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社内向け生成AIアプリ「nelmo」誕生から成長まで Part 1

ネットワンシステムズでは2023年度から社内で生成AI活用を推し進めてきました。本格的に生成AIを活用するための基盤「nelmo」の開発をしました。本記事ではnelmoの機能概要について説明、社内での利用状況に関するデータ、考察をご紹介します。

目次

はじめに

ネットワンシステムズでは自社のAI&データ利活用システムをまとめてNELMOプロジェクトと称し、開発を進めております。

NELMOリリース プレスリリース記事
https://www.netone.co.jp/news/release/20240802_01.html

プレスリリース記事では社内技術Q&A支援機能としてDatabricksとServiceNOWを利用したVirtualAgentシステムを紹介させていただきました。

本記事では、単なるAIチャットツールとして産声を上げ、今や全社のDXを推進するAIアプリケーションプラットフォームへと成長を遂げた「nelmo(ネルモ)」の誕生から現在までの軌跡を、計3回にわたってご紹介します。Part 1では、その誕生の背景とコンセプトの進化に焦点を当てます。

nelmo開発の経緯

2023年、生成AI「ChatGPT」の登場は、世界に衝撃を与えると同時に、私たちネットワンシステムズ社内にも大きな衝撃をもたらしました。エンジニア部門ではその圧倒的な可能性に期待をしつつ、このテクノロジーを活用しないと今後通用しなくなると感じました。

一方で、AIを自社導入するにあたって方針検討で意見が割れることになりました。つまり、多くの企業が直面したであろう「利便性」と「リスク」のトレードオフです。便利だからと個人で利用すれば、入力した情報が意図せず外部で学習に使われ、情報漏洩に繋がるかもしれない。かといって、利用を全面的に禁止すれば、イノベーションの芽を摘み、隠れて利用する「シャドーIT」を助長するだけです。

このジレンマを解消し、全社員が生成AIの恩恵を安全に享受できる環境を作るにはどうすればよいか。私たちが下した決断は、自らの手でAI活用システムを創り上げることでした。

「すべてのSEに安全なAI活用環境を」から始まった - 開発前夜

ChatGPTが登場して間もなく、社内からは「業務で使いたい」という声が日増しに高まっていきました。しかし、当時のパブリックな生成AIサービスは、法人利用におけるセキュリティポリシーやデータプライバシーの観点で、我々の基準を満たすものではありませんでした。

「禁止」は簡単です。しかし、それは思考の停止であり、企業の成長を阻害する選択肢でしかありません。私たちは、社員の知的好奇心と成長意欲を尊重し、同時に企業の情報資産を断固として守る必要がありました。この「守りながら攻める」という難題を解決する唯一の道が、セキュアな環境で利用できる自社専用のAI活用システムを内製することだったのです。

市販のサービスを導入する、あるいは外部のコンサルタントに開発を依頼するという選択肢もありました。しかし、私たちは敢えて「OSS(オープンソースソフトウェア)ベースの内製開発」という、最も挑戦的な道を選びます。その理由は3つありました。

  • 圧倒的なスピード感
    生成AIの世界は、まさに日進月歩。昨日まで最新だった技術が、翌日にはもう古いものになることも珍しくありません。外部のサービスでは、この進化のスピードに追従するのは困難です。内製であれば、最新の論文で発表されたような技術や新しいOSSを、即座に検証し、システムに組み込むことができます。
  • 完全なカスタマイズ性
    自社の複雑な業務プロセスや、厳格なセキュリティ要件に完璧にフィットさせるには、内製による自由な設計が不可欠でした。自分たちの手で作り上げるからこそ、かゆいところに手が届く、真に「使える」システムが実現できると考えたのです。
  • 未来への投資としての技術力蓄積
    これからの時代、AIを使いこなすだけでなく、作りこなす技術力そのものが企業の競争力になります。内製開発のプロセスで得られる知見やノウハウは、目先の課題解決に留まらない、未来のネットワンシステムズを支える技術的資産になると確信していました。

こうして、「全社員を情報漏洩のリスクから守り、誰もが安全にAIの力を引き出せる環境を提供する」という強い想いのもと、プロジェクトは静かに、しかし熱く始動したのです。

このプロジェクト名は、開発有志メンバー内での公募によって決まりました。中でも「NEtone Large language MOdel」の頭文字をとった「nelmo(ネルモ)」の響きが社名「netone」と近しいこともあり、メンバーの総意で採択されたのです

ファーストステップから大きな飛躍へ - 「AI市民開発」という答え

プロジェクトがスタートし、最初に私たちがリリースしたのは、Microsoft Azure OpenAI Serviceをバックエンドで利用した、シンプルなAIチャット機能でした。まずは何よりも、全社員に「安全なAI利用の箱」を提供することが最優先でした。

この初期バージョンのnelmoは、狙い通り多くの社員に利用され、文章の要約や翻訳、アイデア出しといった定型的なタスクにおいて、絶大な効果を発揮しました。しかし、利用が広がるにつれて、私たちは新たな壁に突き当たります。それは、「AIの活用が、一部のITリテラシーの高い社員や、汎用的な業務に限定されてしまう」という課題でした。

現場の業務は、もっと複雑で、専門的です。営業部門には営業の、保守部門には保守の、経理部門には経理の、それぞれに特化した「ドメイン知識」が存在します。その深い業務知識とAIを掛け合わせなければ、本当の意味での業務DXは実現できません。

「どうすれば、AIを現場業務の奥深くまで浸透させられるのか?」

この問いに対する私たちの答えが、nelmoのコンセプトを大きく飛躍させることになります。それが、「AI市民開発の推進」でした。IT部門がトップダウンで各部門のAIツールを開発するには限界があります。ならば、発想を転換し、「現場の業務を最もよく知る社員自身が、ノーコードで簡単にAIアプリケーションを作れるようにすればよい」と考えたのです。

このコンセプトのもと、nelmoは単なるAIチャットツールから、誰もがAI業務フローやAI Agentを作成できる「AIアプリケーションプラットフォーム」へと進化を遂げました。GUIベースで直感的にプロンプトを組み合わせたり、特定の社内データをAIに参照させたり、定型的な報告書を自動生成するAgentを組み立てたりといったことが、プログラミング知識なしで行えるようになったのです。

この「AI市民開発」は、早速素晴らしい成果を生み出しました。

保守部門のメンバーが自ら開発した「XOBOT」は、まさにAI市民開発の象徴的な事例です。保守業務に特化した問い合わせに対し、関連するマニュアルや過去の対応履歴をAIが瞬時に検索・要約して回答を提示するこのチャットボットは、担当者の自己解決率を劇的に向上させ、業務効率化に大きく貢献しています。

専門知識を持つ保守担当者自身が、自分たちの課題を解決するためにAIアプリを創り上げたのです。これこそ、私たちが目指したボトムアップ型のDXの姿でした。

なぜ「OSSベースの内製」にこだわるのか - nelmoの心臓部

nelmoの進化を支えるもう一つの柱が、開発当初から貫いてきた「OSSベースの内製システム」というコンセプトです。このこだわりが、なぜ重要だったのか。それは、単なるコスト削減のためだけではありません。

OSSを活用することで、私たちは特定ベンダーの製品や仕様に縛られることなく、世の中に存在する最高の技術を自由に組み合わせ、nelmoという一つの生命体を進化させ続けることができます。話題の最新LLM(大規模言語モデル)や画期的なAIライブラリが登場すれば、すぐにそれを取り込み、性能を検証し、利用者へ最先端のAI体験として提供する。このサイクルを高速で回せることこそ、内製開発の最大の強みです。

もちろん、その道は平坦ではありませんでした。無数のOSSの中から最適なものを選び抜く技術選定の難しさ。異なるコンポーネントを安定して連携させるための運用ノウハウ。そして、OSSの脆弱性に常時目を光らせ、迅速なセキュリティパッチを適用し続ける責任。そこには、市販のサービスを導入するだけでは決して得られない、生々しい苦労と学びがありました。

しかし、この挑戦の過程で蓄積された知見と経験こそが、今やネットワンシステムズの揺るぎない技術的競争力となっています。私たちは、AIを「使う」だけでなく「創る」ことで、AIネイティブカンパニーへの道を力強く歩んでいるのです。

nelmoが拓く未来 - 「AIデジタルワークスペース」構想へ

安全なAIチャットツールとして始まったnelmoは、AI市民開発を推進するアプリケーションプラットフォームへと進化しました。しかし、私たちの挑戦はまだ終わりません。nelmoが見据えるのは、さらにその先にある「AIデジタルワークスペース」という未来です。

現状のnelmoは、特定の業務をAIアプリ化する「部分的なAI業務化」に留まっています。私たちが目指すのは、提案フェーズから設計・開発、そして運用保守に至るまで、ビジネスのあらゆる活動がnelmoという一つのワークスペース上で完結し、AIがごく自然に人間の業務をアシストしてくれる世界です。

例えば、営業担当者が提案書を作成しようとすれば、AIが過去の類似案件や関連資料を瞬時に提示する。エンジニアがネットワークを設計すれば、AIが構成のレビューや潜在的なリスクを指摘してくれる。障害が発生すれば、AIがログを解析し、一次切り分けを自動で行う。

AIはもはや特別な「ツール」ではなく、優秀な「アシスタント」や「同僚」として、常に私たちの傍らにいる。そんな未来を実現するための統合的な基盤こそが、「AIデジタルワークスペース」構想です。

nelmoの挑戦は、まだ始まったばかりです。これは、ネットワンシステムズという一つの企業におけるAI活用の物語ですが、私たちはこの軌跡が、同じようにAI活用に挑む多くの企業の皆様にとって、一つのモデルケースとなり得ると信じています。

Part 2では、nelmoで実装した機能の詳細についてご紹介します。ご期待ください。

また、nelmoの開発に関する詳細な説明会なども実施しております。本記事下部のお問合せボタンから『nelmo開発プロジェクトに関する説明会を実施してほしい』とご依頼ください。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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