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実測、「切れない通信接続を実現するマルチ回線ルーター」Peplinkを試してみた

ライター:渡部 満幸
2004年4月1日、ネットワンシステムズ入社。
応用技術、製品主管部門、製品担当業務で技術者として15年以上勤務。
主としてCisco製ローエンド~ハイエンドルータ製品の技術担当として15年の経験があります。
Cisco製だけでなくJuniper製、Nokia製ハイエンドルータの技術担当としても兼務経験があります。
現在はCisco製ロー/ミドルレンジルータ、Catalystスイッチ製品群およびVMware SD-WAN (VeloCloud)の技術担当。

目次

こんにちは。応用技術部ネットワークチームの渡部です。

実測シリーズ第4弾は「切れない通信接続を実現するマルチ回線ルーター」Peplink。

縁あってPeplink正式パートナーである株式会社CASO(カブシキガイシャキャソ)様にご協力いただき

"「切れない通信接続」を実現するマルチ回線ルーター"

がキャッチコピーのPeplinkルーターを試す機会がありましたのでその結果をご紹介したいと思います。

Peplinkルーターについて

PeplinkStarlink Authorized Technology Providerとして認定されているネットワーク機器メーカです。

このメーカのルーターの売りは「切れない通信接続」に特化した高信頼性通信を実現するSpeedFusion VPNです。

図1. 「切れない通信接続」を実現するPeplinkルーターの独自技術 SpeedFusion (※1 CASO様公式サイトより)

SpeedFusion VPNは通信の暗号化を提供するだけでなく、様々な付加価値を提供します。

  • 回線ボンディング
    異なる種類の複数のWAN回線を束ねて同時利用することで通信の安定性と通信速度の向上を実現。(機種により異なりますが、最大で18回線)
  • パケットコピー
    異なる種類の複数のWAN回線に同じパケットを複製して送信し、パケットロスや回線の切り替わり時の通信品質低下を防ぎます。
  • ホットフェイルオーバー
    複数のWAN回線をいくつかのグループに分け、平常時のアクティブ回線、アクティブ回線障害時のホットスタンバイ回線として設定できます。

今回CASO様よりお借りしたのはMAX HD4 MBXです。

図2. Peplink MAX HD4 MBX (※2 CASO様公式サイトより)

こちらのルーター、WAN回線として有線1Gbpsポートが3つ、LTE-Advanced(キャリアアグリゲーション対応)用SIMスロットが4つ、USB通信ポートが2つ、さらにWi-Fiインターフェースを2つ搭載しており、「AP+WAN」「WAN×2」「AP×2」の構成に対応。
合計で最大11本のWAN回線を同時利用可能なモンスターです。

ここだけ見ても「切れない通信接続」へのこだわりの強さがうかがえます。

パケットコピー : 「切れない通信接続」を実現する機能

SpeedFusion VPNで提供されるパケットコピーはWAN Smoothing(WANスムージング)機能によって実現されます。

これは複数のWAN回線に対してユーザトラフィックを複製して送信し、受信側のルーターで整列して元の通信ストリームに戻して宛先へ届ける機能です。

図3. WAN Smoothing機能の簡単な説明

複数のWAN回線で同じデータを同時に送信しているため、どちらか一方の回線で通信の一部が欠落したり、回線が通信不能に陥ったり、通信が不安定な場合でもユーザトラフィックが欠損する、つまり体感品質が低下する可能性は極めて低くなります。
Starlinkのような定常的にパケットロスが発生する回線において特に高い効果を発揮します。

この機能を体感するため、以下の試験を実施しました。

図4. WAN Smoothing機能を有効化した状態で光回線に通信断を発生させる

試験の手順:

  • 有線の光回線とStarlink 衛星回線を用意し、インターネット上に構築したFusionHub(Peplink仮想ルーター)をSpeedFusion VPNで接続します。
  • WAN Smoothing機能を有効化します(複製割合は100%、つまり 元データ+複製データ = 1+1 で通信データ量は2倍に増加)。
  • 図4の右側PCで動画を再生し、左側PCへ画面転送します。
  • 画面転送中に光回線で通信断を発生させ、画面転送の見え方が変化するかを確認します。

WAN Smoothingの有無で違いを確認するため、同じようにWAN Smoothingなしの以下図5の試験も実施します。
こちらの試験ではホットフェイルオーバーで通常時は光回線だけを利用して送受信、光回線通信断でStarlinkに送受信が切り替えられます。
(通信断検知までの時間は1秒に設定)

図5. WAN Smoothing無しのホットフェイルオーバー試験

実測、「マルチ回線ルーター」PeplinkのWAN Smoothing

本動画は著作権保護のため一部を加工しております。
CASO様監修のもと、加工後の動画が実際の検証結果を十分に再現できており、表現に誇張や誤りがないことをご確認いただいております。

こちらの動画は音声無しに加工しておりますが、WAN Smoothing ONの場合、音声も途切れや乱れを感じ取ることはできませんでした。

まとめ

本当に切れないんだなぁと感じながら楽しく試験しました。

特に面白かったのが、動画では小さくてわかりづらいのですが、Starlink回線のみに切り替わった後もWAN Smoothing有効であればPingロスも少ない、という部分です。
Starlinkはパケットロスが頻発する回線なのですが、WAN SmoothingはStarlink回線1本に切り替わった後でもパケットコピーが動作するため、こうしたWAN 回線のみを使用している状況であってもこれを吸収しているようです。
これは当社で取り扱っている他のメーカのルーター製品では実装されていないはずで、大変興味深い結果でした。

今回ご紹介したのはWAN Smoothingの部分だけでしたが、他の機能も確認しております。
機会があればご紹介したいと思います。

最後に、ご協力いただいた関係各社様にこの場を借りてお礼申し上げます。

免責事項

2025年02月20日時点での確認結果です。
今後のアップデートにより動作が変更される可能性があります。
今回の試験は実際のインターネット回線を使用しており、時間帯やその他の要因によって通信環境が変化する状況で実施しています。
本記事の内容は当社で実施した結果を事実として報告するものであり、触れられている機能や効果を保証するものではありません。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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