
こんにちは。ネットワングループのサステナビリティ委員会ダイバーシティ推進分科会の豊田です。
2023年6月に社員向けにダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のイベント、「netone universal Day」を開催しました。当イベントは、D&Iに関連するセッションの他、日本車いすテニス協会のご協力で実現した車いすテニスを体験するコーナー、身体障がい者支援団体によるノベルティの提供など、いろいろなプログラムがありました。
今回は、そのプログラムの中で特に印象に残った講演を取り上げてレポートいたします。イベントから半年ほど経ってしまいましたが、当社の活動を少しご紹介できればと思っております。
- ライター:豊田 直美
- ネットワンパートナーズでマーケティングコミュニケーションを担当しております。
皆さまのお役に立つ情報をお届けできれば幸いです。
目次
はじめに
さて、当イベントですが、コロナ緩和に伴い、2023年5月に(東京都)品川区勝島にオープンした弊社新社屋「イノベーションセンター(呼称netone valley)」と各地事業拠点にてオンサイトで同時開催し、かつ全拠点をオンラインでつないだハイブリッドイベントとなりました。この日はまさに全社で「D&I」について考える一日になったと思います。
ネットワングループでは、多様な社員が活き活きと、自分らしく働ける企業を目指して、いろいろな取り組みをしています。働く環境を整える上では、スロープ、エレベーター、ユニバーサルトイレなどの施設完備や、テレワーク、フレックスタイム、育児・介護の支援制度などのハード面を整備するだけではなく、多様性とはどういうものか、社員の理解を促進するソフト面の教育も重要です。今回のイベントの目的は、「~New Beginning 壁を取り払おう~」をテーマに用意されたさまざまなセッションや体験会を通じて、スペシャルニーズのある方や、性の多様性について「知ったり」「体験したり」しながら社員一人一人の気づきや理解に繋げることです。
そんなネットワングループのダイバーシティイベントの一部を見ていきましょう。
※イベント全体の様子はこちら<社内でダイバーシティ&インクルージョンイベント「netone universal Day」を開催しました | ネットワンシステムズ>
※ネットワングループでは法令名、法人名及び団体名等の固有名詞を除き「障がい」という表記に統一していますが、各講演についてのレポートでは、それぞれの講師・所属団体の表記ルールに従っています。
セッション1:「性の多様性について」
講師:長屋 友美様(株式会社Suns up 代表取締役)
性に4つの構成要素の頭文字をとった「SOGIESC(ソジエスク)」というすべての人に関わる概念についてお話しいただきました。世の中は2極では判別できないものがあり、「性」はその一つ。SOGIESCは、性的指向(Sexual Orientation)、性自認(Gender Identity)、性表現(Gender Expression)、身体的性(Sex Characteristics)の4つの要素の頭文字を合わせたものです。

(引用:長屋様講演資料より)
この4つの要素をグラデーションで表現することで、例えば自分自身の性のあり方がどういうものか可視化できます。このグラデーションはあくまで「今の自分」を表していて、時間や経験に伴い変化することもあり、100人いれば100通りのグラデーションが存在します。LGBTQ+も、このSOGIESCのグラデーションの組み合わせの一部を表しています。

(引用:長屋様講演資料より)
※講師の長屋様の性のグラデーション。恋愛・性愛の対象が女性のため性的指向は女性、自身の性自認は少しだけ男性より、身体的性は女性だが、洋服の好みはちょうど中間くらい、という自身のセクシュアリティを表現。
レズビアンの当事者である長屋様が、多感な十代に周囲と違うことで葛藤された経験のお話しは、学生時代の自分に置き換えると、あの時にこんな思いをしていた人がいると思っただけで胸が詰まる思いでした。「性」がこれほど多様で、常に変化し、明確なカテゴリーで表現しきれるものではない、というお話しは新たな気づきでした。
セッション2:「知的障害、発達障害のある方を理解する疑似体験ワークショップ」
講師:
内藤 美那子様(新宿区手をつなぐ親の会 会長)
中川 淑江様(知的発達障害疑似体験キャラバン隊「Winds」 代表)
講師の内藤様と中川様は、知的障害・発達障害のお子さんをお持ちの保護者からなる団体に所属されていて、ワークショップを通じて自閉症やダウン症の障害特性を多くの方にお伝えし、障害を持つ方々への支援を集め、差別や偏見のない温かい社会作りを目指して活動されています。
今回のワークショップでは、いくつかお題が出て、それに取り組む中で、知的障害・発達障害がどういうものか、どのような困りごとがあって、周囲にどう理解して欲しいか、など体験していきます。そのうちの一部をご紹介します。
一つ目は、自閉症の少年がショッピングモールを歩く動画を見て、自閉症の世界を体験します。
モール内は、店頭に並ぶ商品の色や形、電灯や店のサインの光、通り過ぎる人が発する音や匂い、モノが床に落ちる音、などさまざまな刺激で溢れています。モールを訪れる多くの人にとっては、何気ない光景でも、一気に流れ込む情報と感覚の波に飲まれた自閉症の少年は、パニックに陥ってしまいます。
自閉症の方は、パニックを起こしそうになった時、ぬいぐるみなど愛着のあるものを手に持つ、指で数を数える、大声を出す、走り回る、話し続けるなど、独自の方法でクールダウンをはかります。このような行動を見かけたら、気持ちが高ぶっていたり、何か困った状態なのかもしれない、と温かい目で見守り、落ち着ける静かな場所を教えてあげたり、周りに家族やヘルパーさんがいれば、「何かお手伝いすることはありませんか?」と声をかけるのが良いそうです。「大丈夫ですか?」と声をかけがちですが、この場合「大丈夫です」と答えるしかないので、もう少し具体的に指示できるような声のかけ方が必要です。パニックに陥った自閉症の方は、「困った人」ではなく、「困っている人」なので、温かい声がけが助けになる、という講師の方のコメントが強く心に残っています。

(引用:Windsワークショップ資料より)
二つ目は、ダウン症の世界の体験です。英国のダウン医師が発表したことでこの名前がついていますが、600~800人に一人の割合で生まれるとされています。ダウン症の特徴としては、知的・発達障害があったり、身体的には、手のひらが厚く、指が太いので細かい作業が苦手だったり、舌に厚みがあり筋力が弱いため発音が不明瞭な部分があります。
ダウン症の青年が絵本の一場面を読み上げて、何の話か当てるクイズが出題されましたが、今回はどなたも何の絵本か当てることができませんでした。ダウン症の方とのコミュニケーションを上手くとるには、言おうとしていることを単語や表情、その時の雰囲気、状況などからくみ取る必要があります。
三つ目は、単語を聞いてそれを絵に描くという体験です。「リンゴ」、「ボール」、「ちょっと」、「ちゃんと」の4つの単語を絵にします。物の絵は描きやすいかもしれませんが、一概にボールと言っても球技に使うボールもあれば、キッチンで使うボールもありますね。「ちょっと」は、コップに飲物が残っている絵、親指と人差し指で「ちょっと」を表している絵などがありました。「ちゃんと」は、身だしなみでシャツをズボンに入れるなど「ちゃんと」を表している絵、座っている様子で姿勢よく「ちゃんと」を表している絵などさまざまです。
知的障害のある方は、「ちょっと」、「ちゃんと」などの曖昧な表現や、人によってニュアンスの違うことを理解、想像することが苦手なので、できるだけ具体的に話をする必要があります。「ちょっと待ってね」ではなく、「3分待ってね」と伝えたり、何かを指示する場合は、メモに書いて時系列に順番をつけて伝えたり、写真や実物を見せて説明すると理解しやすいとのこと。長い文章で伝えるのではなく、短く一つずつ行動して欲しいものを伝える必要があります。

(引用:Windsワークショップ資料より)
身体的に不自由な方を支援するツールには、車椅子、点字、補聴器などが思い浮かびますが、知的障害の支援で最も重要なのは「人の支援」です。障害について少しでも理解のある方が多くいることは、知的障害者やその家族がその地域で生きやすくなります。障害者にやさしく声をかける、何かあった時に家族に知らせるなど、温かなまなざしと人の支援が必要です。
最後に
弊社イベントから2つのセッションをご紹介しましたが、どのように感じられましたでしょうか?私個人としては、とても多くの学びがありました。
街中で車いすを利用されている方や盲導犬を連れた視覚障がいの方、あるいはシルバーカーを押しながらやっと歩いているようなお年寄りを見かけるたびに、常々正しい接し方とはどういうものか知りたいと思っていたので、このイベントをきっかけに、自身でもいろいろ調べて、何かあったら助けになることがしたいなと思っています。
『 New Beginning 壁を取り払おう』をテーマに開催した今回のイベントですが、参加した社員それぞれが、スペシャルニーズのある方の特性や、性の多様性について、まずは「知る」ことが大事であると実感できたのではないかと思っています。「この人は今どういう気持ちでいるのか、何に困っているのか」という視点で人と関わっていきたいと思います。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。