
AI Agentによるコーディングアシスタントとして、Cursor・Cline・Devinに注目が集まっています。これらを利用すると、コード作成・解析・テスト等が生成AIによって自動化されます。今回はClineを使って、IT機器のログ分析やコンフィグ作成が可能かの検証を行いました。
- ライター:荒牧 大樹
- 2007年ネットワンシステムズ入社し、コラボレーション・クラウド製品の担当を経て現在はAI・データ分析製品と技術の推進に従事。最近では次世代の計算環境であるGPU・FPGA・量子コンピュータに注目している。
目次
Clineについて
Clineは、Visual Studio Codeで使えるオープンソースのプラグインで、AIがコード生成をサポートしてくれるツールです。使うAIは選べるようになっており、今回はAWS Bedrock上で動くClaude 3.5 Sonnetを使っています。
Clineには、次のような機能があります:
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プロジェクト内のファイルを編集・作成
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ターミナルコマンドを実行
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コードの検索や分析
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コードの問題点を見つけて修正
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指定したタスクを自動で実行
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他のツールと連携

ClineのMemory Bank機能について
ClineのMemory Bank機能は、構造化されたドキュメントシステムで、セッションを通してClineがコンテキストを維持するのに利用されます。ファイルにプロジェクト情報を記述しておくことで、Clineはプロジェクトの情報を継続的に扱えます。ClineのMemory Bank機能はプロジェクトの状態を記憶する為に、プロジェクトに関する6つのファイルを生成してくれます。
ファイル名 |
内容 |
projectbrief.md |
プロジェクトの概要。機能要件・非機能要件。PJのゴール・Scope等 |
productContext.md |
問題・解決策。UI/主要機能の目標。期待される成果。 |
activeContext.md |
現在の開発フェーズ、実装方針、課題、次のステップ、品質指標 |
systemPatterns.md |
System構成の機能要件を説明。アーキテクチャ、コアコンポーネント、デザインパターン |
techContext.md |
ファイル構成や、使っているソフトとVersionや依存関係。サポートする環境。 |
progress.md |
完了した作業、進行中の作業、未着手の作業、進捗状況 |
ClineによるNW機器ログの分析
今回はClineがITインフラで行う作業をどの程度効率化出来るかのテストを行いたいと思います。具体的には、NW機器のログを用意して「ログ分析からドキュメント作成」、「ログからわかる問題点指摘」、「追加で行った方が良い検証の指摘」、「検証に必要なコンフィグの生成」をお願いしています。
検証構成について
今回はVS CodeのRemote-SSHの拡張機能を使って、RemoteのLinuxサーバ上で検証を行っています。Remote Server側に拡張機能のClineがインストールされており、ClineはAWSのBedrock上のClaude 3.5 Sonnetに接続しています。

利用するNW検証ログについて
今回は小規模なキャンパスネットワークに関しての検証を行ったログを利用しました。検証毎にフォルダに分かれてログが保存されており、約250程度のログファイルを含んでいます。今回は構成図等は与えず、検証時のログとコンフィグのみをClineに与えました。

Clineによるログ分析とドキュメント作成
このフォルダに含まれるログをClineに分析してもらい、検証プロジェクトの状況を解析してもらいます。以下のプロンプトを打ちました。
「 configで設定。数字のフォルダに検証結果が入っています。initialize memory bank」
新たにMemory bankフォルダが作成されて、6つのファイルが生成されました。各ファイルにプロジェクトの概要が、プロジェクトの進捗状況(今回だと検証の進捗状況)が保存されました。以下プロジェクトの進行状況を記述するprogress.mdの例です。何の検証が行われたかをログから推測しています。

ログからわかる検証の問題点の指摘
次にログからわかる今回の検証の問題点の指摘をお願いしました。Promptは以下になります。
「検証の実施済みのログを見てみて、問題がある内容等やもう一度実施したほうが良い検証はありますか?」
スタック構成時の断続的な切断や、フラッシュメモリの使用率について警告がされました。

追加で実施した方がよい検証
プロジェクトの状況はつかめたようですので、更に追加で実行した方が良い検証を提案してもらいます。以下プロンプトを入力しました。
「これ以上必要な検証項目等があればmemory-bankに追記してください」
IPv6の機能検証や、セキュリティの機能検証を推奨されました。

コンフィグを追加
追加で行うべき検証についてのコンフィグ作成をお願いしました。
「新しく実施する検証用のConfigを作成できますか?」
追加で行うIPv6に関するコンフィグが生成されました。

結果と所感
Clineを使って、ログ解析、設計書作成、問題点指摘、追加検証項目作成、追加コンフィグ作成の流れを実行できました。一連の流れでかかった時間は20分程度で、$5-$10程度のLLM利用料が発生しています。さらに、Clineの機能を使えば、実機への投入や検証の補助や実行と、検証結果の再分析も今後は可能になると考えられます。今回は利用しませんでしたが、MCP Serverを使った機能拡張も様々な可能性があると感じています。Clineを活用する事で、「検証作業」、「現地作業終了後のログチェック」等様々な、ITインフラのエンジニア業務の効率化が可能になると考えています。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。