
vSphereのCPU電源管理ポリシーという設定設定を変更して、どれくらい電力を削減できるか検証してみましたので、その結果をご共有いたします。
目次
はじめに
ネットワンシステムズの川和です。
今回は、vSphereの電源管理の設定を変更して、どれくらい電力を削減できるか検証してみましたので、その結果を共有しようと思います。
概要
なんで電力削減に取り組んだの?
現在、ネットワンシステムズは、SDGsの達成に向けて、いくつかの取り組みを進めています。
その中の1つが、脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現に向けた取り組みであり、その活動の一環として、消費電力の削減に力を入れています。
SDGsの達成に少しでも貢献するために、私にできることは何か?を考えた結果、普段から利用している仮想環境の消費電力を、簡単に削減する方法が見つかれば、自分の環境だけでなく社内全体の電力削減に繋がるのではないかと思い立ち、今回の検証に取り組んでみました。
弊社のSDGsへの取り組みについては、以下のサイトをご覧ください。
SDGsへの取組 | ネットワンシステムズ (netone.co.jp)
実際に何をしたの?
vSphereには、CPU電源管理ポリシーという設定項目があります。
こちらは、ホストハードウェアが提供するいくつかの電源管理機能をESXiから適用して、パフォーマンスと消費電力のバランスを調整できる機能です。
ポリシーは、VMware Host Client を使用して選択できます。ESXi ではデフォルトのポリシーでは [バランシング済み] になっています。
CPU電源管理ポリシーの設定については、以下の表1をご参照ください
表1. CPU電源管理ポリシー
電源管理ポリシー |
説明 |
高パフォーマンス |
電源管理機能は使用しない |
バランシング済み |
パフォーマンスへの影響を最小限に抑え消費電力を削減する |
省電力 |
消費電力を削減しますが、パフォーマンス低下のおそれがあります |
カスタム |
ユーザ定義の電源管理ポリシー |
検証してみた
前提条件
まず、今回の検証に使用した仮想環境を図1に示します。
図1. 検証環境簡易構成図
今回の使用した検証環境は、PowerEdge R660 が7台でクラスタを構成し、その上で仮想マシンやアプリケーション等が約1,200台稼働しています。
PowerEdge R660のスペックは7台共通で以下の通りです。
表2. PowerEdge R660のスペック
コンポーネント |
モデル |
数量 |
CPU |
Intel(R) Xeon(R) Platinum 8462Y+ |
2 |
メモリ |
DIMM,64GB,4800,2RX4,16G,DDR5,R |
32 |
ディスク |
Dell Ent NVMe CM6 MU 3.2TB |
4 |
検証の概要
各ホストのCPU電源管理ポリシーはVMware vCenter上から設定を変更することが可能です。
手順は以下の通りです。
-
vCenterにログイン
-
設定を変更したいホストを選択
-
[構成]タブをクリック
-
[ハードウェア]>[概要]をクリック
-
[電源ポリシーの編集]をクリック
図2. 電源ポリシーの編集
設定の変更前は、CPU電源管理ポリシーは7台すべて[高パフォーマンス]に設定されていました。
今回の検証では、ポリシーを[バランシング済み]に変更し、変更前と変更後でそれぞれ1か月消費電力を測定し、比較しました。
消費電力の測定には、VMware Aria Operations(VMware VMware Cloud Foundation, VMware vSphere Foundation にバンドル) を使用しています。
検証結果
検証結果を図3に示します。
青いグラフが設定を変更する前の消費電力、赤いグラフが設定変更後の消費電力になります。
測定間隔は5分間で、1か月(30日)測定しました。
図3. 検証結果 (Aria Operations にて作成したグラフ)
2つのグラフを比較すると、全体的に設定変更後の方が、変更前と比べて消費電力が低下していることがわかります。
それぞれの結果を平均してみると、設定変更前は消費電力が約350wh、変更後は約338whとなっており、1日あたりの消費電力は変更前が約8.4kw、変更後が約8.1kwで、1日で約0.3kw、1年に換算すると約110kw消費電力が削減できる計算となります。
一般的な縦型洗濯機が1回の洗濯に使用する電力が約100wと言われているため、およそ洗濯1100回分の電力を削減できたことになります。
削減率は約3.4%となりました。
まとめ
今回は、vSphereのCPU電源管理ポリシーの設定を変更して電力を削減できるか検証を行いました。
簡単に実施できるので、他の仮想環境でも実施してみて同じような効果が得られれば大きな削減効果を得られるのではないでしょうか。
もちろん、事前に仮想環境の稼働率等を確認して、設定を変更しても問題ないか検討する必要はございますが…
なお、今回の検証は 1,200 台の仮想マシンが稼働している環境において、[高パフォーマンス] から [バランシング済み] に変更しましたが、ユーザからはパフォーマンスに関する問い合わせはありませんでした。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。