
- ライター:佐々木 藏德
- フィジカルセキュリティ、サーバ、ストレージ、OSのプラットフォーム基盤関連業務を経て、2016年ネットワンシステムズに入社。
大手民間企業、重要インフラ施設の構築設計に多数関わっている。
現在はフィジカルセキュリティ製品に関する市場戦略策定に従事。
目次
初めに
従来のネットワーク型カメラは技術進化によって、CCTVといわれていた防犯カメラの用途から、今ではセンサーデバイスの一つとしての利活用が進んでいます。
また、映像は証跡として保存されるだけではなく、AI技術やディープラーニング技術による自動解析によって今までにはない形での利活用方法が検討されています。
今回はネットワンシステムズが取り組む統合映像管理基盤に関する情報発信の第1弾として、「スマートマニュファクチャリングにおける映像IoT」の観点から映像利活用の概要についてご説明致します。
製造業における映像利活用の概要
製造業の生産ライン現場では、既にカメラまたは各種センサーを利用して製品生産の自動化を行い、生産効率を高めています。
生産する製品の種類・形・大きさによって、活用されている技術や仕組みはそれぞれ異なりますが、製造ライン全般において映像データを利用する目的と課題は以下の2つに分類されます。
①完成検査
・ライン上に流れている製品の不具合検査、製品ロット管理
・静止画による解析(RAWデータによる処理)
・生産ラインを止めることなく稼働し続ける必要があるためかなり高性能な機材が必要
・別途解析用のソフトウェアが必要(製品ことにカスタマイズ)
②事後保全
・稼働状況全体の可視化、ライン停止時の停止理由解析等の保全用途として利活用
・動画による証跡データ保管
・汎用的なIPカメラを利用し構築するケースが多い
それぞれの関係性について、以下の図を用いてご説明致します。

①完成検査を目的としたシステムは、生産ラインの一部として組み込まれていることが多く既に様々な現場で活用されていますが、このシステムはあくまでも正常稼働中の生産ライン上での製品自体の不具合の有無を判断することに特化しています。
そのため、万が一製品不具合が発生した場合証跡データが残っておらず、不具合発生原因、ライン上のトラブル発生原因を含めて、不良品が発生する根本原因を突き止めることが非常に困難となります。
そこで用いられるのが②事後保全を目的としたカメラのシステムです。
②事後保全システムは①完成検査システムとは異なり、製品の不具合の判別はできないものの、ライン全体の動きや生産装置の稼働状況を動画証跡として残しておくことが可能です。
万が一製品不具合が発生した、またはラインが停止した場合は、ライン状況を撮影記録している録画証跡データを見返すことでラインの状況を細かく分析することが可能となり、不具合の根本原因を突き止めることができるようになります。
上記の通り、①完成検査システム②事後保全システムは映像を取り扱うシステムといった部分では似ている様にも見えますが、その特性は大きく異なり、お互いを排除するものではなく補完・共存することで更なる効果を生むことになります。
VMS(Video Management System)を軸とした映像統合基盤の利活用
VMS(Video Management System 以下VMS)は元々防犯カメラの用途で作られており、各種ビデオデータを保存・管理・運用を可能とする製品を表します。
そして現在ではカメラの域を超え、入退室装置やセンサー等の様々なものが接続できるようになり、他にも下記に挙げるいくつかの機能と特徴を備えています。
このVMSが製造現場で注目され、前項で説明した②事後保全システムとしての利活用が進んでおります。
- オープンアーキテクチャ採用による高汎用性、高拡張性を実現
- IPネットワーク技術を基盤とし、各製品との接続が簡単に行える
- カメラだけではなく、PLC・センサーを含め様々なものが接続できる
- サーバに保存されている証跡データの二次利用が可能
カメラ映像の証跡管理だけなら、ドライブレコーダの様にもっと簡単な仕組みでも証跡を残すことは可能ですが、VMSを利用して映像利活用するポイントとしては、「カメラ以外のセンサー又はPLCなどの情報も連携できる点」、そして「記録されている又はライブデータを簡単に二次利用できる点」が挙げられます。
それぞれのモデルケースについて例をご説明致します。
PLCまたはModbusからのでデータ連携で例えると、生産ラインに設置しているPLCからの数値データをリアルタイムに読み通り、何か一定数値以下になった場合はエラーとして扱い、カメラの映像データにメタ情報を残し、関連メタ情報を持つ映像を後から調査することで、エラーの原因調査をより簡易にすることが可能となります。さらに、出力する仕組みと連動することで、自動的にオペレーターへアラームを出すことや、複数のカメラ映像記録と連動してレポートを作成するといったことが可能になります。
映像解析の連携での利用シーンでは、サーバに保存されている録画データやライブのリアルタイム動画データを解析エンジンにインプットし、AIまたはディープラーニング解析を行うことが可能となります。映像解析で利用できる製品は様々ですが、保安の目的、安全管理の目的、品質管理の目的等、それぞれの目的に応じて多種多様な製品が作られており、利用シーン毎に個別にカメラを導入し運用することは決して効率が良いとは言えません。
一つの映像基盤で管理されているカメラを有効利用し映像解析を行うことで共通設備として利用できる点や、解析結果をVMS側に一括集約することで解析結果の参照が容易になるなど、より効率の良い映像解析基盤を作ることが可能になります。
生産現場では常にかなり膨大な数のセンサーやカメラ、シーケンサーが動作しており、これらのデバイスが一つの基盤上を軸に相互動作し、生産効率、品質を向上させることがスマートマニュファクチャリングにおける映像IoTの在り方と言えます。
まとめ
VMSシステムは単純にカメラをまとめて運用管理するだけのシステムではありません。カメラ以外にも様々なデバイスが接続でき、統合運用することでその真価は発揮します。
ネットワンシステムズではVMS製品をはじめ、ネットワークカメラ、そしてVMSを運用するためのインフラ基盤も併せて提供しております。VMSまたは映像IoT基盤をご検討される際は弊社までご相談ください。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。