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AI活用を「効率化」で終わらせない。WakuWaku-AI Projectが目指す"感動から始まる"文化づくり

ライター:篠岡 祐太
2018年入社。マルチベンダー環境でのネットワーク保守・障害解析に4年間従事。 2022年より放送IP化プロジェクトやGitLabを活用したDevSecOpsの推進を経験。 現在は、AIデータ利活用の効率化を目指し、Kubernetesを利用したデータ分析基盤の開発に注力。 現場での運用経験に基づいた、実践的なインフラ技術の活用を得意としています。

目次

はじめに ― WakuWaku-AI Project の想いとビジョン

イノベーション推進部では、生成AIを“業務の効率化だけの道具”として扱うのではなく、ワクワク(感動や驚き)を起点に新しい文化をつくる仕掛けとして捉えています。
その象徴が WakuWaku-AI Project です。

私たちはまず、社内AIプラットフォーム nelmo を最も深く使いこなす「ファーストユーザー」となることを目指し、得られた知見を部門内外へ展開していくことを志しました。

この記事では、初期フェーズで整備したStarter Kit、導入ガイドライン、わくわく検証レポートという3つの成果物と、その制作過程で得られた“学びと気づき”を紹介します。
効果測定はこれから本格化しますが、この“準備段階”だけでも多くの価値が見えてきました。

背景 ― なぜ今、AI活用モデルをつくるのか?

企業における生成AI活用は今、「触ってみる段階」から“業務のどこに、どう適用するか” を模索するフェーズへ移り始めています。

Net One Systems が運営する NET ONE BLOG でも、生成AIや働き方に関する記事が継続的に扱われており、AI活用はDXの重要テーマとして位置付けられています。

しかし、AI活用はツールの導入だけで自動的に広がるものではありません。
実際には、次のような課題が立ちはだかります。

  • どの業務に使えばいいのか判断できない

  • 安全な使い方が分からず不安になる

  • AIに対して「難しそう」「怖い」という感情的な抵抗がある

  • 部門としての文化が整わず、個人の努力に依存してしまう

こうした“土台不足”こそが、AI活用の大きな障壁になります。
だからこそ私たちは、イノベーション推進部を舞台にAI導入の標準モデルをつくること を決めました。

プロジェクトの目的とゴール

WakuWaku-AI Project は、イノベーション推進部という“実験の場”を起点に、AI活用による生産性向上と、より創造的な業務へのシフトを実現すること を目的としています。

同時に、私たちの取り組みを単発で終わらせるのではなく、全社・顧客へ展開可能な導入モデル(ベストプラクティス)として体系化するという点も、プロジェクトの重要な柱です。

この大きな目的に向かうため、初期フェーズでは次の3つの基盤づくりに集中しました。

  • AIを“迷わず触れる”状態をつくるスターターキット

  • 業務にAIを適用するための道筋を示す導入ガイドライン

  • 試行プロセスを可視化し知見を蓄積するわくわく検証レポート

「処理時間50%改善」「エラー率50%削減」といったKPIも掲げていますが、今はちょうどこの土台が整い、ここから効果測定フェーズに進む段階です。

なぜ“最初の一歩を支える仕組み”が必要だったのか― 全国的に広がる “AIデバイド(AI格差)” が背景にある

プロジェクトを進める中で感じたのは、AIを使える人とそうでない人の間に、確実に格差が生まれつつある という事実です。

総務省の情報通信白書では、個人の生成AI利用実態について

  • 利用者は全体の一部にとどまること

  • AIを使わない理由として「必要性を感じない」「使い方が分からない」などが多いこと

  • 年齢・リテラシー・職業などによって利用率に差があること

が示されています(表現は白書を参考に要旨化)。

これは私たちの部門でも同様で、「何となく怖い」「どう使えばいいのか分からない」という心理的ハードルが、AI活用の一番の壁になっていました。

だからこそ、AI活用を広げるには“最初の一歩の格差”をなくす仕組み が不可欠でした。スターターキットと導入ガイドラインは、そのための基盤です。

3つの成果物をつくったことで見えてきた“気づき”

3つの成果物(スターターキット、導入ガイドライン、わくわく検証レポート)を整備する過程で、私たちは「なぜAI活用は簡単に広がらないのか」という根本的な問いに、少しずつ答えを見いだしていきました。
成果物そのものよりも、むしろ “それらを作るプロセスで得た洞察” に価値があると感じています。

気づき①:AI活用の最大のボトルネックは「心理的不安」である

AIを触ったことがない人ほど、「間違えたらどうしよう」「情報漏洩が怖い」「自分だけ使いこなせないのでは」という不安を抱えます。
これは、総務省の情報通信白書でも「使い方がわからない」「必要性を感じない」が生成AI非利用理由として多く挙げられており、
社会全体でも“心理的不安”や“理解不足”が障壁になっていることが分かっています。

この背景を踏まえ、スターターキットでは、5分で理解できる基礎解説、AIにそのまま投げられるサンプルプロンプト、安全に使うための判断基準、nelmoとCopilotの違い、迷ったときの相談先などをまとめ、「まずは一歩踏み出せる状態」を実現することに集中しました。

その結果、スターターキットを読むだけで、「AIとは何かを説明できる」「nelmo/Copilotを自分の業務で最低1回使える」「やって良いこと・ダメなことの線引きが分かる」「困った時にどこへ相談すればよいか分かる」という “AI活用のスタートライン” に立てる構成になりました。

気づき②:“業務につなげること”は想像以上に難しい

AIに触れることができるようになっても、次の壁は「結局どの業務で使えばいいのか」という迷いです。
情報通信白書でも、AIを使わない理由として「必要性を感じない」「使う場面がイメージできない」が多く指摘されており、この課題は全国的にも共通していることが分かります。

そこで導入ガイドラインでは、AIを業務に取り入れるための流れを“ロードマップ”として整理し、nelmo と Copilot の得意・不得意、プロンプト作成の基本型、業務への適用順序、安全に業務へ組み込むためのチェックポイントを体系化しました。

ガイドラインの狙いは、AIに少し触れた人が「次にどうすれば業務適用へ進めるか」を迷わず理解できるようにすることです。

気づき③:成功より“失敗の共有”が文化をつくる

AI活用が広がるためには、成功例よりも「やってみた・失敗した」という生の記録のほうが効果的であることが分かってきました。
AIは時に予想外の回答をすることもあり、こうした失敗をチームで確認し合うことが、むしろ“やっても大丈夫”という心理的安全性につながります。

わくわく検証レポートは、成功・失敗を区別せず、実験の記録をそのまま公開する方針としています。
その姿勢自体が、「挑戦が歓迎される文化」をつくる仕組みだと感じています。

【コラム】実はスターターキットもガイドラインも “AIと一緒に作りました”

スターターキットもガイドラインも、実は“AIと共に作った成果物”です。
AI初心者向けのラーニングパスをAIに考えてもらい、プロジェクト計画書を渡すことでスターターキットの章構成を生成し、
その骨子を元に本文のたたき台をAIに書かせる――という形で、実際の制作プロセスはAI主導でした。
私たち人間が行ったのは、その内容をレビューし、コンセプトに合わせて修正することが中心です。

さらに、「AIの面白さそのものも届けたい」という思いから、AIあるあるを紹介する四コマ漫画にも挑戦しました。

AIにキャラクター設定を考えさせ、セリフを生成し、画像も生成AIで作成する。

もちろん途中で“登場人物の顔が突然変わる”といったAIならではのズレも多く発生しましたが、これらの試行錯誤はそのまま わくわく検証レポートの材料 になりました。

加えて、この制作プロセスで得た気づき――
「AIは0→1の素案づくりに最適」「人間は判断と最終仕上げに集中すべき」「AIの失敗は学びの宝庫」
といった視点は、そのまま 導入ガイドラインの重要要素 となっています。

つまり、成果物を作る過程そのものがレポートになり、そのレポートの学びがガイドラインになっている。
これこそ、私たちが目指した「AIと人が共創しながら学びを循環させるモデル」だと感じています。

これから ― 効果測定フェーズへ

今後は、

  • 実データでの検証

  • ガイドラインのアップデート

  • スターターキットの改善

  • 検証レポートの継続公開

  • 他部門への横展開

を進めていきます。

“ワクワクするAI活用モデル”を社内に根付かせ、ゆくゆくは社外にも共有できる形に成熟させていきたいと考えています。

おわりに ― 成果がまだない今だからこそ、語れる価値がある

WakuWaku-AI Project は、まだ始まったばかりです。
この短期間で、部門の空気には確かな変化が生まれました。

「AI、ちょっと使ってみようかな」

そんな“最初の芽”こそが、未来の大きな変化につながると信じています。

なお、このブログ記事も約8割がAIとの共作で生まれました。
ワクワクを原動力に、私たちはこれからも AI と共に働く未来づくりに挑み続けていきます。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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