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生成AIとロボット技術が切り拓く未来、IT運用者を支援するサイドキックAI

前編では ONUG が主催する AI Networking Summit 2024 NY において発表のあった最新インフラトレンドやユーザー企業の事例を紹介しました。

後編では実際にネットワンが AI Automate といったトピックにて発表した取り組みについてご紹介したいと思います。

ライター:千葉 豪
2009年ネットワンシステムズに入社し、IaaS(Infrastructure as a Service) を始めとしたクラウド基盤技術および管理製品を担当。現在はコンテナ技術を中心とした社内開発基盤・解析基盤の構築・運用や関連した自動化技術、監視製品などの技術検証を行っている。

目次

日本が抱える社会課題

近年、日本社会においては情報格差の拡大、少子高齢化、脱炭素といった社会課題が顕在化してきており、企業においてもこのような課題の解決がステークホルダー含め共通の課題になってきています。

特に少子高齢化に関しては欧米と比較しても顕著であり2020年時点で28.6%2030年頃には約3割が65歳以上となり労働人口の減少は避けられません。

弊社発表資料より抜粋

さらにIT人材に注目してみると、経済産業省が公表したIT人材の供給動向の予測では2030年時点で最低でも16万人、最大で約79万人のIT人材不足が生じることが試算されております。

経済産業省 「IT 人材需給に関する調査」調査書より

ネットワンにおける AI・ロボット活用

ChatGPT が登場して約2年、近年では様々なAIエージェントが各社から発表され注目を浴びており、企業における人材不足を解決するソリューションとして注目されています。

AIエージェントとは特定の目的に対し「自律的」に行動するシステムのことを指し、従来の生成AIの利用が「対話的」であるのに比べより高度化されたシステムと捉えることができます。

ネットワンではこれまで生成AIやロボットといった最新技術を活用する中で実際の業務や弊社オフィスファシリティに組み込むことでこのような社会課題解決の検討をしてきました。

その中で我々は今後 AI の利用シーンも現在のように対話の中で答えを模索する形ではなくAIエージェントのように人間の代わりにエージェントが自律的に様々なシステムを横断し答えを導く形になると捉え、「IT運用者」という1つのモデルケースに対し様々なタスクを自動実行するエージェントを適用してみました。

この度の AI Networking Summit NYでの発表ではこのような取り組みを未来のIT運用と題しこれまで活用してきた生成AI技術やロボット技術をベースにAIエージェントを間に介すことで相互連携しつつIT運用業務を最適化するソリューション群を紹介しました。

発表内のデモではIT運用者の様々な働き方への適用を想定し、モデルケースとしてリモートワーク、オフィスワーク双方での活用を対象としており、特にオフィスにおいては弊社イノベーションセンターのファシリティを活用しオフィス全体の概要把握から部屋の入退室管理まで多岐にわたるソリューションが含まれています。

  • テレワーク
    リモートでの業務時は運用データを監視システムから参照するとともに、AIエージェントを活用することで膨大な監視データから注目するべきデータを抽出します。
  • オフィス
    出社時はフリーアドレスとなるためオフィスの混雑状況を2Dマップ/3Dマップ上で確認、AIエージェントにおすすめの場所を問い合わせることができます。
  • 施錠管理
    サーバールームや資産保管されているような施設への出入りではアシスタントロボットが顔認証を実施しドアの開閉を管理します。これにより台帳管理、物理鍵の管理から解放されます。
  • 作業トレース
    他方、検証業務のような複雑な作業はロボットやAIでの置き換えは困難となります。そのため熟練者のスキル継承を目的とし、視線トラッキングシステムを活用し熟練者の作業データを元に検証業務を支援します。

これらのソリューションは下図に示すように我々が用意した AIエージェントが OpenAI API を介してプロンプトの内容を分析、必要に応じて社内外のサービスと連携することで実現しています。

システムアーキテクチャ

人間とのインタラクションにはインターフェースとして Temi と呼ばれるアシスタントロボットを利用しています。チャットではなくオフィスにいるロボットに話しかけることでこれらの機能を利用することができ、AIを単なるツールではなくビジネスを支える相棒(サイドキック)としての活用を模索しています。

また、このような取り組みを通し実際にシステムを動作させることで見えてきた課題もあります。

  • 音声認識精度、生成AIの精度
    上記の通り Temi は音声対話による制御が可能ですが正常に会話の内容を聞き取れない、聞き取れたとしても生成AIが文脈をうまく解釈してくれないといったモデルの精度の問題です。
    こちらは今後利用するモデルの検討やモデル自体の進化が望まれるところです。
  • ユースケースに応じたモデルの調整
    仮に似たようなリクエストをしたとしても話者によってプロンプトのニュアンスのズレが生じ、生成AIの出力が期待されたものと異なるといった事象が発生します。従来の対話形式の利用であれば追加のプロンプトで情報を絞り込むことができますが、自律的な動作を期待されるAIエージェントにおいては利用するモデルのファインチューンイングやエージェント自体が出力結果の評価、再リクエストするといったフィードバックループを実行する必要があるかもしれません。
  • サイドキックとしてのロボットとしての活用
    現状では Temi は音声対話のためのインターフェースとしてしか活用できておらず、タブレット利用などと大きく変わりません。そのため、今後は Temi が出力結果からオフィス内の案内を行うといったロボットならではのタスク処理を実装することで、AIがより一層我々の信頼できるパートナーとして活躍することが期待されます。

現在は実験中であり小規模での適用に留まっておりますが、今後さらに汎用的な利用を考えると開発者にとってこのような課題は負担となってしまいます。現在では Google / AWS / Microsoft といったクラウド事業者からこのようなエージェントの開発サービスが発表され、ローコードでの AIエージェントの開発や RAG による拡張が容易になりつつありますが、カスタマイズ性が高い反面、各サービスの深い理解や一部のプログラミング知識が必要となり、利用者によってはハードルが高くなることがあります。

今後は、開発者が技術的知識に頼らず、直感的にAIエージェントを開発できる環境が求められ、より汎用的なエージェントの設計・開発、物理的なロボティクスなど多様なインターフェースとの連携などを包括的に支えるプラットフォームが重要となってくると思われます。

まとめ

本記事では ONUG の主催する AI Networking Summit 2024 NY において弊社が AI Automate に関して発表した内容を紹介しました。

本発表では IT 運用者の業務内容を1つのモデルケースとしてAIエージェント、ロボットといった最新技術を適用し業務最適化を図ったデモを含む内容となっております。

実際に動作している様子は当日の発表からも確認することができますので一度ご覧ください。

また、弊社ではこのような社会課題解決を見据えた先端技術を体感するためのデモルーム「Innovation Showcase」がございます。このようなデモにご興味ある方は、ぜひ当社営業までご相談いただけますと幸いです。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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