ネットワンシステムズが提唱する次世代VMS「U-VDMS」コンセプト #04
今回の記事では、音の連携について解説致します。
【バックナンバー】
#01 - スマートマニュファクチャリングにおける最適な映像IoT基盤の在り方
#02 - ネットワンが提唱する次世代VMS「U-VDMS」ってなに?!
#03 - AI映像解析導入の流れ
- ライター:佐々木 藏德
- フィジカルセキュリティ、サーバ、ストレージ、OSのプラットフォーム基盤関連業務を経て、2016年ネットワンシステムズに入社。
大手民間企業、重要インフラ施設の構築設計に多数関わっている。
現在はフィジカルセキュリティ製品に関する市場戦略策定に従事。
目次
初めに
フィジカルセキュリティを構成する機能として、IPカメラによる映像監視及び入退室製品による動線制御は欠かせない要素となっており、IPカメラの映像を利活用した映像解析技術や、IPカメラと連動し映像解析による入退室の自動制御等、その関連技術も日々進化をしています。その中で、新たなデータの利活用方法として「音」が注目されています。
今回はネットワンが提唱する映像データ集積管理基盤(U-VDMS)において、音をどのような形で利活用できるのか、実際の活用事例を含めご紹介致します。
一つのデータとして音が注目される理由
防犯目的でIPカメラを利用し、音を活用する技術はすでに様々な場面で活用されています。
集音 | 発声 | |
---|---|---|
概要 | カメラ内蔵マイクまたは外付けマイクをカメラに接続し、周囲の音と映像と合わせて記録 | カメラに外付けスピーカまたは音響装置を接続し、近くのスピーカから発声する |
制約事項 | 録音はできるが、カメラ映像の付帯データ(音声付き動画)として処理されるため、音を聞く場合は一度記録した動画を再生しながら聞くか、カメラのライブ映像を閲覧しながら聞く必要がある(映像と音声を分離ができない) | 対象カメラと、操作卓(PC含む)と1:1通信となるため、1:Nでの発声はできない(PA放送の様な機能がない) |
上記の図解の通り、従来通りの方式における音声機能については、IPカメラを軸として動作しており、録画映像に音を乗せる付加機能であるため動画データとセットで考える必要がありました。そのため、主な利用目的として「録画映像に付帯する証跡データの記録」に留まり、技術的に大きく進化することもありませんでした。
しかし、技術の進化と共に、単なるVMS(Video Management System)から映像データ統合集積基盤(U-VDMS)への進化を経て、関連する各種データが一つに融合されると同時に音データについても新たな方法を用いて融合が実現でき、利活用の幅もかなり広がりました。
※映像データ統合集積基盤への融合のために、以下の3つの点において見直しがされています。
- IPカメラと分離 (映像の付帯データではなく、単独で一つのデータとして確立)
- 汎用プロトコルを用いての制御 (汎用性の確保)
- 既存フィジカルセキュリティ設備との連動(システム融合)
フィジカルセキュリティにおける音の活用内容としては、「映像データと合わせて証跡としてのデータ」と、「インターホンの相互通信」、危険または異常情報を知らせるための「音声放送」などが挙げられますが、それらの機能を映像データ統合集積基盤と融合して実装するためにSIP(Session Initiation Protocol)が用いられています。
SIPプロトコルは、TCP/IP上で音声通話やビデオ電話などで一般的に利用されている汎用プロトコルです。SIPサーバ機能をVMSサーバに乗せることで、VMSサーバがSIPサーバとして動作し、ビデオ通話、音声通話、PA(Public Address)通話機能を提供できるようになり、さらに既存のIPカメラシステム及び入退室システムと連動することで全体の要素を合わせて自動化・運用効率化を実現することができるようになります。
音声+映像利活用の事例
それでは、いくつかSIPサーバとVMSを連動させた場合の活用事例をご紹介致します。
事例1 広域PA放送(危険察知通報放送・無線利用)
事例概要 | 詳細 |
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AIカメラと連動しPA放送 | AIカメラで危険情報を検知し、周囲のSIP対応IPスピーカに一斉放送を実施。(避難勧告、注意勧告等)
例① 熊や猿などの危険動物の検知 |
通常時の町案内放送 | 通常時は訪問観光客へ観光地の案内放送などを行う |
事例2 製造設備との連携
事例概要 | 詳細 |
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設備連動 | PLC・シーケンサーより異常値を受信した場合、周囲のパトライト及びスピーカを通じて自動放送を行うことで、作業員へ注意喚起を行う。IPカメラと連動もできるので、録画期間を延長する、またはカメラの向きを変えて録画するなどの連携も可能 |
遠隔地の管理者に支援コール | 現場に人がいない場合、IP電話を通じて管理者へ電話をかけ、TTS(Text to Speech)による合成音声案内を自動的に流す。電話コールは1:Nの通話も可能 |
事例3 施設無人オペレーションの最適化
事例概要 | 詳細 |
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無人駅舎のインターホン統合 | 無人駅の券売機等、無人施設のトラブル発生時の応対をSIP対応インターホンで実施。遠隔地にある管理拠点で複数無人拠点を一元管理し、オペレーションの効率化を実現。音声通話記録、対応時のビデオ記録も残すことができるためトラブル対応の証跡としても活用できる |
IPスピーカによる案内放送 | 普段は一定間隔で案内ガイダンスを流し、必要に応じて遠隔管理拠点よりTTS(Text to Speech)または肉声による案内放送を行い施設利用者に対する注意喚起を行う |
まとめ

データ集約に加え各種データを必要な形で提供できる基盤として、ネットワンシステムズでは次世代VMS「U-VDMS」構想を提唱しており、様々なデータを融合し利活用できると考えています。
前回のポスト「ネットワンが提唱する次世代VMS「U-VDMS」ってなに?!」のブログの中で解説している通り、U-VDMSには各所に点在しているデータをひとつのプラットフォームで統合管理し、さらに必要な形で必要なところに引き渡す仕組みを備えております。
今回ご紹介致しました音についても個別システムで運用するより、一つのデータとしてU-VDMSに統合することで今まで実現が難しかった様々な課題に対処することが可能と考えています。
ネットワンシステムズではU-VDMSコンセプトの根幹であるVMS製品をはじめ、ネットワークカメラ、入退室システム、各種センサー、音声デバイス、そしてVMSを運用するためのインフラ基盤も併せて提供しております。ご検討される際は弊社までご相談ください。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。