
- ライター:金只 圭司
- 2008年にネットワンシステムズに入社。
入社当初からストレージ製品技術担当として様々なストレージ製品の検証、技術支援を行っている。最近はハイブリッドクラウド、マルチクラウド環境におけるデータのあり方を模索中。
目次
弊社ではVMware CloudTM on AWSで新たにNFSデータストアとしてサポートされたAmazon FSx for NetApp ONTAPについて、様々な検証を行っています。本記事では検証の一部として、NFSデータストアとしてのストレージのパフォーマンスの特徴、検証結果について簡単にご紹介します。
本記事では各製品、サービスの概要などは割愛していますので、ご了承ください。
基本的なサービスの概要と仮想マシンのマイグレーションに関する検証結果については、下記の記事でご紹介していますので是非ご覧ください。
VMware Cloud on AWS+Amazon FSx for NetApp ONTAP環境に仮想マシンを移行してみた
FSx for NetApp ONTAPのI/Oアーキテクチャ
FSx for NetApp ONTAPでは図1のようなアーキテクチャでI/O処理を行います。
図1. FSx for NetApp ONTAPのI/Oアーキテクチャ
IOPSは、自動での設定か、必要なIOPSサイズを自分で設定することになります。インメモリキャッシュやNVMeキャッシュなどは、FSx for NetApp ONTAPの性能を向上させる目的で利用され、スループットキャパシティの設定によってこれらのサイズが変わります(図2)。

図2. Amazon FSx for NetApp ONTAPのパフォーマンス情報
まとめるとFSx for NetApp ONTAPにおいては、以下の設定がパフォーマンスを決める重要な要素となります。
- スループットキャパシティ(128MB、256MB/s、512MB/s、1,024MB/s・・・)
- IOPS
- 自動プロビジョンド(1GBあたり3 IOPS) ※ストレージ容量依存
- ユーザプロビジョンド(直接IOPS値を指定)
こちらの前提の上で検証の内容についてご紹介していきます。
※FSx for NetApp ONTAPのパフォーマンス情報について詳細はこちらをご確認ください。
Amazon FSx for NetApp ONTAPのパフォーマンス検証結果
はじめにパフォーマンス検証結果をご紹介します。パフォーマンス検証は図3の内容、構成で検証を行いました。
図3. VMware Cloud on AWS + Amazon FSx for NetApp ONTAP検証環境
検証環境では、スループットは512 MB/sで設定していますので、図2のパフォーマンス情報で見ると18,750 IOPSが参考値となりますが、設定でIOPSは自動、容量は2,048 GBにしているため、期待されるIOPS値は6,144 IOPSとなります。
検証結果
検証結果は図4の通りの結果となりました。
図4. FSx for NetApp ONTAPの性能検証結果
結果としては、Random/Sequentialともに期待値である6,144 IOPSをほとんど上回っていますので、期待以上の性能が出ていると云えます。今回特にWrite性能が非常に高いという結果になりましたが、こちらはNVMeキャッシュの効果によるものと考えられます。
スループットに関しても、Sequential I/Oにおいては800 MB/sとベースラインである600 MB/s以上の値を計測できているため、期待通りの性能であると云えます。
注意点としては、Random Readでブロックサイズが大きくなると、遅延が10ms以上となってしまっておりますので、このようなIO特性を持つアプリケーションでは事前に動作確認をした方が良いかもしれません。
FSx for NetApp ONTAPでは、必要なIOPS値を手動で設定することもできますし、自動の場合でもSSDストレージ容量を増やすことで、パフォーマンスをさらに向上させることが可能ですので、必要に応じてパフォーマンスを変更することが可能です。そのため、スモールスタートで利用を始めて、足りなくなったら設定を変更するといった運用もできます。
Amazon FSx for NetApp ONTAPのスループット変更時の動作
前述の通り、Amazon FSx for NetApp ONTAPでは必要に応じてパフォーマンスに関するパラメータを変更することが可能です。具体的には下記のような設定です。
- スループット値を変更
- 手動でIOPS値を設定、変更
- ストレージ容量を変更
これらはAWSマネージメントコンソールから実行できますが、1つだけ気になる点がありました。それは、スループット値(MB/s)を変更する際にFSx for NetApp ONTAPのノードがフェイルオーバ、フェイルバックが発生する点です。いつでも自由に変更できるとはいえ、ノードのフェイルオーバ、フェイルバックが発生した際に継続したサービス提供が可能なのか、その時のネットワークの影響について検証してみました。
検証方法
(1) VMware Cloud on AWS上の仮想マシンから、FSx for NetApp ONTAPのNFSサービスポート(LIF)に対して、pingを実行
(2). AWSマネージメントコンソールから、FSx for NetApp ONTAPのスループットキャパシティを変更
(3). フェイルオーバ発生時のping結果を確認
検証結果
結果は図5、図6で示した通り、pingが1パケットロス程度となりました。この程度であればNFSサービスとしては問題なく継続可能と判断できます。
また、FSx for NetApp ONTAPはアクティブ/スタンバイのノード構成ですので、性能が下がることもありません。
図5. スループットキャパシティの変更
図6. NFSサービスポートに対するping結果
補足ですが、スループットを変更した際、内部的なパフォーマンス変更処理により、処理自体は数十分程度かかることを確認しております。(こちらは変更するパラメータによって異なる可能性があります)
まとめ
本記事では、VMware Cloud on AWSの外部データストアとしてAmazon FSx for NetAppを利用した場合のパフォーマンスの設定と検証結果と、スループットキャパシティ変更時に発生するフェイルオーバ時のネットワーク影響についてご紹介しました。
ただ、このソリューションは頻繁に改善、アップデートが進められているため、本記事の情報はあくまで参考としてお考え下さい。(変更される可能性もあります)
例えば、
・当初はFSx for NetApp ONTAPのシングルAZ構成をサポート(当初はマルチAZのみ)
・NFS v3およびv4.1においてnconnectもサポート(性能向上)
といったようなアップデートもすでに行われています。
今後、実際に利用されるケースも増えてくるソリューションと考えており、弊社では今後も様々な検証を行っていきますので、最新情報や検証結果を適宜ご紹介していきます。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。