
少子高齢化や労働力不足を背景に、ヒューマノイドロボットへの期待が高まっています。本ブログでは、最新動向や技術進化を紹介しつつ、ロボットが社会で活躍するために不可欠な「ネットワーク」の役割や共創エコシステムの重要性を考察します。
目次
はじめに
労働力不足や少子高齢化、働き方改革など、様々な社会課題に対して「ロボット」の活用が注目を集めています。特に“人のようにふるまう”ヒューマノイドロボットには、接客や医療、介護、教育など、活躍の期待が広がっています。
中国では国家戦略としてヒューマノイドロボットの開発を進めており、日々新しいニュースが飛び込んできます。ヒューマノイドロボットがバク転やキックボクシングで対戦する動画を目にして、技術の進化に驚かれた方も多いのではないでしょうか?
上記動画はエンターテイメント要素が強いですが、物流や製造業を中心に、ヒューマノイドロボットの試験導入が進められています。
イーロン・マスク氏率いるTesla社では、2026年頃に自社開発している「Optimus」を大量生産する方針を示しており、ヒューマノイドロボットが身近な存在になる日はそう遠くないかもしれません。
ヒューマノイドロボット自体の性能は向上し続けていますが、ロボットが人間社会で活躍するためには、それだけでよいのでしょうか?本ブログでは、ネットワークを強みとするネットワンとして、ヒューマノイドを中心としたロボットの社会活躍をネットワーク観点で考えてみたいと思います。
ロボット活用におけるネットワーク
「temi」で得た学び
ネットワンでは、これまでテレプレゼンスアバターロボット「temi」の自社導入や、お客様のPoC支援を行ってきました。「temi」の活用を通じて、ロボットが人のいる空間で働くとはどういうことか、そのリアルな難しさと大きな可能性を学び続けています。
「temi」の経験から得られた学びは多数ありますが、特にヒューマノイドロボットの未来を考える上で重要だと考えているものが「ネットワーク品質のシビアさ」です。
テレプレゼンスロボットは、ネットワークを通じて遠隔の人の「存在」を現場に届けます。その際、映像や音声のわずかな乱れや遅延が、驚くほど「そこにいる」という感覚を損なってしまいます。
「いつでも、どこでも、安定して繋がり続けること」
この当たり前に聞こえる通信品質が、ロボットがその真価を発揮するための生命線になるのです。
データ処理とネットワーク
また、ロボットの導入は、業務の自動化に留まらず、事業に新たなインサイトをもたらす価値あるデータの源泉となります。しかし、その価値を最大限に引き出すには、ロボットが生成する膨大かつ多様なデータを、いかに効率的に処理し、活用するかという課題が伴います。
ヒューマノイドロボットを想像してみてください。
その全身には、高精細なカメラ、3D空間を捉えるセンサー、微細な音を拾うマイクなどが無数に搭載されています。これらが生成するデータ量は、テレプレゼンスアバターロボットの比ではありません。
この課題に対し、私たちは「エッジ」と「クラウド」が有機的に連携する、ハイブリッドなシステムアーキテクチャが最適解だと考えています。
まず、即時性が要求される物理的な制御や、セキュリティ・プライバシーの観点から、データが発生した現場(ロボット自身や施設内に設置されたサーバー)で処理を行う「エッジコンピューティング」は不可欠です。
一方で、AIモデルの精度を継続的に向上させるための大規模な学習や、複数拠点のデータを横断した全体最適化には、「クラウド」が持つ潤沢な計算リソースが必須となります。
真に価値のあるロボットシステムとは、このエッジでのリアルタイム処理と、クラウドでの高度な分析・学習を連携させ、その結果を再び現場のロボットにフィードバックするという継続的な改善ループを構築することで実現されます。
そして、この複雑な分散システム全体のパフォーマンスを規定するのが、「ネットワーク」です。
ここで決定的に重要となる要素が2つあります。
第一に、ロボット本体から施設内のエッジサーバーまでを結ぶ「現場内(ローカル)ネットワーク」です。移動体、電波干渉、多数同時接続といった過酷な条件下でも、安定性と低遅延を維持する、極めて信頼性の高い無線環境が求められます。
第二に、その現場からクラウドに至るまで、システム全体を繋ぐデータ連携基盤です。どのデータを、どのタイミングで、どこに送るか。その最適なデータフローを設計し、セキュアで効率的な通信を確保する必要があります。
ロボットの価値を最大限に引き出すためには、高品質で安定したネットワークが不可欠であり、まさに車の両輪のような存在です。
私たちは、お客様の環境と目的に応じて、このエッジからクラウドまでを貫くデータ連携基盤を最適に設計・構築し、安定した運用を実現するネットワークのプロフェッショナルです。これまで培った経験を糧に、“つながる”ことを支援する形で、ヒューマノイドロボットの社会実装に貢献していきたいと考えています。
未来を共に創る「仲間」を探しています
ここまで、ヒューマノイドロボットの社会実装における課題と、それに対する私たちの考え、そしてネットワークの重要性について述べてきました。
私たちは、ロボット本体を作る会社ではありません。しかし、私たちはネットワークのプロフェッショナルであるという強みがあります。ロボットが人間社会で活躍する未来を実現するためには、私たちにない専門性や強みを持つ、皆さまの力が必要不可欠です。
要素技術(ハードウェア・ソフトウェア)を持つ企業の皆さまへ
皆さまが持つ素晴らしいセンサー、パワフルで繊細なアクチュエーター、人間のように柔軟なAI。その技術が持つポテンシャルを最大限に引き出すための、安定した実証・実行環境を提供します。皆さまの技術を、私たちが構築するセキュアで低遅延なネットワーク基盤に接続し、エッジとクラウドを連携させた複雑なシステムの中で、その真価を試しませんか。皆さまの技術と私たちのインフラを掛け合わせることで、これまで単体では実現できなかった、より高度で社会実装可能なソリューションを共に創出できると信じています。
活用を検討する業界(介護・小売・製造など)の皆さまへ
どんなに優れた技術も、現場のリアルな課題を解決できなければ意味がありません。私たちは、テクノロジーは常に現場のためにあるべきだと考えています。
「人手が足りない」「もっと楽に、安全にしたい」。そんな現場のリアルな困りごとを、ぜひ私たちに教えてください。ロボットで何ができるか、一緒に考えましょう。
大学・研究機関の皆さまへ
皆さまの最先端の研究シーズを、共に社会で役立つ形に育てていきたいと考えています。私たちは、皆さまの研究成果を、社会という広大なフィールドで検証・実装するための「実証の場」となることができます。皆さまの基礎研究や先進的なアルゴリズムを、私たちのネットワーク基盤や、産業界のパートナーが持つリアルな課題と結びつけることで、研究開発を加速させ、社会実装への道筋を共に描く。そのような産学連携の形をご一緒できれば幸いです。
おわりに
ヒューマノイドロボットが、社会インフラの一員として、人々と共存し、活躍する未来。それは、もはや単なる空想ではありません。しかし、その実現への道のりは平坦ではなく、一社単独で成し遂げられるものではないこともまた、事実です。
異なる専門性を持つ企業や研究機関が、それぞれの技術、知見、そして情熱を持ち寄り、一つの大きな目標に向かって協調する。オープンな共創関係(エコシステム)の構築なくして、この壮大な挑戦を成功に導くことはできないでしょう。
この記事を読んで、少しでも共感するところがあったなら、あるいは「自社の技術が活かせるかもしれない」「こんな課題を解決してほしい」と感じたなら、それは私たちにとって何よりの喜びです。
まだ構想が荒削りな段階でも、断片的なアイデアでも、まったく問題ありません。まずはカジュアルな情報交換から始めましょう。
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※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。