
- ライター:大河原 昂也
- 2021年、ネットワンシステムズに入社。現在は主にクラウド、インフラ管理、自動化を担当。
目次
はじめに
前回は、ITに関連するビジネス課題について説明しました。今回はその「続編」としてスキル・人財不足の問題に焦点をあて、この問題に対しての解決策として私たちが実施したシステム検証内容をご紹介します。
実施した内容
今回、私たちは、チャットツール内の特定Botに指示内容を送信するだけで仮想マシンの作成・削除をする、という手順のシステム化を行いました。
仮想マシンの作成・削除をする場合、通常では仮想マシンの管理ソフトウェアにログインしたのちにいくつかの設定作業を行う必要がありますが、今回私たちがシステム化した手順では、作業完了までのオペレーションが最小限となるため、工数の減少とオペレーションミスの抑制が期待できます。
システム化にあたり、Intersight Cloud Orchestrator(以下、ICO)を用いています。
ICOはCisco Intersightのコンポーネントのひとつで、ハイブリッドクラウドに対応したオーケストレーション機能を提供します。
定義済みのタスク・ワークフローをGUIベースで組み合わせることで、シンプルに開発ができます。特に、インフラ管理関連のタスク・ワークフローが数多く定義されています。
そのため、ICOは仮想マシンの作成・削除を簡単に実装できます。
構築システム概要
構築したシステムの概略図は図1のとおりです。
このシステムは主にCisco Webex、サーバレスコンピューティング(AWS LambdaやGoogle Cloud Functionsなど)、ICOで構成されます。サーバレスコンピューティングは、WebexとICOの橋渡し役を担います。仮想マシンは、VMware vCenter Server配下で作成・削除されます。

図1:構築したシステムの概略図
システムの流れは次のとおりです。
・【手順1】 まず、Webex Botが管理者に対しアダプティブカードを提示します。
・【手順2】 管理者は、カードに操作内容を記載します。
手順1で提示されるカード例は図2の左側で、手順2で管理者が記入する指示例は図2の右側で確認できます。ここでは、社員番号に紐づく仮想マシンの作成・削除を想定されたカードが提示されています(以下記載される社員番号はイメージです)。

図2:提案されるアダプティブカード例(左図)と管理者が記載する指示例(右図)
・【手順3】 上記の手順2で記載された指示内容は、WebexのWebhook機能をもとにサーバレスコンピューティングに渡されます。
・【手順4】 サーバレスコンピューティングは指示内容を踏まえて、IntersightのAPIをたたきます。
・【手順5】 それにより、適切なワークフローが適切なパラメータのもと動作します。
・【手順6】 動作結果は、Webex Botを介し管理者に通知されます。手順6での通知例は図3のとおりです。

図3:作業結果の通知例
IntersightのIntersight Virtualization Service(以下、IVS)機能を用いることで、仮想マシンが正しく作成されていることを確認できます(図4)。

図4:IVSによる仮想マシンの確認
このように、Webexへの指示内容の入力だけで、意図する仮想マシンの作成が可能となります。ここでは触れませんが、仮想マシンの削除も問題なく行えます。
今回は、vCenter Server管理の基盤のみというシンプルな環境かつ仮想マシンの作成・削除という簡単な操作について検討しました。より複雑な環境・操作に関しては、今後検討する予定です。
ICOは、ハイブリッドクラウド環境で様々な操作に対応可能です。そのため、ICOは複雑化するインフラ管理に対して適切にアプローチできるツールだと考えています。
最後に、今回使用したICOのワークフローを紹介します。図5に、仮想マシンを作成するワークフローを掲載します。
図5:今回使用したワークフロー
このワークフローの流れの要点を説明します。
1. クローン元の仮想マシンにリモート接続を行い、反映したい情報(ユーザー名、パスワード、IPアドレスの指定など)を設定する
2. クローン元の仮想マシンを複製する
3. クローンの成功/失敗を通知する
4. クローン元の仮想マシンを操作1.を行う前の状態に戻す
まとめと今後の展開
本稿では、Webexに指示内容を送信するだけで仮想マシンの作成・削除する手順のシステム化を行いました。
次回は、リソース最適化という、また別の観点からビジネス課題・社会課題について検討します。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。