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デジタルエンタープライズのあるべき姿とは?? - ONUG 2020 Fallより

ライター:井上 勝晴
2002年にネットワンシステムズ入社後、応用技術部にてVoIP/Mobile/Telemetry等の通信キャリア様向けの技術を担当
2019年4月より、現職であるNet One Systems USA,Inc.に勤務
米国シリコンバレーに駐在し、Innovation調査と新興企業の発掘業務に従事
妻と娘(6歳)も一緒に渡米しており、家族でのベイエリア生活を奮闘しながらも楽しんでいる。家族で米国の国立公園に行くのが最大の楽しみ。

目次

本ブログは、ビジネス開発本部 先端技術戦略室 室長 村上丈文 との共同執筆です。

はじめに

 以前もこのブログでご紹介した北米のエンタープライズが集うマルチクラウド利活用に関するコミュニティであるONUGですが、この10月に、前回の5月に引き続きオンラインカンファレンスが開催されました。

 ONUG自体は、2012年の発足から一貫して企業によるハイブリッド・マルチクラウドの活用にフォーカスしていますが、最近はデジタルエンタープライズへの進化をメインテーマとしています。

 今回のカンファレンスでは、下記のようなスライドが紹介されていましたが、ONUGの目指すデジタルエンタープライズは、API Driven、Self Service、自動化、AI Readyといったキーワードで彩られており、GUI Drivenでハードウェア中心の従来型のエンタープライズと比較して、俊敏性やスケーラビリティが高い、最新テクノロジーを使いこなす組織として表現されています。

 デジタルエンタープライズのあるべき姿とは、IT部門それぞれの業務向けにツールを用意してもらい、それを使うという形ではなく、企業におけるすべてのステークホルダーがビジネスの拡大や効率化に向けてビジネスプラットフォームとしてのクラウドを積極的に使いこなす姿です。更に発展した形のデジタルエンタープライズにおいては、LoBと呼ばれる各事業部門が主導してマイクロサービス化されたアプリやサービスをリリースしていくこと期待されます。

 また、サービスの高度化や顧客満足度向上など多くの場面にAIが使われるようになります。これらの動きとの相性の良さから多くの組織がコンテナ関連技術の活用を考えています。
ONUGこういった意向をもつエンタープライズが、ハイブリッドマルチクラウドを更に活用するためのテクノロジーやプロセス、フレームワークやベストプラクティスを共有しており、今回のカンファレンスでもいくつかの興味深い取り組みが共有されていました。

With/Post COVID19のエンタープライズネットワーク

 コロナの影響から我々の働き方は大きく変わりました。多くの職種でリモートワークが採用され、Work Forceはオフィスの一点集中から従業員の自宅等へと分散化されました。それに伴い、トラッフィク傾向やセキュリティリスクも大きく変容しました。故に企業のITインフラは、この大きな変化に適応する必要に迫られています。

 日々変わる社会情勢・ビジネス状況に迅速に適応するITインフラには、柔軟性が特徴の1つである「クラウド」の活用が鍵です。ONUGは、企業がこの不透明な時代に生き残るにはMulti-Cloud/Hybrid-Cloudでのクラウド活用が必須である、とすら考えています。このMulti-Cloud/Hybrid-Cloudをセキュア且つアジリティーを持って実現する全体アーキテクチャを、ONUGは検討しています。

 下図の中央にあるNaas(Network as a Service)は、実現に向けた一つの方法論と言えるでしょう。Public/PrivateクラウドとEdge Cloudの間に位置するこのNaasは、Work Forceが分散化しセキュリティリスクも分散化した今の時代に最適とも言えるZERO TRUST + SD-WAN を実現します。

Governance as a Code

 しかし、当然ながらNaasが全てを解決する訳ではありません。現在、企業のITインフラに求められる迅速性・柔軟性は非常に高く、IT担当者は従来のパッチ充的な対応とは異なる、Multi-Cloud/Hybrid-Cloudを俯瞰するようなガバナンス再考が求められています。ONUGではこれを、"Governance as a Code"のコンセプトで捉えています。これは"Boxes to Libraries"とも呼べる変化であり、従来の管理対象であった "Box" からJenkinsやTerraformに代表されるような "Library" への移行を提案しています。

実現へのギャップとWG

 この"Governance as a Code"を実現するには未だ課題があり、そのギャップを埋めるべく、幾つかのWorking Groupが日々活動しています。ONUG Collaborativeはその1つであり、FedEx, Cigna, Raytheon Technologiesと共同で、クラウドガバナンスの自動化に向けた検討を進めています。

 このWGが特徴的なのは、クラウド事業者と利用者とで責任を共有するモデル、"shared responsibility (責任共有)" を提唱している点でしょう。時にブラックボックスとなるクラウド事業者のインフラを、WGが検討する標準化されたデータフォーマットにて状態を可視化し、"shared responsibility"を実現しようとするものです。謂わばSNMPのクラウド版を目指すものであり、この共通データを活用することで、GRC(Governance, Risk management, Compliance)とProcessが融合するクラウドガバナンス自動化の実現を目指します。

ネットワンの取り組み

 弊社ネットワンシステムズはONUGにメンバーとして参画しており、ONUG 2020 Fallでは、この"Governance as aCode" を体現するPoCを構築し、デモとして展示しました。日本では、On-PremisesとMulti Cloudが共存するHybrid-Cloudの特色が強い事を考慮し、Hybrid-Cloud環境におけるコンテナデプロイメントをコードベースで実現するVoltera社と、Edgeを含む様々な環境で品質をモニタリングするThousandEyes社のソリューションとを、弊社で作成したWorkflow Engineで統合し、アプリケーション品質に応じたITインフラの自動最適化をデモ展示しました。

まとめ

 今回展示したデモは限定的なケースでの対応であるため、これをマルチクラウド・マルチテクノロジー、特にネットワークとセキュリティの一体化運用・自動化を、今後は実現していきたいと思います。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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