
Catalyst Centerを利用してネットワークの構築をより簡単にする手法を紹介します。
- ライター:新谷 裕太
- 2019年新卒入社後、Cisco Systems社製エンタープライズ向けスイッチであるCatalystを主として可視化商材のFlowmonなどの検証・評価に従事。
現在はCisco Catalyst Centerの製品担当やプログラミングによる社内業務の効率化・自動化などもおこなっている。
目次
はじめに
前回の記事ではCatalystスイッチでのEVPN-VXLAN構成についての実現可否やNexusスイッチでの構成時との比較などを紹介しました。
これにより、Catalystスイッチでも本構成は実現でき、Nexusスイッチでの構成と比べコストや電力を抑えられることをご理解いただけたかと思います。
NexusスイッチだけじゃないCatalystスイッチでもできるEVPN-VXLAN | ネットワンシステムズ
しかしながら、本構成の実際の構築時にはCLIでのコンフィグレーションが必要な点や構成後の運用管理が従来通りレガシーなものとなってしまう点が課題として残存していました。
そこで本記事ではCisco Catalyst Centerを利用してネットワーク構築、今回は前回記事のEVPN-VXLAN構成の構築をサポートする手法を紹介します。
今回利用するCisco Catalyst Center(旧Cisco DNA Center)は、ネットワークの自動化・可視化・分析を行うための統合管理プラットフォームです。
GUIベースで設定やトラブルシューティングが可能で、運用負荷を大幅に軽減することが可能です。
SD-Accessやセキュリティ機能とも連携し、次世代のネットワーク運用を実現するアプライアンスとなっており、提供形態としては現在、物理版からクラウド版まであり、さまざまな場面で利用できるようになっています。
Cisco Catalyst Centerでどのように構築をサポートするのか
構築サポートにあたってはCatalyst Centerの代表的な機能のひとつである「CLI Templates」を利用します。
「CLI Templates」では任意のコンフィグを任意のタイミングで配布することができ、それらの配布を一括で実施することも可能な機能です。
本機能を利用してデバイスにコンフィグを流し込む際にはまずCatalyst Center上に各デバイスを登録=オンボードする必要があります。
そのため、以下のような設定がデバイスの初期設置時に必要になってきます。今回はCatalyst Centerからの管理を、マネージメントポートを介しておこないます。
上記設定およびデバイス間ポートとマネージメントポートの配線を実施したのち、Catalyst Centerからデバイスを検出するツールである「Discovery」を利用します。
これにより、IPレンジなどを指定することでSSHなど上記設定を通してCatalyst Center上にオンボードさせることが可能となり、デバイスは資産管理の「Inventory」に一覧で表示されるようになります。
次に「CLI Templates」を利用して実際に配布する任意のコンフィグを作成します。
コンフィグについてはCatalyst Center内で保存することができ、CLIでも利用しているコマンド体系で作成することができます。
また、特徴として以下のようにコンフィグの一部を変数定義することが可能で、デバイスごとにインタフェースのIPアドレスなどが違う場合でも個別に作成することなく一括処理の際に数値や文字列を入力するフォームを表示させ、デバイスごとに一部異なるコンフィグを配布することが可能となっています。
ここで保存するコンフィグは変更履歴を残すこともでき、コンフィグ管理にも利用できます。
コンフィグの作成が完了すると対象のデバイスシリーズなどの紐づけ作業をおこない、「Inventory」より適用対象を選択し配布=プロビジョンをおこなうことで各デバイスへコンフィグを渡します。
このプロビジョンの際に変数定義したものをデバイスごとに以下のようにフォーム入力することになります。
上記の入力をおこないsubmitすることで各デバイスにコンフィグの配布が実施され、正常に処理が終了するとこの作業のみで構築が完了します。
今回の例ではEVPN-VXLANのアンダーレイ/オーバーレイともに同時に構築することができ、初期設定しか実施していなかった環境でもダイナミックルーティングからVTEPのUPまでGUIで一括でおこなうことができます。
まとめ
本記事ではCatalyst Centerを利用してネットワーク構築のサポートをする方法についてご紹介しました。
これにより、最小限のコンフィグと配線のみを実際の現場担当者に実施していただくのみでよく、ネットワークの専門知識に明るくない現場担当者でも作業が可能であり、後からネットワーク管理者が「CLI Templates」を用いて必要な調整や構成変更を行える柔軟性は大きなメリットと考えられます。
また、今回は初期展開の想定で決まった台数での設定をご紹介しましたが既存環境においてもDHCPサーバを介したPnP機能を利用することで現場担当者には配線をしてもらうのみで自動的にCatalyst Centerにオンボードさせることができ、より自動化することも可能でスケールアウトのハードルを下げることができます。
加えて、デバイスがCatalyst Center管理となることで副次的となりますがバージョン管理やテレメトリ収集による可視化、脆弱性管理なども付随して利用できることで構成後の運用管理の改善にもつながるメリットもございます。
より具体的な手順やコンフィグ、機能制約など詳細にご興味をお持ちのお客様は是非ともお気軽に弊社担当にご連絡いただけますと幸いです。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。