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F5 JourneysによるrSeriesへのマイグレーション

F5 rSeriesと従来のiSeriesではアーキテクチャが異なる為、移行時には一部の項目で設定変更が必要になります。本記事でご紹介するF5 Journeysを活用する事で設定変更にかかる作業時間を短縮できます。本記事では、F5 Journeysの概要と特徴、活用例をご紹介します。

ライター:津久井 俊也
2020年、ネットワンシステムズに入社。
入社当初は、CiscoのCatalystスイッチに関する性能/機能検証、案件支援などの業務を主に担当。
2022年度からF5製品の担当として活動中。

目次

F5 Journeysとは?

概要

F5 JourneysはF5が開発する、BIG-IPのバージョンアップや新しいプラットフォーム(VELOS/rSeries)への移行を支援するツールです。DockerおよびDocker Composeが利用可能なコンテナ環境で動作し、構築手順はf5devcentralGitHubYouTubeで公開されています。

GitHub: f5devcentral/f5-journeys
YouTube: UtilityF5 DevCentral Community/Journeys, the BIG-IP Migration

主な特長

(1)設定移行の自動化

BIG-IPと直接通信できる環境であれば、移行元BIG-IPからの設定の読み込みや移行先BIG-IP(TMOSテナント)へのリストアを自動化することができ、ダウンタイムの短縮や作業工数の削減に大きく貢献します。
さらに、移行先BIG-IPでサポートされていない設定がある場合には、F5 Journeysが推奨される設定変更を提示してくれます。これらの推奨設定は、項目ごとにワンクリックで反映できるため、効率的かつ確実な移行作業が可能です。

(2)設定の手動編集・検証機能

F5 Journeysで変更した設定は、移行先BIG-IPでリストアする前に検証することができます。また、手動で設定を変更する事もできます。(設定の検証機能は後述のオンラインモードでリストアする場合のみ利用可能です)

(3)レポート出力

異なるBIG-IPプラットフォーム間での設定互換性のチェックと設定変更を完了したタイミングでPDF形式のレポートを出力可能です。
レポートの出力例を下記に示します。(上:互換性チェックの結果、下:設定変更箇所の一覧)



Issue Summary.png



F5 Journeysの使用方法

ここでは、実際にF5 Journeysを使ってiSeriesからrSeriesへ設定移行する手順を簡単にご紹介します。

(1)設定の読み込み方法を選択

移行元BIG-IPの設定読み込みは、移行元BIG-IPで生成したUCS(User Configuration Set)ファイルからインポートする方法(左図)F5 Journeysに移行元BIG-IPを登録して設定をインポートする方法(右図)2種類から選択できます。

F5 journeys_SourceDevice.png

(2)設定のリストア方法を選択

移行先BIG-IPへの設定のリストア方法は「オンライン」と「オフライン」の2種類があります。

オンライン方式

F5 Journeysに登録された移行先BIG-IPに対して、設定変更済みの設定ファイルを転送し、TMOSテナントで設定をリストアします。

オフライン方式

F5 Journeysで設定変更後の新しいUCSファイルが出力されます。このUCSファイルを手動で移行先BIG-IPに転送し、設定をリストアします。

Destination_offline.png

(3)機能互換性のチェック

移行元BIG-IPと移行先BIG-IP間で、設定の互換性をチェックします。

以下の例では、移行元BIG-IPで設定されている「Device Group」「STP」「Trunk」は、移行先BIG-IPに対してそのまま設定を移行できないという結果が出力されています。rSeries(移行先BIG-IP)では、STPTrunkF5OS側で設定される為、TMOSテナント側ではサポートされません。(r2000/r4000シリーズにおいては、現時点でSTP自体がサポートされていません)また、DeviceGroupは移行時の読み込みエラーを防ぐ為に、F5 Journeysでの移行対象外となります。

(4)設定の変更

System CompatibilityのIssueをクリックすると、さらに詳細な情報を確認することができます。

以下の例では、移行元BIG-IPで設定されたDevice Groupを前述の理由により削除する事が推奨されています。[Resolve]ボタンをクリックすると、DeviceGroupに関連する設定を一括で変更する事ができます。(左側には移行元BIG-IPの設定内容が、右側には推奨の設定内容が表示されます)

(5)移行先BIG-IPでリストア

変更済みの設定を使用して、移行先のBIG-IPにリストアします。

リストア方式でオンラインを選択した場合は、移行元と移行先BIG-IPのログイン情報を入力し、[Deploy Now]をクリックする事で、設定ファイルの転送とリストアが自動的に実行されます。(左図)

オフラインを選択した場合は、「Download UCS」ボタンを押して新しいUCSファイルをダウンロードします。(右図)このファイルを移行先のBIG-IPに手動で転送し、CLIコマンドを使用して設定をリストアします。

まとめ

従来シリーズからrSeriesへの移行には、複数の設定項目で変更や調整が必要と想定していましたが、F5 Journeysの活用により設定移行の作業が自動化され、スムーズな移行が可能になります。ただし、全ての設定を完璧に移行できる訳ではなく、一部の設定項目では再設定が必要です。

また、rSeriesへ移行する際の機種選定には、BIG-IPの使用状況をリアルタイムで確認できるAST(Application Study Tool)の活用が有効です。ASTrSeriesの詳細は過去のブログにてご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

BIG-IPのリプレースをご検討の際は、ぜひ弊社までご相談ください。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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