
はじめに
弊社では毎年、新卒社員向けにネットワークに関する社内研修を実施しています。2022年までは主にオンサイトトレーニングを行っていましたが、新型コロナウイルスの影響を受け、現在はオンラインでのトレーニングが主体となっています。
今回は、オンラインでのトレーニングにおける課題を、スマートグラスによる遠隔支援を活用して解決した社内事例を紹介します。
- ライター:上野 寛登
- スマートグラス・ロボット・データ分析などを担当
現場業務の効率化を実現するため、各種ソリューションをご紹介しております。
目次
オンライントレーニングの課題
オンラインでのトレーニングは、受講生が地理的な制約を受けることなく、様々な場所から参加できるという利点があります。しかし、以下の3つの課題も浮き彫りになりました。
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実際の機器を直接見たり触ったりする機会が少ない
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現場エンジニアの動き方や所作がわかりにくい
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サーバールームなどの現場の雰囲気が伝わりにくい
これらの課題を解決するために、スマートグラスの使用を検討しました。
遠隔支援機能を活用したスマートグラスのトレーニング
弊社では、講師がスマートグラスを装着し、その映像をリアルタイムでオンラインの受講生に配信するスタイルを検証しました。スマートグラスから配信される映像は、講師の目線をそのまま映し出すため、受講生は「講師の作業中の目線や手の動き、現場の様子」をリアルタイムで確認しながら解説を受けることができます。
トレーニング内容
今回のトレーニングでは、ネットワーク機器のハンズオントレーニングを実施しました。ネットワーク機器を解説する講師と、研修を進行する講師の二名でトレーニングを進行しており、現場の講師によるハンズオントレーニングでは、物理的な作業に焦点を当て、紹介しています。
ケーブルの正しい配線手順の実演
物理的な配線作業を撮影しています。
ネットワーク機器の取り付け手順
ネットワーク機器の設置方法や、機器の取り付け方、機器本体の解説をおこなっています。
機器内部のコンポーネントの説明と動作確認
ネットワーク機器の細部を説明している様子。
スマートグラスから配信される映像により受講生がポートの形状まで確認することが可能です。
受講生側が視聴する画面。現場の講師が撮影した動画をリアルタイムで視聴できる。
トレーニング中の支援
トレーニングの際には、遠隔の講師もセッションに入り、対話形式でトレーニングを進める時間がありました。
講師同士が対話形式でトレーニングを進めることによって、一人の講師では説明されない、より深い内容の説明がおこなわれている印象でした。
また受講生からも複数回質問があり、技術理解が深まっていました。
(研修を進行する講師)現場からの映像を確認しながら、解説や受講生のフォローをおこなう
(現場の講師)スマートグラスを着用し、AR機能により受講生へ実際の機器の様子やエンジニアの動きを届ける
作業中に受講生からの質問にも対応できるため、リアルタイムのやり取りが可能です。現場のトラブルを想定したシチュエーションで、その過程の映像で共有しつつ、受講生からの質問に答えることができました。
トレーニングの効果
トレーニング終了後、受講生にアンケートを実施しました。以下のようなコメントが寄せられました。
肯定的な意見
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「講師の目線で作業を確認できたので、とても分かりやすかった。実際の現場で活用できる、実用的な学びをオンラインでできました。」
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「実際の現場の様子がリアルタイムで見られて、現場感覚が養えた。」
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「質問にその場で答えてもらえたので、わからない場所を放置せず、映像を見ながら理解することができた。」
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「フリーハンド状態の作業者の目線を見ることができた。」
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「スマートグラスを使っているか分からないぐらい違和感は感じなかった。」
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「Liveで見たことで、よりリアル性を感じ、身近に感じることができた。」
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「事前録画されたものよりも見やすいと思った。画面のブレも感じなかった。」
課題
上記のように、肯定的な意見が多数見られましたが、以下のような意見も有りました。
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「途中音声が途切れてしまうことがあった。」
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「後半映像が固まってしまい、ランプの色や配線が確認できない場面もあった。」
オンライン受講生の環境によっては、高品質の映像がネットワーク帯域に負荷をかけ、音声の乱れや映像のラグが発生することがあるようです。
まとめ
今回のトレーニングでは、スマートグラスを活用した遠隔支援による新しい学習体験が実現できたものの、技術的な課題も明らかになりました。
次回は、VRを活用した社内トレーニングの事例について紹介します。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。