- ライター:新谷 裕太
- 2019年新卒入社後、Cisco Systems社製エンタープライズ向けスイッチであるCatalystを主として可視化商材のFlowmonなどの検証・評価に従事。
現在はCisco Catalyst Centerの製品担当やプログラミングによる社内業務の効率化・自動化などもおこなっている。
目次
はじめに
シスコシステムズは2025年6月、Secure Network Architecture の発表とあわせて、新たなスイッチ製品群として Smart Switch Series を公表しました。
(参考:Cisco公式発表
https://newsroom.cisco.com/c/r/newsroom/en/us/a/y2025/m06/cisco-unveils-secure-network-architecture-to-accelerate-workplace-ai-transformation.html)
Smart Switch Series には、キャンパスアクセス向けの C9350、およびキャンパスコア/ディストリビューションを想定した C9610 がラインアップされています。
弊社におきましても、旧来より実施してきたネットワーク機器の検証・評価業務の一環として、本シリーズのうち C9350 を評価機材として確保し、商品・サービス開発に向けた検証を進めています。
本記事では、実際に確保した C9350 をもとに、従来の主力モデルである Catalyst 9300(以下、C9300) と比較しながら、その変更点や特徴について紹介します。
比較対象としては、現時点での C9350 の最上位モデルである C9350-48HX と、同ポート構成の C9300-48T を使用します。
筐体外観とハードウェア構成の変化
まず、C9350-48HX と C9300-48T の筐体外観およびハードウェア構成について、実機を確認した範囲での違いを整理します。
両機種はいずれも「C93」で始まる型番ではありますが、C9300 が Catalyst Switch シリーズであるのに対し、C9350 は Smart Switch Series に属しており、シリーズとしては別系統の製品となります。
C9350-48HX 全体を確認すると、C9300-48T と比較して筐体の奥行が長くなっていることが分かります。
データシート上でも、C9300-48T が 16.1インチであるのに対し、C9350-48HX は 18.6インチ と、物理的にサイズが拡大していることが確認できます。
C9350-48HX を上部から確認すると、筐体左上の一部が矩形状に切り取られたような形状となっていることが分かります。一方で、C9300-48T では同様の形状は確認できませんでした。
この筐体形状の違いは、C9350 において 電源モジュールの最大搭載数が 3 基構成となった点と関係している可能性があります。
従来の C9300 シリーズでは最大 2 基構成であった電源設計が見直され、より高い電力供給を前提とした構成へと進化していることが伺えます。
近年では、Wi-Fi 7 アクセスポイントの普及や高消費電力の PoE デバイス増加が見込まれており、こうした電源要件の変化を見据えた結果として、筐体レベルで電源設計に重きを置いた変更が行われたものと推察されます。


C9350-48HX では、筐体固定用のネジとして スター型(トルクス)ネジ が採用されていることが確認できました。一方、C9300-48T では一般的なプラスネジが使用されています。
トルクスネジの採用は、保守作業時のトルク管理や作業安定性の向上、意図しない分解の抑止などを目的として用いられるケースが多く、ネットワーク機器においても近年増えてきています。
本変更自体が機能面に直接影響するものではありませんが、製品設計や製造・保守プロセスの見直しが行われていることを示す一例と言えます。
本記事では詳細な評価までは行いませんが、筐体レベルでのこうした変更も、C9350 が新世代の製品として設計されていることを示す要素の一つと感じられます。


天板を取り外し内部基板を確認すると、C9350 と C9300 ではヒートシンクの配置に違いが見られます。
一般に、高発熱となる主要コンポーネントの周辺には、効率的な冷却を目的としてヒートシンクが配置されますが、C9350 では基板右側付近に大型ヒートシンクがまとめて配置されている点が特徴的です。C9300 では複数のヒートシンクが分散して配置されているのに対し、冷却設計の考え方が異なっている印象を受けます。
C9350 では Silicon One ASIC が採用されており、C9300 に搭載されている UADP 2.0 ASIC とはアーキテクチャが異なります。
こうした ASIC 世代の違いが、ヒートシンク配置を含む基板構成や冷却設計の差に影響している可能性があると推測しています。
また、物理ポートとヒートシンクの間には、黄色の配線をまとめたものが 6 本確認できました。Cisco Live などで公開されている資料によれば、C9350 では Silicon One ASIC を 2 基搭載し、物理ポートを 8 ポート単位で分割したユニットを、各 ASIC に 3 ユニットずつ接続する構成が採用されています。今回確認した配線構成は、こうした公開情報と一致しておりC9300よりもわかりやすくなっているように思います。
本記事の執筆者はハードウェア設計の専門家ではないため、詳細な設計意図や内部仕様までを判断することはできませんが、外観および基板レベルの確認からも、ASIC 世代の変更に伴い、C9350 が従来の C9300 シリーズとは異なる設計思想で構成されていることは明確に感じられます。


次世代ネットワークセキュリティを見据えた機能強化
C9350 では、従来の Catalyst 9300 シリーズと比較して、セキュリティ機能の強化が明確に打ち出されています。
その代表的な例が、PQC(Post-Quantum Cryptography:耐量子暗号)への対応や、Cisco Live Protect といった機能です。
PQC は、将来的に実用化が進むとされる量子コンピュータによる暗号解読リスクを見据えた暗号方式であり、現時点での即時的な必要性というよりも、将来に向けた備えとして位置付けられる技術です。
C9350 では、こうした将来リスクを考慮したセキュリティ技術が、製品設計の段階から組み込まれています。特にPQCに関しては現時点ではEN市場で未対応のものが多く先進的といえます。
Live Protect は、稼働中のネットワーク機器に対してもセキュリティ対策を継続的に適用することを目的とした機能で、これまでは主にNexusなどデータセンター向け製品で実装されてきました。
従来は、ソフトウェアアップデートやセキュリティ対策の適用に際して、計画停止や影響範囲の調整が必要となるケースも多く、運用面での負担が課題となっていました。
C9350 では、こうした運用上の課題を軽減し、止めずに守ることを意識した機能強化が図られています。
これにより、ネットワークの可用性を維持しながら、継続的なセキュリティ対策を実施しやすい設計となっています。
まとめ
本記事では、新たなシリーズである C9350 について、従来モデルである C9300 との比較を交えながら、その特徴や変更点を紹介しました。
C9350 は、単純な C9300 からのリプレースを目的とした製品というよりも、将来的なセキュリティリスクや運用面での課題を見据えたリプレース先として位置付けられる製品です。
また、同等構成で比較した場合、C9350 は C9300 よりも価格面で有利となることが確認されています。
セキュリティ機能や将来性を強化しながら、スループットやコスト面でもメリットが得られる点は、導入検討において大きな判断材料となります。
なお、キャンパスコア/ディストリビューション向けとしてラインアップされている C9610 についても、今後評価機材を確保し次第、引き続き差分や所感をまとめていく予定です。
本記事の内容についてご興味をお持ちのお客様は是非ともお気軽に弊社担当にご連絡いただけますと幸いです。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。