オフィス2Dマップのプロトタイプに在席検知センサーデータを導入。Wi-Fi測位では困難だった特定席の空き状況をリアルタイムで可視化し、社員の移動負担を軽減しました。収集データに基づき、ハイブリッドワークにおける効率的なオフィス運用と生産性向上をテクノロジーで実現します。
目次
1. はじめに:進化を続ける「オフィス2Dマップ」プロジェクト
弊社イノベーションセンター「netone valley」では、データドリブンエンタープライズの実現に向け、働く場の課題をテクノロジーで解決する「オフィス2Dマップ」のプロトタイプ開発を進めています。
これまではCisco Spacesが提供するWi-Fi位置情報を活用し、フロア全体の人の集まり具合をマクロな視点で可視化することに取り組んでまいりました。しかし、ハイブリッドワークが定着するにつれて、現場からは「特定の席が現在空いているか」といった、よりミクロな情報を知りたいという要望が寄せられるようになりました。
今回は、この課題を解決するために導入した「在席検知センサー」の実装プロセスと、プロジェクトを通じて得られたリアルな知見を共有します。
「オフィス2Dマップ」のプロトタイプ開発プロジェクトについてはこちらの記事をご参照ください。:ハイブリッドワークにおけるデータドリブンな働き方の実践 | ネットワンシステムズ
2. 今回の課題:すぐ埋まる「人気のモニター席」をどう探すか?
ハイブリッドワークが浸透する中、オフィスに出社した社員に特に人気なのが、モニターを完備した「個別ブース席」です。「今日は集中して作業を片付けたい」というニーズは高く、常に高い利用率を誇っています。
しかし、その人気の裏で、利用者には以下のような「小さな、でも確実なストレス」が生じていました。
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行ってみないと空いているかわからない不安: 既存のマップではエリア全体の混雑度はわかっても、「特定のこのブース席」が今空いているかどうかまでは判別できなかった。
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無駄な移動の発生: 空席を探してオフィス内を歩き回る時間が、社員の生産性を下げていた。
これらの課題を解消するため、私たちはセンサーを活用し、特定の1席単位で「今の状況」をデジタル化する仕組みを導入しました。席に着いた・離れたという動きを判定することで、「行ってみたのに埋まっていた」というガッカリ体験をなくす取り組みを進めました。
図1.個別ブース席を探している社員のイラスト
3. ソリューション:なぜ独立型「在席検知センサー」を選定したのか
今回のアップデートでは、ブース席に特化した独立型の在席検知センサーと、データを集約するIoT Gatewayを新たに設置しました。
「特定の席の利用状況を知る」手法はいくつか選択肢があります。その中で、私たちが既存のWi-Fi位置情報に加えて、あえて独立型のセンサーを追加したのには明確な理由があります。
Cisco SpacesによるWi-Fi測位は非常に優秀ですが、デバイスの接続情報をベースにするため、どうしても数メートルの誤差が生じます。広いオープンスペースの混雑度を把握するには最適ですが、隣り合う1名用ブースが並ぶエリアで、「Aブースにいるのか、隣のBブースにいるのか」を確実に切り分けるには精度が不十分でした。
今回の在席検知センサーは、1名用の狭いブース内でも座っているだけで確実に「在席」を維持できるため採用しました。私たちが重視したのは、「集中して動かない社員を、いかに正確に『利用中』と判定し続けるか」という点です。ブース席の特性(集中作業)に合わせ、以下の在席検知センサーを選定しました。
図2.netone valley 5F floor map
図3.Net One オフィスマップと在席検知センサー「CPD-J(WH)」
つまり、従来のWi-Fi位置情報(Cisco Spaces)では難しかった「特定の1席」の利用判定が、このセンサー導入によって精度高く実現可能となりました。
4. IoT Gatewayとデータパイプラインの構築
センサーを設置して終わりではありません。収集したデータを既存の2Dマップに追加するため、以下のようなデータアーキテクチャを構築しました。
設計段階で最も大事な点は、センサーからIoT Gatewayへの無線伝送距離の確保です。 今回の在席検知センサーのRF送信距離は実効値で約25m(公式サイト基準)です。そこで、イノベーションセンター5Fのフロア形状と障害物を考慮し、「ブース席よりのフロアのほぼ中央」にGatewayを配置しました。これにより、対象エリアのセンサーデータを1台のGatewayでカバーすることに成功しました。
図4.データアーキテクチャ
データは以下の経路を辿り、オフィスからテクニカルセンター、そしてクラウドへと流れます。
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イノベーションセンター(オフィス): 在席検知センサーが着席を検知すると、無線プロトコルを介してIoT Gatewayへデータを送信します。
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IoT Gateway: センサーデータを集約し、MQTT形式に変換してテクニカルセンターへ転送します。
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テクニカルセンター: MQTTサーバー(Broker)がデータを受信します。
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データ処理層(Confluent): Confluent (Data Pipeline) を介して、大量のセンサーデータをリアルタイムにストリーム処理します。データの欠損を防ぎながら、スケーラビリティを確保します。
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フロントエンド: 処理された最新のステータスが、オフィス2Dマップアプリに反映されます。
各技術要素のまとめ
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技術要素 |
特徴・役割 |
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在席検知センサー |
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IoT Gateway |
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5. 期待される効果・今後の展望
このアップデートにより、社員は自席や移動中にスマートフォンから「今、モニター付きブースが空いているか」を瞬時に確認できるようになります。
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無駄な移動の削減: 空席があることを確認してから移動できるため、業務の断絶を防ぎます。
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利用データの蓄積: どのブースが、どの時間帯に、どのくらいの時間使われているかを定量化し、将来の什器選定やレイアウト変更の強力なエビデンスにします。
現在は在席検知センサーを人気のブース席から導入していますが、今後はフロアのフリーアドレス席への追加設置を予定しています。
「オフィス2Dマップ」を通じて、オフィス運用のさらなる効率化と、より良い働き方の実現を目指しています。今後も現場のフィードバックを積極的に取り入れながら、順次他のエリアへの拡大やさらなるセンサーによる機能拡張を進めていく予定です。
6. おわりに
今回ご紹介した「オフィス2Dマップ」と在席検知センサーの取り組みは、単なる利便性の向上に留まるものではありません。私たちの真の目的は、現実空間とデジタルを自然に融合させることで、現場の判断と創造を10倍高速化させることにあります。今やIoT技術は導入して当たり前のフェーズに入っています。だからこそ、ネットワンシステムズはカスタマーゼロとして自ら実践を繰り返し、技術によって「何を、どう解決するのか」という本質的な問いに向き合い続けています。私たちはこれからも、自らの実践から得た生きた知見をベースに、お客様と共にビジネスの創造を加速させるパートナーであり続けます。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

