
- ライター:塩屋 晶子
- 2012年ネットワンシステムズに入社。Ciscoを中心としたコラボレーション(ビデオ)製品を中心に、新製品の技術検証、案件支援やお客様へのデモンストレーションなど啓発活動に従事している。
最近では、新技術を組みあわせた新しいソリューション開発や検証も行っている。
目次
はじめに
COVID-19により、ハイブリッドワークが広まりつつあります。弊社では、現在もテレワークが主となった働き方が続いています。そんな中、様々な家庭環境の中で働く社員が多くいます。今回は、社内でのリアルな声から作成したプロトタイプについて紹介していきたいと思います。
ワークプレイスx香りのトライアルに至るまで
社内アンケート結果からのニーズを探る
弊社では毎年社員向けのアンケートを収集しています。その結果の一部に、下記のような生の声や社員のニーズがある事が分かりました。
- 社員の声
- 「集中力が持続しにくい」
- 「リフレッシュ・リラックス出来ない」
- 「社員同士のコミュニケーションが減少している
- 社員のニーズ
- 集中度合いに応じた環境の選択
- リフレッシュ・リラックスの仕方
- 健康(ストレス)管理
- 共通の話題を通じた社員の繋がり

図1. 社員の声・社員のニーズ
プロトタイプのアイデア検討
これまでも社内向けのプロトタイプを作成してきました。人間の5感の中で、「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」とありますが、これまで社内向けサービスプロトタイプ開発企画の中で、「嗅覚」にフォーカスしたアイデアはありませんでした。そこで、今回は香りをテーマに、昨今の働き方の課題解決に繋げられるソリューションを開発出来ないか、検討してみることにしました。
いくつか文献にも目を通してみると、香りには様々な効果があることがわかっています。
- 好ましい香りが心身にプラス効果
- 芳香を嗅ぐと疲労感が軽減される
- 匂いの記憶への効果、匂いや香りは疲労回復効果と注意力喚起の効果
ここから、社員のニーズと香りを掛け合わせて仮説の定義・プロトタイプの作成へと進みました。
仮説
今回は下記仮説を定義しました。
「様々な環境下で業務を遂行する社員にとっては、気分を切り替えるために香りの放たれた空間で業務したい人がいる。その人たちにとって集中・リラックスできる環境の提供につながる。」
また、仮説を検証するための調査としては、設置場所の換気機能や香りに対する社員の意識調査・そして実際の利用者へのアンケートを取得しました。
- トーキングボックスでの香りの利用は有効かどうか(現地調査)
- 香りのある空間における業務希望に対する意見(定性)
- どんな香りが集中したい・リラックスしたい人に好まれて使われるか(定量)
- 使ってみた経験による、集中・リラックス具合の意見(定量)
プロトタイプの作成
アロマディフューザーについて
今回、アロマディフューザーとして試してみたのは、Smart Home Aroma Diffuserです。本製品は、香りのカプセルを内蔵されたファンでコントロールすることで、好みの香りを調合した香りを放出できます。
特徴
- アプリを使ったフレグランス制御が可能
- ファン速度を調整し、好みの香りをカスタマイズ
- Amazon Alexa, Siri, Google Assistant, IFTTT等のAPIサービス連携が可能
香りカプセル
カプセルの中に匂いビーズが多数はいっており、Moodo本体のファンが回転することによりこの香りをフロアに放つことが可能となります。約20種類もの様々な種類のカプセルが提供されています。名前からは想像もつかない香りのカプセルが提供されています。

図2. 香りカプセル
作成したプロトタイプのユースケース
Moodoの標準アプリもありますが、細かく制御するために開発いたしました。
- WebexのチャットでMoodoのAPIをPOSTして制御
- WebexのチャットBotによるアンケート収集
Moodo専用のアカウントやアプリをインストールしなくても、チャットアプリを使ってMoodoを制御し自由に香りを発動して利用できるようにしました。また、利用開始1時間後に、利用目的や効果についてのアンケートを配信・収集する機能を実装しています。

図3. 構成図
トライアルについて
調査方法①ヒアリング、調査方法②実機設置・アンケートを行います。

図4. トライアル概要
調査①ヒアリング
どのような用途で香りを使いたいと期待する人が多いのか、ヒアリングすることにしました。実機を設置する前に、社員5名(男性5名、女性5名)に対して香りに関する日頃の意識や香りカプセルの香りや好みについて、設置場所に対する意見等のヒアリングを行いました。

図5. 設置した香り

図6. カプセルの香りや好みについて
ヒアリング結果からは、下記傾向があることが分かりました。
- 人によって好みの香りや香りの感じ方は分かれる
- 傾向として、自然系の香りが好まれ、甘めの香りは好まれない
- 日常的に香りに触れている機会は女性社員の方が多い
- 香りについては、リラックス空間や個人で利用する空間の期待値が高い

図7. ヒアリング結果のまとめ
当初予定していた、リラックス・集中できるエリアへの香りの適用については、トーキングボックス席への設置案はニーズとしてマッチしていることが分かりました。
調査②実機設置・アンケート
続いて、社内にあるトーキングボックス席に実機を設置して、実際に利用してもらい、事後アンケートをチャットアプリで配信・収集します。
- 設置期間:2021/12~2022/8の間
- 設置場所:トーキングボックス席
- 利用方法:チャットBotから利用用途と好みの香りを選択
アンケート結果
利用者108名のうち84件の回答が得られました(回答率は78%)。アンケートの項目は下記の通りです。

図8. アンケート項目・回答率

図9. 香りに期待する目的
今回利用した社員においては、集中目的が40%、リラックス目的が60%という結果でした。

図10. 選択した香り
選択した香りは、約半数が柑橘系、2番目・3番目・4番目は10-20%ずつの割合で、集中・リラックスで選択する香りに大きな違いはありませんでした。

図11. 香りの効果
集中できた:約70%、リラックスできた:約85%というポジティブな回答で、約70%の人は前のにおいを感じなかったため、トーキングボックス内での換気機能は一定の効果があったのではないかと考えられます。
自由回答での香りについては、下記抜粋ですが様々なコメントを頂きました。
- 集中力に注力するならローズマリーやレモン、ウッディ系、リラックスならラベンダーやベルガモットなど、香りの効果を意識してアロマオイルを選択するといい
- 部屋の扉を開けた瞬間にアロマの香りがしたのでとても気分が良いと感じた
- 良い香りだった。ただ少し匂いが強く感じた
- 狭い部屋のためか、香りが強く感じました
- 職場でアロマが楽しめるのは満足度が上がります。
- もっといろいろな香りが欲しいです
- においがこもりがちなブースで好きな香りを楽しめてイイ感じです!アロマ自体の見直しは必要かと思いますが、取り組みはぜひ続けていただきたいです。
- こもってしまい前の香りが強すぎて、わかりづらい香りよりは環境・空気清浄の方が良いのではと感じました
今回設定した「様々な環境下で業務を遂行する社員にとっては、気分を切り替えるために香りの放たれた空間で業務したい人がいる。その人たちにとって集中・リラックスできる環境の提供につながる。」という仮説は立証できたと考えます。
特にリラックスにおけるニーズや体感の効果は数値で表れていました。香りの設置に関しては、個室への展開の声は多かったのでそれぞれの楽しみ方を提供できる点でも有効であると考えます。また香りが残っている=個室内の換気が弱いという視点でも空気の循環を意識できる一助にもなるのではないでしょうか。
おわりに
今回は社内の香りを使ったプロトタイプのトライアル概要とその結果のご紹介でした。今後は、今回のヒアリングやアンケート結果を通じて、より社員・お客様・パートナー様とその効果を体感できるように、新しいワークプレイスへの適用へとチャレンジを進めていきます。また新しいワークプレイスでの展開についての続報もご紹介出来ればと思います。
この度ご紹介した内容は提供するサービスではございませんが、トライアルの内容や実装内容についてのご紹介は可能で御座います。ご興味がある場合は、弊社営業担当までご連絡を頂けますと幸いです。最後まで、ご覧いただきまして有難うございました。
※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。