
目次
はじめに
近年、企業において社員のエンゲージメントを向上させることが非常に重要な課題となっています。エンゲージメントとは、社員が企業に対して感じる信頼や満足感、そして自分が組織の一員として貢献しているという意識を指します。このエンゲージメントを高めることで、社員のモチベーション向上や、企業全体の生産性向上に繋がるとされており、さまざまな企業で積極的にその取り組みが行われています。エンゲージメントが高い企業では、社員同士の信頼関係が深まり、コミュニケーションが活発になり、結果として組織全体の雰囲気が良くなります。
このような取り組みの一環として、私は「誕生日」という個人的なイベントに注目しました。社員にとって誕生日は、一年に一度の特別な日であり、この日を会社が祝ってくれることで、社員は自分が大切にされていると感じることができます。このような小さな気遣いが、社員のモチベーション向上やエンゲージメント強化に大きく寄与する可能性があると考えました。
そこで、ICT(情報通信技術)を活用し、社員に笑顔を届ける取り組みとして、誕生日を自動的に祝うアプリケーション「Webex Birthday Bot」を開発しました。この開発は、社員一人ひとりを大切にする企業文化の醸成を目指すと同時に、新人向けのアプリケーション開発課題としても実施されました。誕生日祝いの重要性やそのメリットを考察しながら、このBotの開発に取り組んでいきました。
誕生日をお祝いする効果
社員の誕生日に対してお祝いコメントやメッセージを送ることには、いくつかのポジティブな効果が期待されます。誕生日は、社員が会社や同僚から特別な関心を向けられる日であり、それがもたらす影響は少なくありません。以下のような効果が生まれると考えられます。
社員のモチベーション向上
誕生日に企業からお祝いのメッセージを受け取ることで、社員は自分が組織の中で重要な存在であると感じることができます。これは、単に言葉だけではなく、組織全体が個々の社員に関心を持っているというメッセージを伝える行為でもあります。こうした経験は、社員のモチベーション向上に直結し、仕事への意欲や生産性の向上に繋がる可能性があります。また、社員が自己肯定感を持ち、前向きな姿勢で仕事に取り組むようになるため、チーム全体のパフォーマンスも向上すると思います。
エンゲージメントの強化
誕生日祝いは、社員同士のコミュニケーションを活性化するきっかけにもなります。特に大規模な企業では、社員同士が日常業務以外で接点を持つ機会が限られていますが、誕生日を通じて、普段はあまり話す機会のない同僚や上司との交流が生まれることがあります。このような小さなコミュニケーションの積み重ねが、組織全体のエンゲージメントを向上させ、社内の一体感を強める効果が期待されます。
組織文化の醸成
誕生日を祝うという行為は、企業が社員一人ひとりを大切にしているという姿勢を示すものです。このような文化を推進することで、職場内での感謝や尊重の気持ちが広まり、ポジティブな組織文化が醸成されていきます。結果として、社員同士が互いを思いやり、感謝の気持ちを表現し合う環境が形成され、職場全体の雰囲気が向上します。これにより、社員はより快適な職場環境で働くことができ、長期的な定着や生産性向上にも寄与します。
企業のブランディング向上
社員を大切にする企業の姿勢が外部にも伝わることで、企業のブランドイメージが向上する効果が期待されます。特に、従業員満足度が高い企業は、求職者にとって魅力的な就職先として映り、採用活動にもプラスの影響を与えると思います。企業内だけでなく、外部に向けたブランディング戦略の一環としても効果的です。
開発テーマ:Webex Birthday Bot
このBotは単なる業務自動化ツール以上に、企業文化の改善や社員満足度の向上に貢献する重要な役割を果たします。また、HR担当者の負担軽減にも繋がる可能性があります。
ストーリーボード
実現したいストーリーを4コマ漫画で表現してみました。
- 誕生日を寂しく過ごしている社員
- Botから誕生日お祝いカードを贈る
- 社員はお祝いカードをもらって、感動する
- 仕事のモチベーションが上がる
開発概要
Webex APIを活用し、社員の誕生日を自動で祝う機能を提供することを目的としました。指定した時間に誕生日カードを自動で送信するBotを開発し、これにより社員間のコミュニケーションを活性化させます。
システム要件の整理
・誕生日情報が記載されたCSVファイルを用意し、定期実行を行う。
・個人情報保護のため、CSVファイルは暗号化し、管理者がSSHを使って編集・アップロードできるように設計。
・出勤後、10時に誕生日カードをグループチャットに送信し、他の社員もお祝いできる環境を提供。
アプリケーションは、Pythonでコーディングする構成とし、CRONにて定期実行を行うこととしました。
システム構成コンポーネント
・Webex API
・Webex (Chat)
・通知制御用インスタンス(仮想マシン)
システム構成イメージ(構成図)
WebexのチャットルームにBirthday Botを追加すると、毎日10時に実行されるbirthdaydata.pyがenvファイルとCSVファイルを読み込み、誕生日がマッチしたらお祝いのメッセージをBirthday Botを通じてWebexのチャットルームに飛ばすように設計しました。また、管理者はSSHにログインし、CSVファイルをアップロード・修正できるように設計しました。
運用イメージ
利用者: 自分の誕生日にチャット通知が送られてくる
誕生日の当日10時になると、利用者のチャットルームにこのような誕生日メッセージカードが送られてきます。
管理者: 同意頂いた社員の誕生日情報をセットする
管理者はSSHにログインし、CSVファイルを編集・アップロードします。また、Pythonファイルを編集し、誕生日メッセージカードも修正が可能です。
チャレンジ
この開発では以下の点に挑戦しました。
- 誕生日を通じた社員のエンゲージメント向上
誕生日のお祝いを通じて、社員のモチベーション向上やエンゲージメントの強化を目指す試みを行いました。社員が企業から大切にされていると感じられるよう、誕生日メッセージを自動で送ることで、組織文化の向上を図りました。
- Webex APIの活用とシステム設計
Webex APIを使用し、誕生日データを基に自動でメッセージを送信するBotを開発する技術的なチャレンジを行いました。Pythonを用いてコーディングし、CRONを使って定期実行する構成を構築することで、システム全体を効率的に運用できるようにしました。
- 個人情報保護の取り組み
誕生日情報が記載されたCSVファイルを扱う際、個人情報保護の観点から暗号化や秘匿化に挑戦しました。社員のプライバシーを守りながら、適切にデータを処理するための技術的な工夫が求められました。
おわりに
この取り組みは、スモールスタートで特定の部門にてトライアルをしています。今後、トライアル部門を増やして、コメント・フィードバックをもらいながら改善をし、全社でも利用できる状態にすることで、社員エンゲージメントの向上に寄与していきたいと思います。更に、誕生日だけではなく、チームイベントスケジュール通知、自動返信機能など、様々なコミュニケーション自動化機能を開発してみたいと思います。
もし、本取り組みにご興味があれば、ご紹介させて頂きますので、弊社担当営業までお問い合わせください。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。