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クラウド電話サービスによる電話のBYOD実現

ライター:藤谷 大輔
2003年より、IP電話やUnified Communicationの分野で製品検証、提案活動に従事

目次

はじめに

COVID-19のパンデミック対策により一気に浸透したテレワークでビデオ会議やWeb会議は利用が広がりました。一方、企業の内線電話(以下、企業内線)をそのままテレワークに持ち込むことが難しく「電話対応のため出社を余儀なくされていた」は多くのお客様から伺っていました。

今回のブログは、仮想デスクトップ(VDI)で活用が広がっている個人のデバイスを使い業務を行うBYODと同じように、クラウド電話サービスを活用することで個人の携帯(スマートフォン)PCで企業内線を利用する方法と課題に触れてみます。

個人携帯を会社電話で使う際のデメリット

総務省発表によると、20223月での携帯電話の契約数は2億292万回線と日本国民総数に対して約161%で、一人1台以上の携帯電話を所有していることとなっております。

一方、固定電話回線の契約数は5,188万回線と携帯電話契約数の1/4程度となります。

理屈の上では、企業の固定電話回線の着信を社員が持つ携帯電話へ転送などを使うことで企業内線を携帯電話に置き換えられることとなります。

しかし、携帯電話、特に個人の携帯電話を企業内線の代わりに使う場合、以下の点の懸念があります (1)

図1 個人の携帯電話を企業内線として使う場合の懸念

03や06で始まる電話番号は0ABJ番号と言われ、企業で取得する場合、法人番号や登記簿など企業の実在性を示す書類が必要です。このため、0ABJ番号=信頼できる番号と広く認知されており、お客様へ通知する番号にはこれを使いたいという要望があります。

固定型の企業電話機では、通話中の電話を別の人に転送するような転送機能や鳴動している電話機に変わりに応答する代理応答などのPBX機能がありますが、個人の携帯電話機ではPBX機能が使えません。

また、会社用件の通話で使用した通話料金を個人に負担させるのか?という問題もあり、携帯電話だけでは電話のBYODは難しいが現状です。

クラウド電話サービス

Web会議と同様に企業電話機能をクラウドで提供するクラウド電話サービスもWeb会議と同様に各社からリリースされており、企業電話もクラウドで、という流れも出ております。

クラウド電話サービスは、PBX等の電話機能を司る設備がクラウド側にあり、利用者はインターネットを介して電話機、PC上のソフトフォン、スマートフォンのアプリを利用します。公衆回線は企業に機器を設置し電話回線を収容するか、通信キャリアがクラウド電話サービス業者と協業し提供するクラウド上で連携した外線を契約する構成となります。(図2)

図2 クラウド電話サービス

キャリアが提供する050番号や0ABJ番号とクラウド電話サービスの内線番号を紐づけることで、050番号や0ABJ番号を使った発着信が可能になります。

これまで、携帯電話で企業内線を利用する仕組みとして、通信キャリアが提供するFMCサービスがありました。FMCサービスは、キャリアが保証する音声の品質が提供されるも法人契約が必須でデータ通信は利用できないなどの制限もあります。表1でクラウド電話サービスとFMCサービスを比較します。

表1 クラウド電話サービスとFMCサービスの比較

クラウド電話サービスを活用すると、個人の携帯電話でも企業内線が利用可能になり、通知する番号も個人携帯の番号ではなく、クラウド電話サービスで契約した050番号や0ABJ番号が通知できるようになります。

これにより、図1にあった多くの懸念が解消されるので導入可能と見えます。

また、会社携帯の代わりに電話のBYODを使うことで会社携帯自体や法人契約回線の削減も期待できます。

電話のBYODで見えてきた課題

弊社では、電話のBYODを目指してお客様と事前検証などを行ってまいりました。その過程でいくつかの懸念も見えてきたので簡単にご紹介します。

課題① iPhoneとAndroid端末での電話履歴の挙動の違い

iPhoneの電話履歴にはクラウド電話サービスからの発着信も記録されますが、Androidでは記録されません。(図3)

図3 iPhoneとAndroid端末での履歴の違い

課題② Android端末でクラウド電話アプリがインストールできない

Android OSを更新することでインストール可能になることもありますので、事前に端末で更新できる最新のAndroidにしておくことを推奨します。

課題③ 個人携帯にお客様の情報を登録することの懸念

クラウド電話のアプリによっては、端末に登録した連絡先情報で発信ができるものもあります。機能としては便利ですが個人携帯紛失時にお客様情報の漏洩の可能性があります。

課題④ 通話料金の扱い

クラウド電話サービスは、データ通信を使用するので音声通信よりは通信料金は低いですが通信料金が発生します。業務で使った通信料金を個人に負担させるは問題となります。音声通話で出来ていた会社への着信を個人携帯に転送することで個人への通話料金負担なしで使わせるということも、データ通信では課金対象となります。

課題⑤ データプランによる速度制限の影響

クラウド電話サービスは、実測で1時間の通話で数10MByteのデータ量となり、1秒当たり10数kByte程度の通信が発生します。契約量を超過するとキャリアによっては速度を128kbps=毎秒16kByteと制限される場合もあり、その時は通話ができなくなる可能性があります。

これらの課題、

①と②はOSや端末による違いであり、個人が持つ機種を使用するため様々な機種を使用することになる以上、どこまでサポートできるか、サポートするか、となります。

③はクラウド電話帳サービス、例えば、PHONE APPLI社のPHONE APPLI PEOPLEと組み合わせることで、個人端末の連絡帳にお客様情報を登録することなしにクラウド電話帳から検索して発信が可能になります。

④と⑤はデータ通信にかかる費用を会社で一部補助することで、例えばドコモユーザであればahamoのような大容量のデータプランに変更を促すような運用ができないかを考える必要があります。

終わりに

従来難しかった電話のBYODは、クラウド電話サービスを活用することで技術的には可能なまでになっております。ただ、通信費をどうするかなど課題もあることは事実ですが、電話のために出社を強いられる、を解消し働きやすい環境を整えるには1つの解決策となりえます。

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※本記事の内容は執筆者個人の見解であり、所属する組織の見解を代表するものではありません。

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