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コンテナ型AIデータセンターとGPU as a Service(GPUクラウド)の潮流

目次

はじめに

 2025127日の米国株式市場では、NVIDIAの株価が17%急落し、その時価総額は約5900億ドル(約91兆円)減少しました。この株価急落は、中国のAI開発スタートアップであるDeepSeekが低コストな生成AIを開発したとする「DeepSeek Shock」を要因としています。

 202211月のChatGPTの出現により大きく動きはじめた第4AIブーム。資金力が豊富なビッグテックが、より性能が高いAIを開発するために、NVIDIAの最新GPUに巨額を投じる「規模の競争」が続いています。DeepSeekの登場は、その「規模の競争」に一石を投じるものではありましたが、未だNVIDIAの最新GPUに対する需要は衰えていません。

 本ブログでは、このように最新GPUの莫大な需要が継続する中、最近国内で盛り上がりを見せる「コンテナ型AIデータセンター」と「GPU as a ServiceGPUクラウド)」について、その潮流の背景などを考察します。

コンテナ型AIデータセンター

 ビル型のAIデータセンターの新設には2年以上かかるため、その時間軸では今現在のGPU需要を取り逃がす可能性が高いことが、コンテナ型AIデータセンターが増えている一因と考えています。また、約1年前に開催のNVIDIA GTC 2024で発表された(その当時の)最新GPUアーキテクチャー:Blackwellでは、水冷(単相式DLC)による冷却が標準になったことも影響していると思われます(Blackwell以降のGPUでは水冷(単相式DLC)が標準になるとも言われています)。なお、既存データセンター(10年以上前に建設など)を水冷(単相式DLC)対応へ改修する場合であっても、その期間は1年以上かかるそうです。

 コンテナ型AIデータセンターの竣工までの期間は、その提供者によって異なりますが、最短で1カ月、長くても6カ月程度と、ビル型のAIデータセンターの新設や改修と比べるとサービス開始までの期間の大幅な短縮を実現します。また、ゲットワークスなど、既に水冷(単相式DLC)に対応したコンテナ型AIデータセンターを提供しているところも存在します。

 なお、GPUの冷却が水冷(単相式DLC)になったとしても、依然としてGPUサーバーは大量の電力を消費するため、ビル型AIデータセンターを新設する場合、特別高圧電力の提供を受けることが必要となります。そして、この特別高圧電力の提供にも時間がかかるそうです。それに対し、コンテナ型AIデータセンターであれば、コンテナを1台から設置し、特別高圧電力を必要としない範囲で拡張していくことも可能です。

GPU as a ServiceGPUクラウド)

 GPU as a ServiceGPUクラウド)は、GPUサーバーをサービス提供者側で用意するサービスのことで、AWSなどのクラウドサービス事業者も以前からサービスを提供しています。そして、2024年は国内をターゲットにしたビジネス参入が数多くありました。代表的なものとして、さくらインターネットが2016年から提供している「高火力」がありますが、20249月にはRutileaが「AI開発プラットフォーム(GPUクラウド)」を、202411月にはGMOが「GMO GPUクラウド」を開始しました。

 そのサービス内容は各サービス事業者によって少しずつ異なります。GPU1枚を1秒から利用可能なサービスもあれば、GPUサーバーの筐体単位やGPUクラスター単位で提供するケースもあるようです。なお、他社サービス事業者より比較的早期にビジネス参入をしたさくらインターネットでは、最近の稼働率はほぼ100%とのことで、生成AIブームの影響もあり、今現在、国内でGPUサーバーに対し大きな需要があることは間違いなさそうです。

 しかし、自身でGPUサーバーを所持しようとすると、「GPUサーバーが非常に高価」・「ビッグテックが最新のGPUサーバーを大量に購入しているためなかなか入手が難しい」・「GPUインフラ環境の構築・運用のノウハウがない」などの障壁があります。そして、その障壁をクリアしてくれる、GPU as a ServiceGPUクラウド)ビジネスが顕著に増加していると考えています。

まとめ

 現在国内で話題が多い「コンテナ型AIデータセンター」と「GPU as a ServiceGPUクラウド)」について考察しました。なお、ここでは言及しませんでしたが、「コンテナ型AIデータセンター」で「GPU as a ServiceGPUクラウド)」を提供し、そして更にそこに脱炭素要素を加えているケースも非常に多いです。その背景には、AIデータセンターにより国内でも電力需要が急激に増加している現状があります。そのため、この2つの組み合わせと脱炭素を絡めたサービスが今後益々活発になるのではないでしょうか。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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