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企業ITはテクノロジー消費モデルへ / 新プレイヤーの出現とコードによるITガバナンスの実態 〜ONUG Spring 2023レポート〜

ライター:井上 勝晴
2002年にネットワンシステムズ入社後、応用技術部にてVoIP/Mobile/Telemetry等の通信キャリア様向けの技術を担当
2019年4月より、現職であるNet One Systems USA,Inc.に勤務
米国シリコンバレーに駐在し、Innovation調査と新興企業の発掘業務に従事
妻と娘(6歳)も一緒に渡米しており、家族でのベイエリア生活を奮闘しながらも楽しんでいる。家族で米国の国立公園に行くのが最大の楽しみ。

目次

はじめに

米国の大手企業が中心メンバーであるマルチクラウドのユーザグループのONUGですが、年に2回開催されるカンファレンスが今年もONUG Spring 2023として、米国時間の5月17日から2日間にわたり開催されました。今回のONUGは、「企業ITのテクノロジー消費モデルへの移行」といった新たなコンセプトや、クラウドの俊敏性・シンプル性をガバナンスを効かせつつ最大限に享受するための手法である「Policy as Code」のアップデートなど、興味深いトピックが語られていました。本ブログにて、ONUG Spring 2023で見えてきた北米企業のITトレンドと、弊社ネットワンシステムズが登壇したPoCセッションについて、2回にわたってご紹介します。

ONUGとは

ONUGはデジタルエンタープライズへの進化に向けて必要なテクノロジーやフレームワークの検討、そしてケーススタディやチャレンジの共有を通して、メンバー各社のマルチクラウド環境下におけるIT利活用を向上させるということをミッションとして掲げています。2022年から始まったPhase 4では「Operationalize Multi-Cloud」と銘打ち、ビジネスロジックの視点を持つ利用者側とITインフラの提供者/管理者側が一体となって、今やマルチクラウドが前提となったITを積極活用する姿を、企業ITの理想像として定義しています。

<The Evolving Role of Network and Security Engineers in Cloud Infrastructure より>

ONUGのFounderであるNick Lippis氏の基調講演では、この理想像に至るまでの企業ITネットワークの遍歴を簡単に振り返ることから始めました。

10年前の企業ITでは、Connectivity(接続性)とSecurity(セキュリティ)そしてPerformance(性能)にフォーカスが置かれていました。PCやサーバーが主要な接続先であり、トラフィックも主にNorth-South方向(ユーザーからデータセンターへ)の通信が中心でした。その時代のネットワークの主な目的は、人とアプリケーションを繋ぐことであり、セキュリティは境界線によって保護されるPremierモデルが一般的でした。しかし、現在ではIoTデバイスを始めとするあらゆるものがネットワークに接続され、リモートワークが一般化し、多様な場所からアクセスされるようになりました。このような変化により、従来のセキュリティ境界線モデルも変わりました。また、ネットワークの目的も単なる接続だけでなく、ビジネス・イネーブラー(ビジネスを支える)としての役割も求められるようになりました。

同氏はこのようなネットワークへの要件変化が(インフラの柔軟性や拡張性を必要とする新たな要件が)、企業ITのクラウド移行を推し進めたと説明します。そして、ONUGはこの企業ITの変化をエンタープライズ・クラウドとして再定義し、その実現に向けた各活動(自動化、クラウド・セキュリティー、クラウド・ネットワーキング、Policy as Code)を行っています。

<The Evolving Role of Network and Security Engineers in Cloud Infrastructure より>

企業ITはテクノロジー消費モデルへ / 企業LANも消費する時代へ

このクラウドシフトは企業ITの消費モデルへの移行を促進し、結果、企業ITの容態をも変えました。そして昨今の生成型AIにも代表されますが、日々進化するテクノロジーをキャッチアップし、都度それを消費していくことは、企業のSustainable Business Innovation:継続的なビジネス革新 を実現する有力なアプローチとまでなりました。つまり、企業ITは今、テクノロジー消費モデルへの移行を求められているわけです。

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<The Evolving Role of Network and Security Engineers in Cloud Infrastructure より>

このテクノロジー消費モデルの文脈で新たなプレイヤーも出てきました。企業LANは消費モデルが及んでいないエリアの一つでありましたが、ここを変革するプレイヤーが出現しています。参加企業のNile(シスコ前CEOのジョン・チェンバース氏がFounderであるスタートアップ)は、あたかも水や電気の如くネットワーク・サービスを消費する新たなモデルを提供しており、企業LANのディプロイから運用までをサービスとして消費するモデル、企業LANのas a service化を実現しています。

<Built from the Ground up to Deliver Secure Wired and Wireless Networking, as a Service>

<NetOne USAオフィスに導入したNileの管理ポータルより>

このNileのネットワーク・サービスは、弊社ネットワンシステムズのUSAオフィスに導入しております。詳細説明やデモなども可能ですので、ご興味ある方はお声掛けください。

テクノロジー消費モデルの最適化:Policy as code

一方で、このIT消費モデルには課題も存在します。企業は常に進化するテクノロジーを消費することとなるのですが、同時に自社のガバナンスが機能しているかのチェックも必要となります。このガバナンスチェックは、データセキュリティーやコスト、法規制などの複数の観点から為される必要があり、時に煩雑となります。テクノロジーの恩恵を受けながらもガバナンスも効かせる、このような難しい課題に対し、ONUGでは “Policy as code” というアプローチの検討が進んでいます。このPolicy as codeは、企業がITを柔軟且つシンプルに消費(実装)していくためのガバナンス(Policy)をCodeとして明文化・形式化する取り組みです。

カンファレンスでは昨年度に発足されたPolicy as Code WGから、幾つかのアップデートがありました。「何を消費モデルに組み込む事ができるのか?」の定義から、ネットワーク・インフラチームとセキュリティーチームの双方の視点からのガバナンス定義を可能としたPolicy as codeのユースケース、Ops(運用)がAgileであり続けるためアプローチ論など、多岐に渡るトピックスが議論されていました。その詳細はブログ後編でお伝えしたいと思います。

まとめ

ONUGでは、企業におけるビジネスプラットフォームとしてのITを実現する方策として、エンタープライズ・クラウドを定義しています。その実現には、テクノロジー消費モデルとITガバナンスのバランスが重要となります。LOB:Line of Businessからの要求レベル、人材リソース、従うべき法規制、自社のITガバナンスなど、他方面を考慮しつつも最新テクノロジーを使いこなす姿が、これからの企業ITのあるべき姿となるでしょう。

ブログ後編では、弊社ネットワンシステムズのONUGコミュニティでの活動(Policy as code実態解説PoC)をご紹介します。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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