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【ネットワークはどのように進化するのか#2】複雑なネットワークニーズに追従する「AI駆動自律ネットワーク」

前回の記事では、自律ネットワークの基本概念とその利点について説明しました。今回は、その自律ネットワークが状況に応じて柔軟かつ自律的に変化するために必須となる、”インテント”(意図)という概念に焦点を当て、自律ネットワークにおけるその役割と具体的な弊社の取り組みを例に考察します。

ライター:赤坂 真樹
2007年にネットワンシステムズ入社後、技術担当としてCATV/社会インフラ、通信キャリア、製造業などの様々な業界を経て応用技術部にて先進技術を担当
2024年4月より、Net One Systems USA, Inc.に勤務
米国シリコンバレーに駐在し、先進技術調査とスタートアップ企業の発掘業務に従事
野山をこよなく愛する。最近はネットワークの自律化に注目している。

インテントとは何か?

インテントとは、ユーザーや管理者がネットワークやサービス・リソースに対して望む、特定の状態を維持するための具体的な期待を指します。ここでは自律ネットワークが何を達成する事が期待されているかの定義がインテントです。

インテントという用語は2014年頃から登場し、様々な団体が定義していますが、IETF(Internet Engineering Task Force)が「ネットワークの運用に使われる抽象的でハイレベルなポリシー」と述べています。

更に2020年にインテントの新しい定義を発表し、現在は「ネットワークが満たすべき運用上の目標や、ネットワークが提供すべき成果で、達成方法や実装方法を特定せずに宣言的に定義されたもの」とされています。すなわち、イベント、条件、アクションなどを規定するものではないという事です。

例えば、「常に最新のセキュリティパッチが適用され、脆弱性に対応する」や、「利用状況に応じて、常に利用帯域+10%の帯域を確保する」といった具体的な目標がインテントに該当します。このインテントを明確に定義することで、ネットワークはその目標を達成するための最適な構成や運用方法を自律的に選択・実行することが可能になります。

出典:
RFC 9315 Intent-Based Networking - Concepts and Definitions
https://www.ietf.org/rfc/rfc9315.pdf

Autonomous Networks Technical Architecture v1.1.1 (IG1230)
Autonomous Networks Technical Architecture v1.1.1 (IG1230) – TM Forum

自律ネットワークにおけるインテントの役割

自律ネットワークにおいては、ユーザーの視点に焦点を当てており、インテントは非常に重要な役割を果たします。インテントが明確に定義されることで、ネットワークは自分が何をする事が期待されているかを理解する事ができ、必要に応じて構成や運用方法を調整します。

インテントを満たすためには、ネットワークの継続的な改善が不可欠です。AN(Autonomous Network)ドメインでは、インテントに基づいた運用が行われるため、ネットワークの状態や環境の変化に応じて自律的に最適化を行う必要があります。このプロセスにはAI/MLが必要不可欠であり、ネットワークのパフォーマンスを常に最適な状態に保つために重要です。

自律ネットワークにおけるAI/MLの役割

AI(人工知能)と機械学習は、自律ネットワークにおいて不可欠な機能であり、ネットワークの改善に重要な役割を果たします。これらの技術は、ネットワークの状態を把握し、過去のデータから異常や需要を予測し、最適な構成を事前に提案することができます。例えば、機械学習アルゴリズムを使用することで、過去のデータからパターンを学習し、将来のトラフィックの増加や障害を予測することが可能です。これにより、自律ネットワークはインテントを達成するために予防的な対策を講じることができます。

さらに、インテントを達成するために必要な構成変更や設定変更にもAI/MLが大いに役立ちます。

従来の手動管理方法では、事前に疑似環境で検証を行い、作業手順書を作成し、本番環境で多数のネットワーク機器に設定を投入するなど、非常に煩雑な手続きが必要でした。また、作業手順にミスがあると重大な障害につながり、大きな損害を引き起こすこともありました。

こうした課題に対処するための解決策が、AI駆動型自律ネットワークなのです。

ネットワークのインテントへのオブザーバビリティ

ここで具体的な弊社の取り組みとして、Forward Networksをご紹介します。

様々な機能を備えていますが、自律ネットワークへの活用ポイントとして、インテント機能を実装しており、ネットワークがインテントを達成しているか、否かのオブザーバビリティ機能を提供する事が出来ます。

現時点ではインテントの定義が限定的ですが、AI駆動による自律的なネットワークの変化を定点観測することで、インテントが満たされているかを確認する活用方法が期待できます。

また、上述したような構成変更や設定変更の前後でインテントの達成状態を把握することも可能です。

これにより、作業内容に誤りがあった場合でも迅速に問題点を発見でき、確認漏れによる障害の継続を回避することができます。

従来から類似の機能を持った製品は多く存在しますが、多数のメーカーに対応しており、オンプレ・クラウド問わずネットワーク全体を包括的に把握できる製品は非常に限られています。

将来のインテントの活用とその有効性

インテントは、自律ネットワークの運用において中心的な役割を果たします。第一回で自律ドメインについて触れましたが、各自律ドメインに自己監視、自己設定、自己最適化の機能を実装することで、ユーザーや管理者のインテントを達成するための機能をAPIを通じて柔軟に呼び出すことが可能です。

さらに、自律ネットワークにはAIと機械学習が不可欠であり、データに基づくネットワークの継続的な改善と予測により、インテントの状態を維持し、常に最適なパフォーマンスを発揮できます。次回の記事では、自律ネットワークに密接に関連するAIと機械学習の機能について触れ、弊社の具体的な取り組みも紹介します。

※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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