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ツール選択から始める業務効率化:Power Query→Altair AI Studioへの変遷から考える「最適解」

ライター:占部 蒼馬
2021年ネットワンシステムズに新卒入社し、Cisco UCS/Intersightの製品担当として従事。
現在はデータ分析やAI活用などにも取り組んでいる。 

目次

はじめに

デジタルトランスフォーメーション(DX)やデータドリブンという言葉が浸透して久しい今、私たちの周りには数え切れないほどデータ利活用ツールが溢れています。選択肢が増えることは本来喜ばしいことですが、一方で「どのツールを、どの業務に、どう使えば良いのか」という悩みに直面することも多々あるのではないのでしょうか。

「目的を達成できるか」という点だけを見れば、ツール間に決定的な差はないかもしれません。しかし、そこに至るまでの工数や、将来的なメンテナンスのしやすさなどといった観点に目を向けると、ツール選択がもたらす影響は極めて大きなものとなります。

本記事では、弊社におけるデータ分析業務の変遷を例に挙げます。従来活用してきた「Power Query」による手法と、新たに導入した「Altair AI Studio (RapidMiner)」を活用した手法。この2つの比較を通じて、ツール選択が業務のスピードや質にどのような影響をもたらしたのかをご紹介します。

今回とりあげるツールについて

本題に入る前に、本記事でとりあげるツールについて簡単にご紹介します。

  • PowerBI:
    Microsoftが提供するBIプラットフォームで、多様なデータソースを統合し、直感的なビジュアルで分析結果を可視化します。ローカルアプリの「Power BI Desktop」でデータ処理やレポート作成を行い、それらをクラウド上で共有することで、組織全体でのリアルタイムなダッシュボード活用を実現します。

  • Power Query:
    ExcelやPower BI Desktopなどで利用できる、データ接続および変換(ETL)エンジンです。データの取り込みからクレンジングまでの各工程を「適用したステップ」として記録し、ノーコードでデータ処理プロセスを構築できます。

  • Altair AI Studio (旧RapidMiner):
    データの準備から機械学習モデルの作成までをカバーする、包括的なデータサイエンス・プラットフォームです。アイコン(オペレーター)をGUI上でつなぐ「ビジュアルワークフロー」形式で、データ処理プロセスを構築できます。 (詳細はこちら

データ分析の背景と課題

取り扱うデータと分析の目的

今回のデータ分析で扱うのは主として、「フォーキャスト(提案前)データ」と「売上(受注)データ」です。

これらのデータをもとに、弊社が展開している「推奨ソリューションパッケージ」が実際の案件にどの程度適用されているかを分析しています。お客様にどのパッケージが価値を提供できているのか、その傾向を可視化することは今後の提案をより最適なものにするための重要な指標となります。

分析結果は、以下のようなダッシュボードで社内展開されています。

ダッシュボードサンプル(※数値はすべてダミー)

従来のPower Queryによるデータ処理の課題

これまでは、可視化を担うPowerBI内でPower Queryを用い、直接データ加工まで行っていました。試行的に運用を始めていたこともあり、担当者がひとまず動かせるようにと作成した環境を、そのまま利用していました。そのため扱うデータ量と可視化対象が増すにつれ、以下のような課題が顕在化してきました。

  • メンテナンス性の低下:
    複雑な判定ロジックが、Power Query上での膨大なIf文のネストや複雑なクエリのステップとして積み重なり、新規パッケージの判定ルールを追加する際の手間が限界に達していました。

  • リソース不足による動作の不安定さ:
    扱うデータ量が増え、処理が複雑になるほどローカルPCへの負荷が深刻な課題となっていました。Power BI Desktopでの処理が大量にリソースを消費し、アプリケーションが応答なしになったり、強制終了(クラッシュ)したりする問題が頻発していました。加工が終わるまでPCの動作が極端に重くなり、他の業務が一切手につかなくなるなど、影響を無視できない状況でした。

  • 分析サイクルの停滞:
    「新しい切り口でデータを見たい」と思っても、Power Queryの既存ステップから、一部のロジックを作り変えてテストするということが困難でした。また、加工内容の変更が少しであってもデータの再読み込みにかかる時間は非常に長く、思いついたアイデアをすぐに形にするというのも難しい状況でした。

Altair AI Studioへの移行

前述の課題を解決するために、数ある選択肢の中からデータ処理を行うアプリケーションとしてAltair AI Studio(以降、AI Studioと記載)を選定しました。その主な理由は以下の通りです。

  • 複雑な判定ロジックにシンプルに対応可能
    「推奨ソリューションパッケージ」の判定には、型番の組み合わせや除外条件などの複雑なルールが絡み合います。これまでのクエリステップでは管理の限界が見えていたこの工程を、AI Studioの「オペレーター」を活用することで、処理の流れを整理し、視覚的に分かりやすい形で実装できると判断しました。
  • 整備された社内環境と導入コストの低さ
    機密性の高いデータを扱う以上、セキュリティの担保された環境で作業を行うことが不可欠です。既にAI Studioの社内利用が認められており、ライセンス等の利用環境も整っていたことは大きな決め手となりました。また、実務担当者に過去の利用経験があったことも、学習コストを抑え、早期に成果を出すための重要な要因となりました。
  • PCリソースを占有しない安定した動作
    移行に向けた作業に踏み切る前の事前動作検証において、PCに過度な負荷をかけることなく大量のデータを安定して処理できるのかを確認しました。これにより、従来の大きな問題点であった「データ加工中にPCが重くなり、他の業務が止まってしまう」という問題を解消できる見通しが立ったことも選定を後押ししました。

データ加工プロセスの最適化(役割の分担)

今回の改善における最大のポイントは、「可視化(PowerBI)」と「データ加工(AI Studio)」の役割を明確に分けたことにあります。

従来のフロー:PowerBIでほとんどの処理を実行していた

現在のフロー:AI Studioでデータを作り、PowerBIで可視化

このフローの変化が、以下の成果をもたらしました。

  • データ処理時間の削減
    これまではPowerBIで「データの整形・加工・可視化」をすべて行っており、3〜5時間の待ち時間が発生していました。しかし現在は、AI Studioで加工した「データ」をExcelファイルとして書き出し、PowerBIはそれを読み込んで表示するだけに専念させています。この役割分担により、PowerBI側の動作が大幅に軽量化し、さらにAI Studioの高速なデータ処理によって、全工程が20分(90%削減)に短縮されました。
  • ビジュアルワークフローによる工程の可視化
    「データの整形」「各データの加工」「条件による判定」といった各工程がアイコンでつながる形で可視化されます。これにより、Power Queryのステップを一つずつ追いかけるよりも直感的に処理の流れを把握できるようになりました。

AI Studioの加工フロー抜粋

ぼかし処理をしていますが、どのような処理を行っているかの説明文をモジュールごとに記載しています。

  • 加工後データの活用(再利用性の向上)
    Excel形式で出力する直前のデータを AI Studioで保持しておくことで、加工後のデータを使った新しい分析に即座にとりかかることができるようになりました。また、作成される中間データは他のプロジェクトで流用することもでき、これまで追加で発生していた Power Queryの処理を削ることもできています。

新たに作成したダッシュボード(※名称や数値はすべてダミー)

ツール選択における「最適解」

今回はAI Studioを採用しましたが、これが必ずしも正解というわけではありません。データの規模や機密性、あるいはメンバーのスキルセットによっては、PythonやSQL、あるいは生成AIを活用する方が適しているケースも当然あります。

特に生成AIについては、生データから加工のヒントを得たり、プロトタイプを素早く作ったりする上で強力な選択肢になります。ただし、そこには常に「セキュリティ」と「コスト」という判断要素がつきものです。機密データを守るためにオンプレミス環境での活用を検討するのか、あるいは利便性を優先してクラウドサービスを利用するのか。このような点を踏まえて、なにが「最適解」となるのかを検討していく必要があります。

まとめ

本記事では、Power QueryからAltair AI Studioへの移行事例を通じて、適切なツール選択がどのように業務効率化に寄与するのかをご紹介しました。

「この業務において、今使っているこのツールは本当に最適か?」
こうした疑問からツールの棚卸しを始めることも、業務改善の第一歩となり得ます。

弊社では、推奨ソリューションパッケージの提供に加え、データ分析や生成AI活用、あるいはオンプレミスAI基盤の構築まで多岐にわたってご支援することが可能です。もし何かございましたら、弊社担当営業までご連絡ください。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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