプリ開発が進み、営業部門と連携し営業部向けに過去の発注ミス事例DBを利用した機器構成のリスクチェックアプリ、営業業務ルールのQAチャットボットといった業務特化型AIアプリをリリースすることができました。
今後も、ユーザー体験の改善、最新モデルへの対応、現場主体のアプリ開発を軸に、社内の生成AI活用を継続的に加速していきます。
まとめ
nelmoは、社内の業務効率化を支える生成AI活用の土台として、最新技術の迅速な取り込み、使いやすいUI、そして現場主導のボトムアップ開発を軸に進化してきました。
また説明会を開催することで、Difyを用いた市民開発の仕組みを社内に広げ、業務特化型アプリを次々と生み出すことができました。
生成AIは何でもできると思われがちですが、何ができるのかを正しく理解したうえで活用する方法を考えることが重要です。
説明会を通して生成AIに対する正しい理解、ツールの使い方を広めていくことが生成AIの社内普及への近道だと、私自身、普及活動を進める中で強く実感しました。
この記事を読んで、共感するところ、聞いてみたいところがあれば、お気軽にご連絡ください。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。