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「temi」最新活用事例3選:テレプレゼンスアバターロボットがもたらす導入メリットとは?

少子高齢化による労働人口不足が深刻化する日本では、限られた人員でサービス品質を維持・向上させる仕組みづくりが急務です。テレプレゼンスアバターロボット「temi」の3つの最新事例を通じて、遠隔操作・業務代行・高度な自律支援というロボットの価値が生み出す体験と変革を具体的に紹介します。

ライター:吉田 将大
システムインテグレータでソフトウェア開発業務を経験した後、2018年にネットワンシステムズに入社。
前職での経験を活かした開発案件の支援や、データ分析基盤製品・パブリッククラウドの導入を支援する業務に従事。
保有資格: AWS認定ソリューションアーキテクトプロフェッショナル

目次

はじめに:労働人口不足で高まるロボット需要

少子高齢化が進む日本では、2030年までに最大644万人の労働力が不足すると予測されています。自治体・企業を問わず、限られた人員でサービス品質と業務効率を両立することが喫緊の課題となっています。

こうした状況の中で注目されているのが、遠隔操作が可能で、会話や自律走行にも対応する「テレプレゼンスアバターロボット」です。ロボットは“もう一人の自分”として、現場でリアルタイムかつ双方向のコミュニケーションを実現するだけでなく、自律的な行動により人手不足を補う存在にもなり得ます。

テレプレゼンスアバターロボット「temi」とは?

自律走行が可能なパーソナルロボット「temi(テミ)」は、遠隔操作により、あたかもその場に自分が存在するかのような体験(テレプレゼンス)を提供します。

ユーザーは、モニター・カメラ・マイクなどを搭載したロボットを操作することで、離れた場所からリアルタイムで対話し、オフィス内を自由に移動できる“分身(アバター)”として活用できます。

また、temiは人が操作するだけでなく、カメラやセンサーで取得した環境情報に基づいて、定められたシーケンスの実行や外部システムとの連携によるデータ取得・機器操作も可能です。

temi-intro.png

ロボット導入がもたらす3つの価値

このようなロボットを導入すると、働き方やサービス提供はどのように変わるのでしょうか。

私たちは、ロボットの価値を以下の3点に整理しています。

  1. 遠隔操作
    遠隔地からロボットを操作し、対面での会話や現場視察を可能にする“分身”機能。
  2. 業務の代行
    施設案内や物品搬送などの定型業務を代行し、省人化とサービスの常時提供を実現。
  3. 高度な自律支援
    クラウド連携、ビッグデータ解析、生成AIなどを活用し、人の判断を超える高度な支援を実現。

本記事では、「temi」の最新導入事例を通じて、これらの価値がどのように働き方とサービスを変革するのかを解説します。

文京区役所での働き方DX:temi が実現する“職場の分身”

自治体での先進事例として挙げられるのが、東京都文京区役所での働き方DX推進実証実験プロジェクトです。文京区はスタートアップ企業のiPresenceと協力し、「temi」をはじめ様々なテレプレゼンスロボットを約20台導入して効果を検証しました。

コロナ禍以降、文京区でも在宅勤務用のリモートアクセスやチャットツールを導入してきましたが、それだけでは埋まらない課題があったといいます。特に管理職の職員が在宅勤務中にメンバーと気軽に相談できず、職場の状況をタイムリーに把握しづらい点が指摘されていました。

そこで、職場へ“擬似的にテレポート”できるロボットを活用し、離れていても上司がそばにいるような環境の構築に挑戦しました。

実証実験では、管理職の方が自宅からロボットを遠隔操作し、庁内を移動してメンバーと対話する形で行われました。実験では、自走式で巡回できるtemiの他に、据置型で画面が首振りできる「kubi」や卓上サイズの小型ロボット「Teleppii」なども用途に応じて設置されました。

実証に参加した職員の方は「自宅にいながら職場の様子をリアルタイムに高感度で把握でき、まるで出勤しているような感覚で業務に臨めた」と語ります。従来の在宅勤務では得られなかった“臨場感”が生まれ、感覚的には「出勤時を10とすれば7〜8程度のリアリティはあった」と表現されています。ロボット越しでも上司がフロアに「いる」ことで、部下から気軽な声掛けが増えたり、ちょっとした雑談や相談が発生するなどコミュニケーションが活性化する効果もあったようです。

文京区の取り組みは、ロボットの遠隔操作(テレプレゼンス)機能を活用し、自宅にいながら職場に臨場感をもたらした好例であり、働き方改革の可能性を示す先進的な事例といえるでしょう。

※本事例はiPresence社の事例記事を引用したものです。

引用: 文京区役所で取り組む「働き方DX推進」――実証実験が社会的インパクト×海外展開の足がかりに!iPresenceがキングサーモンプロジェクトで得た成果

北九州市役所様:可動型顔認証端末による入退室管理のスマート化

自治体では他にもテレプレゼンスロボットを活用する動きが出てきています。
弊社ネットワンシステムズでは、北九州市役所様における入退室管理業務のスマート化に向けたPoC(概念実証)をご支援させていただきました。

同市役所様では、台帳を用いた入退室管理を行なってきましたが、なりすまし等のセキュリティリスクや台帳記載・照合の非効率性が課題となっていました。そこで、temiを可動型の顔認証キオスク端末として活用し、弊社が提供する顔認証サービスと連携させる実証プロジェクトを開始しました。

ロボットは来庁者や職員をカメラとセンサーで検知すると、音声により「本人確認を行います。画面に顔を近づけてください」と案内します。その後ロボット正面に立ち、表示された端末上のボタンをタッチすると顔認証エンジンを用いた認証が瞬時に行われます。認証結果とタイムスタンプは履歴管理サーバーへと送信され、タブレットなどで閲覧可能な管理アプリケーションから、リアルタイムでの認証状況の監視過去の認証履歴の確認が可能です。

temi-screen.png

お客様からは、単なる業務の代行という機能的メリットにとどまらず、temiが表情を変えながら話しかける“ロボットならではの愛らしさ”にも好評をいただきました
また、近年問題視されているカスタマーハラスメント対策としての効果にも期待が寄せられています。

将来的には、会議室や窓口への自律誘導、電子錠との連携による施錠・開錠など、さらなる機能拡張も検討されています。

弊社社内事例:AI エージェント×temi が IT 運用をサポート

最後に、弊社で進めている最新のロボット活用事例をご紹介します。それは、対話型人工知能「AI エージェント」と自律移動ロボットを組み合わせ、現実世界で人を支援する“スマートロボット”を実現しようという試みです。生成 AIを活用した AI エージェントとロボットを連携させることで、物理空間を移動しながら人と対話し、業務を支援してくれる“賢いロボット社員”の実装を目指しています。

弊社では、temi がAIエージェントを介して社内システムと連携し、音声対話で IT 運用に関する質問に答えるデモを開発しました。

たとえば社員が temi に、

最近電力消費が高いラックはどれ?

と尋ねると、次のような流れで回答が得られます。

  1. 音声認識
    temi がマイクで聞き取った音声をテキスト化し、AI エージェントに送信。
  2. 意図解析とデータ取得
    AI エージェントが LLM(大規模言語モデル)で質問の意図を把握し、社内システムからサーバーラックごとの電力消費量を取得。
  3. 回答生成
    得られたデータを基に LLM が最適な回答文を生成。
  4. 音声出力
    AI エージェントが生成した回答を temi が音声に変換し、ユーザーへ返答。

過去24時間で最も電力消費が高かったラックは〇〇です。

この仕組みを応用すれば、たとえばサーバーごとのリソース使用率データを関連付けて原因を特定させたり、「そのラックに案内して」と指示するだけで、temi に自律走行で目的地まで誘導させたり、といった活用も期待できます。

AIエージェント×ロボットのデモの様子。人間の問いかけに応じて、temiが電力使用量のダッシュボードを表示し、重要な指標について説明している。

AI エージェント × ロボットによるビッグデータ活用や生成AIを用いた動的な回答生成といった高度な自律支援は、今後大きな可能性を秘めています。特に人手不足が深刻な IT 分野では、専門スキルがなくても高度な運用を実現できるソリューションとして、ますます注目されるでしょう。

参考: AIエージェントとロボット活用で変わるIT運用:実装ガイド

まとめ:共創による新たな価値創出へ

ここまで、自治体と弊社での3つの最新活用事例を通じて、ロボットの導入による変革をご紹介しました。

ロボットとITインフラの組み合わせにより、遠隔でも“その場にいる”ようなコミュニケーションの実現や、AIを活用した業務効率の向上など、私たちの働き方・サービス提供は確実に進化しています。

「とはいえ、自分たちの職場では本当に活用できるのか?」と感じられた方もいるかもしれません。ご紹介した『遠隔操作』『業務の代行』『高度な自律支援』というのはあくまで表面的な価値にすぎません。重要なのは、それらを導入したときにどのような体験が生まれ、現場にどのような変革が起きるのかという点です。

そこでネットワンシステムズでは、お客様とともにこうした最新技術の実証実験(PoC)に取り組み、現場に最適なソリューションの共創を支援しています。まずは小さなトライアルから、ロボットの価値をぜひ体験してみてください。

実際にご利用いただくことで、「こういうことか」「こんな活用もできそうだ」「別の課題にも応用できるかも」といった新たな発見が得られるはずです。

ネットワークを核としたITインフラの構築で培った豊富な知見を活かし、ロボット導入における基盤づくりから実装・運用までトータルに支援いたします。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

お問い合わせやPoCのご相談は、下記問合せフォームよりぜひお寄せください。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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