- ライター:井上 勝晴
- 2002年にネットワンシステムズ入社後、応用技術部にてVoIP/Mobile/Telemetry等の通信キャリア様向けの技術を担当
2019年4月より、現職であるNet One Systems USA,Inc.に勤務
米国シリコンバレーに駐在し、Innovation調査と新興企業の発掘業務に従事
妻と娘(6歳)も一緒に渡米しており、家族でのベイエリア生活を奮闘しながらも楽しんでいる。家族で米国の国立公園に行くのが最大の楽しみ。
目次
2013年にETSI NFV ISGによりNFVの全体像を形作るGroup Specificationが公開されてから、年々「NFV」というキーワードを耳にする機会が増えてきています。
前項に続き、本稿ではネットワンシステムズが構築したNFV PoC(Proof-of-Concept)について、その詳細をご紹介したいと思います。
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ネットワンNFV PoCの構成
ネットワンシステムズではETSIで定義されたNFVモデルを基に、VNF / NFVI / NFV MANOの3コンポーネント群から成るNFV PoC (Virtual EPC)を構築しています。
各コンポーネント群は其々以下で構成しています。


以下に本NFV PoCの物理構成を説明します。
中央にあるのがOpenstack Compute Nodeに相当する物理サーバー3台であり、このサーバー上でVNFが起動し、具体的なネットワークサービス(本PoCではLTE PGW)が提供されます。 これらのCompute Nodeを管理するNodeとして、Openstack Controller Node / SDN Controllerが存在し、Compute Node上で提供される仮想インフラの管理やVNFの配置等を担当します。
各Compute Nodeより参照可能な共有ストレージとして、Storage Node(NFS)を構築しています。このStorage Node上に、ブートイメージを含むVNFの全データが格納されます。 VNFのData Trafficは、自身が収容されるCompute Nodeより外部へ疎通する際にはVXLANでカプセル化され、各Compute Node間を行き来します。また、外部ネットワーク(本PoCではMobile NetworkとInternet)へ疎通する際はVXLAN GWにてカプセル化が解かれ、其々のネットワークへと展開されます。
※VXLAN Gatewayにて、802.1q VLANタグとVXLANタグの変換が動作しています。
※外部ネットワークからVNFへ向かうTrafficはVXLAN Gatewayにてカプセル化が実行されます。

それでは次に、本NFV PoCで行った実証試験の内容について、簡単に紹介したいと思います。
実証実験の内容紹介
より良いネットワークシステムを構築するには、「可用性、運用保守性、柔軟性」をしっかりと考慮する必要があります。
NFV環境においてもこれらの要素は重要ですので、本NFV PoCを用い、「可用性、運用保守性、柔軟性」をKeywordとした幾つかの実証試験を行いました。
これから、其々の内容を簡単に説明していきたいと思います。
1) 可用性
可用性とは、システムが継続して稼働できる能力を意味します。
NFVでは汎用x86 Server上の1アプリケーションとしてネットワークサービスが動作します。このような環境にて「如何に可用性を保持する事が出来るのか?」を目的とした、実証実験を行いました。
具体的には、複数パターンのシステム障害を想定し、その障害時におけるサービス継続性と復旧方法を確認しています。
実証実験のサマリは下記でありますが、結果として、VNFレベルと仮想環境レベルの2レイヤからの冗長性が必要、との見解が導き出されています。
<可用性:実証サマリ>

<VNF障害時の動作>

<Compute Node障害時の動作>

2) 運用保守性
汎用x86 Serverで展開されるNFV環境では、ハードウェアリソース負荷の均一化や物理ノードメンテナンスと言った、従来からある物理アプライアンスベースのネットワークサービスとは異なる視点での運用保守が求められます。これらのNFV環境独自の運用保守要件に対し、OpenstackはLive Migration機能(仮想マシンの移動機能)を持っています。
今回、本NFV PoCにてOpenstack Live Migrationを実証実験し、その有用性を確認する事が出来ました。
また本実証実験にて、VNF仕様に応じたLive Migration操作が必要とされるケースもある、と言う点も合わせて判明しています。
※VNF機能に依存するが、VNFレベル冗長が組まれていない環境ではサービス停止も発生。
※Live Migrationによる仮想マシン移動は、VNF冗長Standby機を対象とする必要あり。
VNF Active機を対象とした時、VNF冗長が崩れる事があり。
<Openstack Live Migration動作>

3) 柔軟性
システムの柔軟性には複数の意味が含まれますが、1つには「環境変化に応じた自律性」として捉える事が出来ます。
NFV環境では、MANO(Management and Orchestration)が各コンポーネントと連動する事により、この「環境変化に応じた自律性」を持つシステム構築が可能となります。
今回、本NFV PoCにて、自律システム構築の実証試験をしています。
具体的には、システムに対して複数種類の負荷(環境変化)を与え、システム側が如何にその環境変化を認識し、自律的な動作が可能であるかを確認した物となります。
以下に本NFV PoCに構築した自律システムを紹介します。
3-1) CPU負荷に応じた新規VNF自動追加システム
<システム概要>

<システム構成 >

<コンポーネント >

※1: 本システムでは、VNFのCPU使用率が25%以上を60秒間継続した時、新規VNFを作成するよう規定しています。
<動作シーケンス説明>

※2: 本システムではCeilometer Alarm Actionとして、Openstack Heat内のScale Up Policy URLへREST APIでアクセスするよう規定しています。
3-2) LTEセッション数に応じたVNF自動追加
<システム概要>

<システム構成>

<コンポーネント>

※1: 本システムでは、PGWのLTEセッション数が5,000を超過した時、新規VNFを作成するよう規定しています。
<動作シーケンス説明>

※2: 本システムでは、Session ManagerがPGWのLTE Session数が5,000以上である事を検知すると、Openstack Heat内のScale Up Policy URLへREST APIでアクセスするよう規定しています。
今後の展望
本NFV PoCにて、「可用性、移動性、柔軟性」をコンセプトとした幾つかのシステム動作を確認する事が出来ました。
今後はNFV PoCフェーズ2として、「NFVIパケット転送能力」や「可視化」等をKeywordとして、本NFV PoCの拡張を予定しています。
まとめ
今回のコラムでは、「ネットワンシステムズのNFVへの取り組み」について紹介させて頂きました。
本NFV PoCはネットワンラボに常設しており、このコラムでご紹介した動作をデモでご覧頂く事も可能です。直にご覧になりたい方は是非、弊社ラボにお越し下さい。
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http://www.etsi.org/technologies-clusters/technologies/nfv
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。