
- ライター:榎本 真弓
- Broadcom社及びNutanix社の仮想化製品の導入を推進しております。各製品の技術Updateや使い方など、有益な情報をお届けできればと思っています。
・vExpert 2020-2025
・Nutanix Certified Services - Multicloud Infrastructure Master
目次
企業ICT環境で重要性を増す、仮想ネットワーク基盤 VMware NSX を取り巻く状況
昨今の企業のICT環境においては、ネットワークのソフトウェア化による迅速なクラウド環境の構築を目的とした、仮想ネットワークの基盤となる VMware NSX®の導入が急速に浸透しています。
VMware NSX には、VMware NSX® Data Center for vSphere® と、VMware NSX (旧名称 VMware NSX-T™ Data Center)が存在しますが、 NSX Data Center for vSphere における EoTG(テクニカルガイダンス期間の終了)は2023年1月となり、VMware NSX への移行が急務となっています。
また、VMware vSphere® 7.0 以降、VMware NSX は従来の N-VDS(NSX-T Data Center Virtual Distributed Switch)ではなく、 vSphere Distributed Switch(VDS) 上で実装する事が可能となっており、N-VDS 提供の機能自体も、VMware NSX 4.0.0.1 以降は廃止となっています。よって VMware NSX 4.0 以前をご利用かつ、N-VDS にて環境を構築されている場合は、今後 N-VDS からVDS に移行する必要性が出てまいります。
前回の記事 では、VMware NSX におけるアップグレード準備ツールを使用した N-VDSからVDSへの移行機能に関してご紹介いたしました。当該記事では、VMware vSphere 6.7から7.0等へのUpgradeの際に、あわせて VMware NSX のN-VDS からVDSへの移行を実施する方法をご紹介しております。
今回はより 汎用的な方法として、vSphere 側の基盤のUpgrade 作業とは別個に(独立して) VMware NSX におけるN-VDSからVDSへの移行を実施する コマンドライン機能をご紹介いたします。
VMware NSX 3.0 以降:N-VDSからVDS への移行ツールの概要
vSphere 7.0(vCenter Server 7.0 及び ESXi 7.0)以降、かつ VMware NSX 3.0 以降の環境では、以下の方法で VMware NSX の構成をN-VDS からVDS に移行する事が可能です。(VMware Docs 参照)
- VMware vCenter® Lifecycle Manager™ 及びVMware NSX アップグレード準備ツールの利用(前回の記事)
- API 呼び出しもしくは NSX Manager CLI の使用:今回の記事の対象(VMware NSX 3.2.1.1)
また、NSX Manager CLI による移行の流れは下記の通りとなります。
- ホストの移行準備の確認: vds-migrate precheck コマンド
- 推奨トポロジの取得: vds-migrate show-topology コマンド
- 推奨トポロジを使用したVDS の作成: vds-migrate apply-topology コマンド
- N-VDS から VDS への移行の開始: vds-migrate esxi-cluster-name <cluster-name> コマンド
NSX Manager CLIによるN-VDSからVDSの移行の流れ
- 移行前の NSX N-VDS 環境の構成の確認: 現在 VMware NSX 3.2.1.1 環境において、N-VDS 構成のホスト トランスポートノード が2台存在する。
- 各ホスト トランスポートノード は、物理アダプタ vmnic1 を使用して N-VDS 環境を構成している。
- 構成図は以下の通りとなり、vmnic1 に紐づくN-VDSが、新規に自動で作成されるVDS に移行される。


- vds-migrate precheck: NSX Manager CLI を使用する為、NSX Manager アプライアンスに admin ユーザにてログインし、ホストの移行準備の確認を実施する。

- vds-migrate show toplogy: 推奨される N-VDS の移行トポロジを確認する。(新規 VDS の名称等)

- vds-migrate apply topology: vSphere 環境において、現在分散仮想スイッチはDVS001とDVS002のみが存在する事を確認する。また、ワークロード仮想マシンの疎通性 (CentOS から、ToR の物理ネットワーク側インターフェース 172.18.10.155 への通信)も確認する。

- vds-migrate apply topology を実施する。

- 新規に移行先の DVS が作成された事を確認する。
- vds-migrate esxi-cluster-name <cluster-name> を実行する。

- 1台のホストが メンテナンスモードに移行される。

- 新規に作成された VDS に、1台目のホストのN-VDS用アダプタが割り当てられ、その後1台目のホストはメンテナンスモードを終了する。

- 同様に2台目のホストもメンテナンスモードに切り替わり、新規 VDSに両ホストの N-VDS 用のNICが移行される。
- 両ホストともメンテナンスモードが解除され、vds-migrate esx-cluster-name が成功で終了する様子が確認出来る。

- ワークロード仮想マシンへの通信影響: ワークロード仮想マシンの疎通性(CentOSからToRへの通信)における影響としては、ping 100ミリ秒の計測環境においてパケット断は無く、平均4ミリ秒のRTTの内、1秒程度のものが4パケット発生と、遅延の揺らぎはあるものの通常のトラフィック動作に戻った様子が確認出来た。
まとめ
今回は、企業のICTインフラを考える上で重要な基盤となるネットワーク仮想化製品 VMware NSX 3.0 以降でご利用いただける、N-VDS からVDS へのコマンドラインによる移行ツールに関してご紹介いたしました。
弊社では今後も、VMware NSX を始めとしたクラウド環境における最適なインフラ基盤の構築、運用を支援させていただきます。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。