
Nutanix AHV® (AOS 6.5)環境におけるLife Cycle Manager (LCM)によるアップグレードの手順についてご紹介いたします。
- ライター:榎本 真弓
- Broadcom社及びNutanix社の仮想化製品の導入を推進しております。各製品の技術Updateや使い方など、有益な情報をお届けできればと思っています。
・vExpert 2020-2025
・Nutanix Certified Services - Multicloud Infrastructure Master
目次
ICT環境の仮想化基盤として、注目が集まるNutanix Cloud Platform™
企業のICT環境における仮想化基盤の構成には大きく分けてオンプレミス型、パブリッククラウド型とありますが、オンプレミス型はセキュリティ管理を自社内で行う事により、高いレベルで実装出来る強みがあります。オンプレミス型においても製品が多様化する中で、新たな選択肢として大きな注目を集めているのが Nutanix Cloud Platform™ となります。Nutanix Cloud Platform は、Nutanix 社の提供するマルチハイパーバイザー(Nutanix AHV®、VMware ESXi™)対応のHCI(Hyper-Converged Infrastructure)となり、また同一のライセンスでパブリッククラウド型(AWS®、Azure®)としてご利用いただく事も可能です。
Nutanix Cloud Platform 付属のハイパーバイザーとなる Nutanix AHV において、現在広くご利用いただいているソフトウェアリリースは AOS 6.5 LTS となりますが、こちらの End of Support Life は2025年6月となっており、アップグレード計画についてもご検討をいただく時期になっているかと思われます。
今回はそうした背景も踏まえまして、Nutanix AHV(AOS 6.5)における Life Cycle Manager(LCM)を使用したアップグレード機能についてご紹介をさせていただきます。
Life Cycle Manager (LCM) とは
Life Cycle Manager(LCM)は Nutanix Cloud Platform に付属する、クラスタのソフトウェアおよびファームウェアのアップグレードツールとなります。
Nutanix AHV において LCM は、基盤となるハードウェアのファームウェアのアップグレードから、ハイパーバイザーのアップグレード(AHV)、及びその上で稼働する各種ソフトウェアのアップグレード(例:Prism Central™、Foundation™)を実施します。AOS 6.5 以降における Nutanix AHV のアップグレードは、こちらのツールを利用して実施します。AOS 6.5 以前は、1Clickアップグレードと呼ばれる機能とLCM を併用する形でしたが、AOS 6.5 以降は基本的なアップグレード作業は(※Nutanix Files等を除き)LCM のみで実施可能です。
LCMの特徴は以下の通りです。
- アップグレード中の通信への影響:仮想マシンが稼働するホストを1台ずつアップグレードし、該当ホストのアップグレード前に仮想マシンをライブマイグレーションにて他のホストに移行しますので、複数のホストが稼働する環境において、仮想マシンの通信は維持されます。
- 利用バージョンの互換性確認:製品間のバージョンの互換性を自動で判断してアップグレードを実施しますので、事前に互換性の確認を行わずにアップグレードを実施する事が可能です。(ただし、事前に互換性の確認を行う事が推奨されます。)

検証内容
検証内容としては、下記のアップグレードを実施いたしました。
- AOS : 6.5(LTS)→ 6.5.5.7(LTS)
- AHV : 20201105.30398 → AHV-20220304.488
- Prism Central : pc.2022.6.0.10 → pc.2022.6.0.11
- Hardware : NX-1175S-G8(1U × 4ノード) ※vDisk 20GiBのVMが2台稼働中
※なお、ターゲットバージョンの選定/互換性の確認は、対象ハードウェアの型番情報を元に Compatibility and Interoperability Matrix(My Nutanixアカウントが必要)を使用して実施します。
アップグレード手順について
今回はAHVクラスタのみでなく、Prism Central のアップグレードも実施しました。AOS 6.5 における Prism Central を含めた AHVクラスタ のアップグレードの標準的な実施手順は以下の通りとなります。

なお、NCC™ については以下の機能となります。
・NCC(Nutanix Cluster Check):クラスタの健全性確認ツールであり、トラブルシューティングツールとしても利用する為、アップデート前後に必ず最新版のNCCにて実施する必要があります。Prism Element > [ホーム] > [健全性] > [Actions] より実施します。

続いて、上記の手順のうち「2. Prism Centralのアップグレード」から作業内容について見ていきます。
Prism Central のアップグレード
- Prism Central 上のLCM のインベントリの実行:Prism Central にadminユーザでログインし、[管理] > [LCM] より [Perform Inventory] を実施し、アップグレード前の現在のバージョン情報を確認します。
- Prism Central上のNCCのアップグレードおよび実行 : Prism Central > [設定(右上の歯車アイコン)] > [Prism Centralをアップグレード] > [NCC] タブより、[使用可能な互換バージョン] がリストされた場合は、NCCのアップグレードを実施します。(図はNCCのアップグレード後となります。)
SSH で Prism Central VM にnutanixユーザでログインの上、CLI にて NCC を実行し、エラーが無い事を確認します。
- Prism Central のアップグレード:Prism Central > [設定] > [Prism Centralをアップグレード] > [Prism Central] タブにて、[使用可能な互換バージョン] でアップグレード対象のバージョンを選択の上、[Download] し、手順に沿ってアップグレードを進めます。Prism Centralを3ノードクラスタ構成で展開している場合は、仮想IPアドレスにアクセスをする事で、Prism Central のアップグレード中も通信断がなくUI画面にアクセスする事が可能です。
Prism Central が1ノード構成の場合、30分程度でアップグレードが完了します。
- アップグレード後の確認作業:LCMインベントリの実行及びNCCの実行を実施し、アップグレードのバージョンの確認と、クラスタの健全性を確認します。
続いて、Prism Element™ におけるLCMによる、ソフトウェアとファームウェアのアップグレードを実施します。
LCMによるソフトウェア及びファームウェアのアップグレード
- Prism Element 上のLCMのアップグレード及びインベントリの実行 : Prism Element にadminユーザでログインし、必要に応じて LCM を最新バージョンにアップグレードの上、 [LCM] > [Inventory] > [Perform Inventory] より、クラスタのソフトウェアとファームウェアのバージョンの確認を実施します。Prism Element に関しても仮想IPアドレスにアクセスをする事で、アップグレード中も通信断がなくUIにアクセスする事が可能です。
- Prism Element上のNCCのアップグレードおよび実行:Prism Element におけるNCCも必要に応じてアップグレードを実施の上、これからアップグレードを実施する、ソフトウェアとファームウェアそれぞれでNCCを実施し、エラーが無い事を確認します。 [LCM] > [Updates] > [Software] (及び[Firmware])> [Pre-Upgrade] > [NCC Check] より実施します。

- LCMによるソフトウェアおよびファームウェアの事前チェックの実行 :アップグレード前に事前チェック(ドライラン)により依存性確認を行う事が出来 、アップグレードの失敗を回避する事が可能です。(ソフトウェアとファームウェアの両方で実施します。)[LCM] > [Updates] > [Software](及び[Firmware]) > [Pre-Upgrade] > アップグレード対象のモジュールを選択の上、[Upgrade Precheck] より実施します。
- LCMによるソフトウェアのアップグレード:[LCM] > [Update] > [Software] > アップグレード対象のモジュールを選択した上で [View Upgrade Plan] より、アップグレードを実施します。ホストは1台ずつアップグレードが実施され、アップグレード対象となるホスト上で稼働する仮想マシンは、事前にライブマイグレーションで移行される為、仮想マシンへの通信影響はありません。


- LCMによるファームウェアのアップグレード:[LCM] > [Update] > [Firmware] > アップグレード対象のモジュールを選択した上で[View Upgrade Plan] より、アップグレードを実施します。ホストは1台ずつアップグレードが実施され、アップグレード対象となるホスト上で稼働する仮想マシンは、事前にライブマイグレーションで移行される為、仮想マシンへの通信影響はありません。


- アップグレード後の確認作業: 再度、LCMインベントリの実行と NCC の実行を実施し、アップグレードが正常に終了した事を確認します。
アップグレードの所要時間と仮想マシンの通信への影響について
アップグレードの所要時間は下記の通りとなります。また、本環境においては Prism Central は登録のみで特段機能を使用しておらず、Prism Central のアップグレードに際して仮想マシンへの通信影響は無く、Prism Element における LCM によるソフトウェア及びファームウェアのアップグレードに際しても仮想マシンへの通信影響は無い事が確認出来ました。

まとめ
今回は Life Cycle Manager(LCM)による、Nutanix AHV のアップグレード手順と、検証環境における所要時間についてご紹介をさせていただきました。LCM をご利用いただく事でスムーズに Nutanix AHV の環境のアップグレードを実施いただく事が可能となり、適切なライフサイクル管理を実施いただく事が出来ます。
弊社では今後も Nutanix Cloud Platform を始めとした、最適な仮想化インフラ基盤の構築、運用をご支援させていただきます。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。